第二十四話 三人との関係
夜、俺はベッドに寝転がって思う。
弥寿子さん、そして部長。
高校二年生になってまだそれほど経っていないのに、もう二人に好意を伝えられた俺。
うれしい気持ちではあるが、反面、小由里ちゃんとの距離が遠くなってきた気がする。
彼女がほしいという気持ちは強いままだけど、今度は誰を選んだらいいのか、というところがある。
小由里ちゃんが一番のはずだった。
しかし、弥寿子さんの一途さにも心が動かされる。
裕子先輩も、温かい微笑みを浮かべる一面があって、そういうところに魅力を感じている。
三人はそれぞれ魅力があって、別に一人に絞らなくてもいいのでは、という気がしてくる。
そういうものにあこがれはなくはない。
とはいうものの、このままでは中途半端なことも確かだ。
弥寿子さんと裕子先輩については、好意は寄せられているが、付き合っているわけではない。したがって、彼女というわけではない。
小由里ちゃんに至っては、それ以前の状態だ。
今俺がなすべきは、やはりまず小由里ちゃんとの仲直りだろう。
それ以外のことは考えるべきではないと思う。
でも弥寿子さんの柔らかさはいいなあ。
仲良くなってきたら、キスしてもいいって言っていた。
「先輩のエッチ」とも言われた。その声の甘さもいいし……。
俺も心が弱いと思う。
弥寿子さんのこともすぐ心の中に浮かんできてしまう。
彼女のことを意識してからまだわずかの時間しか経っていない。小由里ちゃんと過ごした時間とは比べ物にならないはずなのに。
小由里ちゃんと、夢の中でしたようなキスができれば、それが一番幸せなんだけど。
そう思うのだが、今はどうにもならない。
俺には勇気がない。小由里ちゃんにまた拒絶されるのではないか、と思ってしまう。
彼女のことが本当に好きなら、そんなことを考えていないで、進むべきなんだろうが。
でもこうしている内に、小由里ちゃんが他の男と付き合い出してしまう可能性がある。
まだ実際にそうしたことをする男はいないようだが、彼女だって女の子だ。熱意を持ってこられたら、その相手に心を奪われないとも限らない。
ちょうど俺が、弥寿子さんの攻勢に、少しではあるが心が動き出してしまっているように。
そもそも彼女はフリーの状態だ。俺の彼女でもなんでもない。
俺は彼女がどう動こうと、なにも言える立場にはない。だから、本来、彼女が誰を好きになろうと、誰かにアプローチをかけられようとも、何もできない。
幼馴染だから、ということで、今まではそういうことは考えないできたが、一人の魅力ある女性として考えれば、あたり前の話だ。
嫌われて、疎遠になっている俺は、普通に考えれば脈はない。
俺は彼女の幼馴染。しかし、逆に言えば、それしかよりどころはないだろう。
ああ、そんなことを考え出したらきりがない。
もう寝よう。寝るしかない。
そう思って目を閉じるのだが……。
なかなか眠れない。
弥寿子さんと裕子先輩は、俺がその気になれば、彼女になってくれるのでは。でも、まだその気にはなれない。小由里ちゃんに失礼なのでは。
しかし、小由里ちゃんは、このままでは誰かに取られてしまうのでは。今までそんなことはありえないと思ってきたのだが、急にその可能性があるのではないか、と思ってきた。
こんなことなら、女の子に興味を持たないようにしていた高校一年生の頃の方が、まだましだったような気がしてくる。
こういう時は、ギャルゲーをするしかないなあ。
俺は、起き上がり、ゲーム機を機動した。
新しく買ってきたゲーム。既にかなりの時間プレーをしていて、ちょうどクライマックスを迎えようとしていたところだ。
このゲームには、吉井田なつのちゃんというキャラクターがいる。
俺の好きな幼馴染キャラだ。ちなみに主人公の名前は、俺の名前にしている。
主人公の隣に住んでいて、主人公の為に、毎朝起こしに来て、一緒に登下校する間柄だ。
仲はよく、周囲からは、婚約者のように見られている。
しかし、この二人にはまだ恋人としての自覚がない。いい友達、といったところ。
それが、あることをきっかけで仲違いし、疎遠になる。
最初は、それほど打撃を受けた二人ではなかったが、次第にお互いがいかに大切な存在であったか、ということを感じていく。
そして、困難を乗り越えた二人は……。
「やっぱり俺にはお前しかいない。結婚してくれ!」
「うん。もちろん、わたしは森海ちゃんのもの。とってもうれしいわ。わたしのこと、幸せにしてね」
「お前のこと、大好きだ。絶対に幸せにする」
「わたしも森海ちゃんのこと、大好き」
「なつのちゃん……」
キスをしていく二人。
そして結婚式を迎え、幸せになっていく……。
よかった。つらいことも多かっただろうけど、二人が結婚できて本当によかった。
エンディングを見ている内に、思わず涙が出てきた。
俺にとっては理想的なゲームだった。
仲違いをしても困難なことがあっても、幼馴染と結ばれる、今の俺にとって、これほど勇気づけられることはない。
俺もこんな風に、小由里ちゃんと結ばれたいなあ、と思う。
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