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第十九話 鈴菜ちゃんのアドバイス (小由里サイド)

「もちろん恋人としてでもいいんだけど、友達に近い恋人という形の方がいいと思う。そして、どちらにしても付き合っていって、少しずつ距離を縮めていく」


「気の長い話ね」


「時間がかかっても、それが一番いいと思う。もしかすると付き合っている内に、相手の嫌なところが見えてきて、別れるってことになったらお互いが傷つくし」


「そういうものなんだ」


「その点、わたしと優七郎くんって、だらけた姿を見るところから始まっているから、少々のことならビクともしかったわ」


「あれ、結局、優七郎くんとは付き合ってるってことじゃない」


「うん、そうよね、ってそう言うことじゃないわ。で、話を続けると、相手の嫌なところも包み込めるようになったら、一挙に進撃するわけ」


「なるほど」


「まあ、まずは、二人の間にあるその心のとげを癒すところから始めることが大事よ。特にまだ小由里ちゃんの方は、その時の心の痛手が残っているようだから」


「そうだね。とにかく急がないようにする」


「そうしていくのがいいと思うわ」


「うん。ありがとう」


「ただね、彼って意外とモテるのよ」


「モテる?」


「小由里ゃんは、彼と違うクラスだから、わからないかもしれないけど」


「どんな感じなの?」


「彼、いつもは、優七郎くん以外の人とはあまり話したがらないのよ。特に女の子とは。それに雰囲気が明るいとは言えないし。それで、クラスの女の子たちも、近づきたがらなかったところがあったの。でも彼って、親切で頼もしいという面があるじゃない。一人で住んでいるから、家事も全部やってるし。そういう面を知って、彼に好意を持つ女の子が、少しずつ増えてきている」


森海ちゃんのいいところを知っているのは、この学校だと、わたしだけだと思っていたのに。


いいところを知ってもらえるのはうれしいけど、ちょっと複雑な気分。


「少しずつね……」


「ただ、優七郎くんが言うには、彼自体は全然そのことを理解していないらしい」


「森海ちゃんらしいね」


「今はまだわからないけど、彼に告白する子が出てくるかもしれない。今は告白される可能性があるのは同級生だけだと思うけど、その内、後輩とかにも告白される可能性は出てくると思うわ」


「そんなことって、あるのかなあ」


「充分あるわ。わたしだって、優七郎くんが浮気しないように気を配っているんだもの。優七郎くんって、軽いところがあるし、女の子の人気もそれなりにあるから、すぐいい気になるの。そうした時があると、わたしはいつも頬をつねってあげているわ」


「そういうことをするっていうのは、恋人もしくは夫婦がすることなのでは?」


「だって、わたしも優七郎くんも友達なんだし、これくらいしても当然じゃない?」


いや、ただの友達だったら、そんなことはしないと思うんですけど。


「とにかく、海島くんは、今は誰とも付き合っていないし、その気もないようだけど、好意を持つ人は増えているから、告白されないとは限らない。その点は気をつけた方がいいわね」


さすが、恋人を持っている人は言うことが違う。


「まだわたしにはよくわからないところがある話だけど、気を付けるようにはしたいわ」


「それがいい。付き合っていたって、そういう子がでる可能性があるんだから」


実感がこもっているなあ。


「でも海島くんって、魅力あるわね。わたしに優七郎くんがもしいなかったら、好きになってかもしれない」


「そ、それはちょっと困るよ」


「だって、あんなに優しくて頼れる人、そんなにいないと思うし」


「森海ちゃんを取らないで……」


なんだか、あせる気持ちになってしまう。


「冗談よ、冗談。魅力的な人だけど、優七郎くんがいるのに、そんなことはしないわ」


笑いながら言う鈴菜ちゃん。


わたしはホッとした。


でも、いつの間にか、『わたしには優七郎くんがいる』って言っちゃってる。聞いてるこっちが恥ずかしくなる気分。


「話はもとに戻すんだけど、わたしから森海ちゃんに声をかけたらいいのか、森海ちゃんの方から声をかけてもらったらいいのか、これはどう思う?」


「それは確かに重要なところね」


「どう?」


「これはまず海島くんが声をかけるのを待った方がよさそうね」


「そう思う?」


「疎遠になる原因を作ったのは彼だし」


「いや、わたしの方も悪かったんだと思うけど。わたしも反省しているんだ」


「小由里ちゃん、やっぱり優しいね。海島くんに『嫌い』って言ったの、気にしてるんだね」


「『嫌い』っていうのは、言いすぎちゃったと思ってる。どうしてもここが後悔しているところなの」


鈴菜ちゃんはちょっと考えた後、こう言った。


「その気持ちはわかるわ。さっき、同じ状況になったら、優七郎くんに『嫌い』って言うって言ったけど、その後やっぱり同じように後悔したと思う」


「鈴菜ちゃんもそう思うんだ」


「そうね」


鈴菜ちゃんは、紅茶を飲むと続ける。


「ただ、そういうことだと、やっぱり森海くんから声をかけてもらった方がいいと思う」


「わたしからは言わない方がいい?」


「できればその方がいいと思う。今の話からすると、まだ『嫌い』と言わなければならなかったことのこだわりと、その言葉を言ったことのこだわりの二つがあるようだから。それがなくなったら、小由里ちゃんの方から言ってもいいと思う」


まだ悩んでいるけど、鈴菜ちゃんの言葉で、これからの方向性が出て来たと思う。


「うん。ありがとう。今日相談できてよかったわ」


「力になるから。また相談してね」


「ありがとう。また相談するかもしれないからよろしくね。わたしも、鈴菜ちゃんと優七郎くんが、もっともっと仲良くなれるように応援するわ」


「うん。こちらこそありがとう、って、わたしと優七郎くんはそういう関係じゃないんだから……」


また顔を赤くした鈴菜ちゃん。


そうこうしていると夜が近づいてきた。


もう少し話したい。話は尽きないのに、残念。


「じゃあ、また明日ね」


「うん。明日ね」


そう言って、わたしは鈴菜ちゃんと別れていく。


わたしもいつか、森海ちゃんと恋人どうしになれるのかなあ……。


そう思いながら、わたしは家路についた。

「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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