番外②
午後のお茶、今日はテラスでどうぞ。風が心地よくて、マリカ様のつわりにも良いですよ。
キナの気遣いに感謝しつつ、お茶をいただく。妊婦に優しいハーブティーの香りが、爽やかだ。
「うん、少し顔色も良くなりましたね。これから、落ち着きますよ。」
コダもお茶をすすりながら言う。自分に妊婦の経験はなくとも、さすがはコダ。いろいろなケースを見てきているので、的確なアドバイスをくれる。
マリカがセナと結婚して、半年過ぎた。マリカのお腹には、セナにとっては初めての子がいて、つわりがひどかった。カルシータから帰って来たコダは、スニヤとともに新しい生活のことで忙しい最中、しばしば訪れ、マリカを助けてくれた。
今はまだ余裕はないが、コダからは教わりたいことも多い。まずは魔法のこと。魔力を使いすぎて、死にかけたセナのことがある。きちんと学んで、セナをフォローしたかった。
それにしても。
「私、コダさんのこと、勝手にカルシータ人だと思ってました。」
「ああ、私、器用にカルシータ方言使ってたから?実は、正真正銘のリードニス人です。」
リードニス王国に、親兄弟も健在だった。
「私、幼い時から魔力が強くて。両親が、上手く導く自信がないって言って、早くからスニヤ様に預かっていただいたんです。だからケントさんやセナさんとは、子どもの頃から会ってました。」
スニヤの妹、ケントとセナの母ソニヤはおおらかな人で、魔力の強いコダを恐れることもなく、一緒に遊ばせてくれたりした。
コダの、シンシアティ家への忠誠心は、この頃の暖かな思い出から来るものらしい。
「もし私が、リードニス人でなかったら、あの旅のメンバーにはなってなかったでしようし………。そしたらこんなふうに、マリカさんと親しくできてなかったですね。」
「あっ、そうなの?」
これは、マリカには初耳。ユナ・リアを守るあの旅は、リードニス人限定のものだったとは。
「ええ、それがスニヤ様のこだわりで。ユナ・リアを守るのに必要なのは、何よりも心だとおっしゃって。実はカルシータにも、有能な剣士や魔法使いの心当たりはありました。でもだめだったんです。いくら有能でも、リードニス人以外には、ユナ・リアを愛する心がありませんから。」
心、か。わかる気がする。
目には見えないけと、ものすごく力がある。
私もこの心で、大切な人たちを愛していきたいな。
魔力も力も、何もない私だけど、この心をくれたのは誰よりも愛しい人。
セナ、あなただから………。