表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/104

第十八話 森海ちゃんへの想い (小由里サイド)

「優七郎くんにそんな一面があったなんて」


「そうでしょう。いつもの優七郎くんからは考えられないような姿だったんで、なんと言っていいのかわからなかった。そのまま泣き続けていたから」


「すごく悔しかった、って言うことだよね」


「わたしも涙が出てきちゃったんだけど、少し経った後、やっと、『いいのよ。優七郎くんは精一杯プレーしたんだから。見事なシュートも決めたし、胸を張っていいのよ』と言葉をかけることができた。優七郎くんも、やっと泣き止んで、『ありがとな』と言ってくれた」


「二人の心が通じ合った、というところね」


「それは言えるわね、って友達だったら、それぐらい当たり前でしょ」


「それはそうよね」


「でもわたし、それからますます優七郎くんのことが気になっちゃった。サッカーの試合があれば全部見に行くようにしてるし、その時はお弁当を作ってあげたりもしてるわ」


これも今まで全然知らなかった。


「でもいつもは作っていないんでしょ」


「それが、ね、昼のお弁当も作ってあげようか、って言うんだけど、『俺のイメージが壊れちゃうし、なんだか恥ずかしい』って言って断ってるのよ」


「優七郎くんなら言いそうだね」


「わたしの方は全然気にしてないんだけどね」


「でも、試合を見に行って応援して、お弁当まで作ってあげるんだから、すごいよね」


「いや全然たいしたことはしてないよ。わたしがしたくてしてるだけだから」


「それって、優七郎くんのこと、好きじゃないとできないよね」


「うん。好きだからできるんじゃないかと思う、って違う、違う。わたしはただ優七郎くんが気持ちよくプレーしてほしいだけよ」


「でももう恋人どうしのようなことをしている気がするけど」


「違う、違う、友達よ、友達」


一生懸命手を振って、恋人じゃないことを主張する鈴菜ちゃん。別に恋人なら恋人でいいじゃない、と思うんだけど。


「まあでも、恋人かどうかはともかく、相思相愛になってきたということは言えるんじゃないかなあ」


「そう。それは言えるわね、って、ち、違うわよ。別に優七郎くんと相思相愛ってわけじゃないんだから。好意はあるけど」


「好意があるってことは好きだってことだよね」


「だから、好きじゃなくて好意だって……」


「じゃあ、そういうことにしましょう」


わたしは微笑みながらそう言った。


「わたしと優七郎くんのことはもういいわ」


「もっともっと聞きたいんだけど」


「それはまた別の機会に、って、そんなに話すことなんかないわよ」


さらに顔を赤くする鈴菜ちゃん。


「それよりも小由里ちゃんの話が聞きたいわね。今付き合っている人とかいるの?」


「わたし? うーん。いないわね」


「好きな人とかはいるんでしょ?」


「いないことはないけど」


わたしがそう言うと、彼女は目を輝かせて、


「えーっ、誰、聞きたいなあ」


と言ってくる。


わたしは一瞬躊躇する。恥ずかしい気持ちが大きい。


でも、鈴菜ちゃんになら言ってもいいと思った。


「海島くんよ」


「海島くん?」


驚いた様子。


「そうよ。彼と幼馴染だったのは鈴菜ちゃんも知っているでしょ」


「うん。知ってる。でも、今はほとんど話もしていないようだけど」


「それはね……」


森海ちゃんとのことを簡単に話す。


「そうか、それで今は疎遠になってるのね」


「わたしもどうしたらいいのかわからない、って言うか」


「でも好きなんでしょ」


「そうなんだけど、その気持ちも本物かどうかわからないの」


「なるほどね」


「鈴菜ちゃんだったらこういう場合どうする?」


「そうね、わたしだったら、とにかく彼に自分の想いをぶつける。そして、彼の想いを聞くわ。それで脈なしだったらすっぱりあきらめる」


「大胆ね。わたしには無理かも」


「いや、恋というものはこれくらい積極的にやらなきゃだめなのよ」


力強く言う鈴菜ちゃん。


「でもわたしの場合、わたしが彼のこと『嫌い』っていっちゃったから。わたしからは言いにくくて」


「小由里ちゃんの場合は、確かに難しそうね」


真剣な顔をする鈴菜ちゃん。


「やっぱりそう思う?」


「うん。難しい気がする」


「わたしがあの時、あんなことを言わなきゃよかったのかなあ」


「いや、そんなことはないわ。わたしがもし小由里ちゃんの立場でも、『嫌い』って言っていたと思う。わたしだって、他の子のことが好きだから告白したい、と言うことを、優七郎くんに言われたら、『嫌い!』と言って泣いちゃうわよ」


自然に優七郎くんへの想いをわたしに言っている気がする。


「とにかく、小由里ちゃんは間違っていない。ただお互いのその後のフォローがうまく行っていればよかったと思うけど」


「まあわたしも感情的になっちゃたんだけどね。もっと、穏やかに話すことはできなかったのかなあ、と思う。それに、鈴菜ちゃんが言う通り、お互い仲直りをしようとはしなかったし、わたしの方から、あの後、あまり時間が経っていない間に声をかけていれば、ここまで疎遠になることはなかったと思う。いつもはそんなことないんだけど、森海ちゃんには、つい意地になるところがあって……。わたし、何をやってるんだろう、と思うこともあったわ」


「小由里ちゃんは、やっぱり優しいね」


「そうかなあ」


「優しいよ。海島くんの立場になって考えることができてるもん。優しいから、まあ、さっきは、『わたしだったら想いをぶつける』って言ったけど、小由里ちゃんの場合は、まず友達から改めて始めた方がいいと思う」


「その方がいいのかなあ」


友達から始めたとして、恋人どうしになれるのにどれくらい時間がかかるんだろう。


一年くらいはかかるのかもしれないと思う。


そんなにかかってほしくはない、と思っているけれど。



「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


と思っていただきましたら、


下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。


ブックマークもいただけるとうれしいです。


よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ