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第二十一話 漫画部の新入部員

弥寿子さんはあれ以来なにもしてこない。


てっきり、登校の時とか、休み時間に、


「せんぱーい」


と言ってきて、俺の手を握ったりするんじゃないか、と思っていたが、見事に肩透かしをくらった。


俺も心のどこかでそれを期待していたところがある。


彼女のからだの柔らかさは、何日か経った今でもなかなか忘れられない。


いや、こんなことではいけない。いけないんだけど……。


また期待をしてしまう俺も情けないよなあ、と思ってしまう。


とは言っても、小由里ちゃんのことはもちろん気になっている。


今までは、あいさつもロクにしなかったが、関係を再び構築する第一歩として、あいさつだけはすることにした。


ただ、今年も違うクラスなので、それをするだけでも一苦労。


教室に入っていくことは、なかなか難しいので、彼女がクラスからでる瞬間にあいさつをしようとする。


しかし、彼女がこちらに近づいてくると、ドキドキしてしまい、なにも言えずにそこからすぐ離れてしまう。


そういうことなので、彼女は、俺があいさつしようとしていることを知らないだろう。


自分でもなにをやってるんだろうと思う。


結局、まだ一回も成功していない。


あいさつさえうまくいかないのだから、告白などうまくいくわけがないと思う。


とにかく、四月中には、あいさつができるようにしよう、と思うのだった。




俺は漫画部に入っている。


漫画部とはいっても、漫画好きだけではなく、アニメや声優やゲームが好きな人たちも集まっているクラブだ。


漫画を描いている人がいると思えば、アニメや声優の話に花を咲かせている人もいる。


ゲームそのものや、ゲームのキャラクターについて熱く語っている人たちもいる。


コンテストを目指している人たちもいる。


それぞれの分野の同人誌を作っている人たちもいる。


クラスでは、優七郎以外の人とはあまりしゃべらないが、ここにくると、アニメや声優の話に加わったり、ゲームの話に加わったりする。


まあ一人で、窓の外の風景を眺めていたり、もの思いにふけっていることの方が多いけれども。


ここは、そういう様々な趣味を持った人たちがいて、のびのびと活動しているというクラブだ。


定期活動は週二回。ただ、それ以外も活動はしていて、毎日来ている人もいる。


俺もその週二回の日は必ず参加しているが、その他の日も、参加していることはある。


クラブのこういう雰囲気が好きだから、というところが大きいと思う。


今日も、窓の外の景色を眺めていたのだが……。


「新入部員を紹介します」


部長の高田浜裕子たかだはまゆうこさんが、部員みんなに声をかける。


すると、それまで自分たちの世界に入っていた部員たちが一斉に部長の方を向き、立ち話をしていた人は近くの席に、着席する。


高田浜さん、彼女は高校三年生。俺の先輩ということになる。


高校二年生からこのクラブの部長をやっている。プロの漫画家を目指しているようで、同人誌即売会にも参加している。そこでしだいに名を上げてきているようだ。


冷たい孤高の美少女というところがあり、口数が少ない。普段は漫画を描いていて、他人と話しをしているところをあまり見たことはないが、いざという時の統率力はすごい。


普段、自分たちの世界に入っている部員たちも、彼女の言葉にはみな従ってしまう。


その指示が的確であるのはもちろんだが、嫌とは言わせないすごみがあるということなのだろう。


冷たい感じの彼女だが、そういうところを好む人はいるようで、告白した人は結構いるそうだ。でもみんな撃沈しているとのこと。


俺は、別に彼女には興味はなく、彼女の方も俺に興味がなさそうだったので、入部してからこの一年の間、話をしたことはほとんどない。


美人だとは思うんだけど、どちらにしても高根の花なので、俺には関係はない、と言ったところだろうか。


さて、部長は、部室の扉の外にいた新入部員たちに入ってくるように言った。


どんな子が入ってくるんだろう。


そう思っていると。


や、弥寿子さんじゃないか!


驚きのあまり、叫びそうになってしまった。


「わたし、居駒弥寿子と言います。アニメが好きです。よろしくお願いします」


と自己紹介をし、頭を下げる弥寿子さん。


どうしてこの部に入ってきたんだろう。アニメが好きと言っていたから、それでだとは思うけど。俺がいるので入ってきた、ってことじゃないよな。


新入部員は三人。いずれも女の子。


今ここにいる男子部員は、拍手はするものの、みな興味を示していない。


かわいいぐらいは思っているんだろうが、基本的に三次元の女の子には興味がないようだ。


俺も興味がない、といいたいところだが、どうしても弥寿子さんのことが気になってしまう。


そういう俺のところに、彼女はすぐにやってきた。


「せんぱーい、このクラブに入部しましたよ」


「そ、そうだな」


俺の隣の席に座る彼女。


部室は、空き教室を使っているので結構広い。もともと部室の隅の方にいたので、みんながいる中心からはちょっと離れている。


しかし、ただ座るだけならいいが、すぐに椅子を俺に近づけてきた。


「わたし、先輩と同じクラブに入れてうれしいです」


人前のせいか、体を直には寄せてこないが、それでも距離はかなり近い。


胸がしだいにドキドキしてくる。


「ア、アニメが好きなんだね」


「そうですよ。ロボットアニメとかいいですよね」


「へーえ。そうなんだ」


俺もアニメの話をするのは好きなので、話に乗っていった……。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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