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第百話 思い出の場所での二人

手をつなぎたい。それくらいはいいんじゃないだろうか。


彼女の方はどうだろう。手をつなぎたいと思わないのだろうか。それともそう思っているのは俺だけなのだろうか。


恋人だったら、二人で歩くだけで楽しいところなのだろう。カップルで手をつないで、仲睦まじく歩いている人たちも多い。恋人どうしではまだない男女が二人で歩いていでも楽しそうだ。


しかし、俺はなかなかそういう気持ちになれなかった。


もっと、小由里ちゃんと楽しみたい!


俺は強くそう思う。


タワーに着いた。


ここからエレベーターで一挙に展望台まで上がる。


休日なので人が多く、少し待たされる。


ここでもカップルが多く、恋人つなぎをしていたりしている。


俺も恋人つなぎをしたいと思うが、その勇気はでない。


この間もほとんど無言の状態が続いた。


何か話さないと……。このままでは本格的に嫌われちゃうのでは。


そう思うが、話そうとすると、胸がドキドして苦しくなって言葉がでない。


この状態がさっきからずっと続いている。


彼女の方も、何か俺に話したいようなのだが、どうなんだろう。


俺のように、胸が苦しくなって話すことができないのか、それとも、さっきから全然話すことができない俺に、愛想が尽きたのだろうか……。


やがて、俺達はエレベーターに乗り、展望台に入った、


ガラス越しではあるが、港やビル街、そして周辺にある山を一望できる。


一面の青空、そして青い海。行きかう船……。


しばし二人でその素晴らしい景色を楽しむ。


これを一緒に眺めることができただけでもよかった。話すことができるともっといいんだけど。


そう思っていると、


「森海ちゃん、昔ここに来たわよね」


と小由里ちゃんが言った。


小由里ちゃんの方から話しかけてくれた。これは会話をするチャンスだ!


「そうだね。小学校五年生の時だったかな」


「そうよ。あの時と同じような季節だった。今日みたいに青くてきれいな空だったわ」


「俺もその時のことはよく覚えている」


「また一緒に来ることが出来てうれしい」


「そう言ってくれると俺も誘った甲斐があったよ」


俺がそう言って微笑むと、彼女も微笑んだ。


ようやく、お互いの緊張がほぐれ始めたのかなあと思う。


彼女は俺のことを嫌っていないようだ。それでけでもホッとする。


しばらくの間、幼い頃の話をした。少しずつではあるが、彼女と心が通じ始めている気がする。この調子でいきたい。


その後、喫茶店に寄ってコーヒーを飲んだ後、レストランに向かった。


ここは、海を見ながら食事ができるところ。名物のケーキも予約しておいた。


喜んでくれるといいんだけど……。


海の見える席へと案内してもらい、料理を注文する。


そして、料理を食べ終わった時、コーヒーとケーキを持ってきてもらう。


「うわー、きれい。森海ちゃん、ありがとう。こんな景色のいいところで食事ができるなんて……」


「喜んでくれてよかった。うれしいよ」


俺はホッとする。


後はケーキについても、おいしく食べてもらって、喜んでくれるといいなあと思う。


料理がくるまでの間、幼い頃の話の続きをする。こういう話が出来るのは、幼馴染ならではだろうと思う。


幼稚園の頃から始まって、小学校高学年の頃へと話は続いていく。


思えばそれだけ小由里ちゃんと一緒の日々を過ごしてきたのだ。


でもこういう話をすること自体が、ほとんど初めてな気もする。


小学校までの仲の良かった時期は、昔のことを思い出すというよりも、今現在の方に心が向いていたんだし、疎遠になってからは、そもそも話す機会がほとんどなかった。


幼馴染としてならば、思い出はたくさんあるので、話はこれからもできるだろう。


しかし、彼女は俺と幼馴染の関係のままでいたいのだろうか。


幼い頃の話をしている時の彼女は楽しそう。俺も楽しいと言えば楽しい。


でも俺は、その関係を乗り越えたい、乗り越えて恋人どうしになりたい。


そう思っていると、料理が運ばれてきたので、それを食べる。


レストランのおすすめ料理。いい味をしていて満足のいくものだった。


彼女も、


「おいしかった。料理もよかったし、雰囲気も最高よ。来てよかった。ありがとう」


と微笑みながら言った。満足してくれたようだ。


そして、コーヒーとケーキが運ばれてきた。


俺は緊張する。


彼女は甘いものが好きな方なので、嫌いなことはないと思う。ただ、口に合う合わないはどうしてもある。もし合わなかったらどうしょう。これで嫌われることはないと思うけど。でもこれで嫌われちゃったらどうしょう……。


そう思っていると、


「こんなおいしいケーキを食べたの初めて。おいしい、おいしい。ありがとう」


と彼女はうれしそうに言った。


心から喜んでいるようだ。


いつも微笑んでいて、優しい雰囲気のある彼女なので、喜びやうれしさというものをはっきり出すタイプではなかった。しかし、今日は今までにない喜びを出しているような気がする。


俺としてもうれしい。予約してよかった。


そして、俺と彼女の間は、どんどん近づいてきているように思う。


この調子でいけば、今日告白できそうな気がする。


夜が近づいてきた。


俺達は、海の見える公園へと向かう。


いよいよ告白の時だ。


「好き」という気持ちを熱く伝えるんだ! 「好きで好きで愛している」という、熱い気持ちを小由里ちゃんに伝えるんだ!


俺はそう思いながら歩くのだった。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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