第十三章 真相
出発の時間が迫ってきた。なぜカセラがいるのか、何もわからないドウシアは混乱した。
更に、カセラは追い打ちをかける。
「お前はどうしたいのだ。船の到着に合わせて、ユナ・リアを迎えるように国が動いている。お2人は、行かなければならない。お前は、セナ殿を置いて行けるのか。」
ドウシアは、答えに窮した。
「それでは、こうしよう。ドウシア、コダの両名は、ヌコルル島にてセナ殿の捜索を続けるがよい。私、カセラ・ロミナスが、ユナ・リアのお供を引き継ぐ。」
「いいえ。」
凛とした声、はっきりした拒否。
それは、マリカだった。
「私たちも、セナを置いて行きません。島に残ります。」
カセラは、うろたえた。ユナ・リアの母でなければ、相手にならない小娘だ。それが、自分と対等以上の口をきくというのか。
「馬鹿な、そんなことは、許されない。」
「いいえ、私には、自分の意志で行動する権利があります。第一、私たちはカルシータ人です。リードニス国の指図は、受けません。」
一番びっくりしたのは、ドウシアだ。これがマリカさんか。セナ様の陰に隠れるしかない、弱々しい女性だと思っていたのに。
そして、次に口を開いたのは、コダ。
「皆さん、落ち着いてください。私の師匠であるスニヤ様が、通信を求めておられます。ドウシアさんとマリカさん親子以外の方は、一旦外に出ていってください。スニヤ様は、人払いをとおっしゃるので。」
カセラと共のものがしぶしぶ外に出ると、コダは水晶玉を取り出した。
『コダ。』
「はい、スニヤ様。」
水晶玉に映るスニヤの顔は、青ざめていた。しかし口調は、はっきりしていた。
『マリカと、ドウシアという者はいるね。いいかい、時間がないので手短に言うよ。セナのいのちが危険だ。カセラ・ロミナスに騙されて、某所に捕縛されているのだ。』
あまりの真相だった。驚きで、一同は静まり返る。
スニヤは続けた。
『セナに授けた剣の七輝石が、私のとつながって、すべてわかった。カセラ・ロミナスは野心を持って、兄の当主の座を奪おうとしたが、生憎、兄に落ち度はない。ユナ・リア発見の手柄を横取りし、兄を上回ろうと企んだ。あやつは、セナの口を塞ごうとしている。早く、助け出すんだ。』
セナが、殺される!
身を乗り出す、一同。
『ケントとも、通信できたよ。セナが一度道をつけたから、容易だった。ケントも、弟の異変を感じていた。ドウシア、ケントのことばを伝える。我らの敵、カセラ・ロミナスを直ちに討て。抵抗あらば、斬り捨てよ。一切の責任は、ケント・シンシアティが取る、以上。』
「う………うおおおー!」
ドウシアの返事は、雄叫びとなった。剣を手に、飛び出して行った。
決着はすぐに着いた。怒り狂ったドウシアが、炎のように襲いかかかると、カセラ側に抵抗する術はなかった。
加えてもう一人、怒り狂ったコダがいた。凄まじい攻撃魔法で撃ちかかれた相手は、蛇に睨まれた蛙のようだった。
そして、セナの救出は速やかに行われた。
居場所がすぐに白状され、わずかにいた見張りは、ほぼ無抵抗。
「セナさん!」
魔力封じの鎖が糸くずのようだったとは、後のドウシアの感想。コダの怒りが、中々おさまらなかったせいだ。
「良かった………。」
カセラ側の見張りの一人、まだ10代と思われる若い男がつぶやいた。
シンシアティの子息を殺せと、主に命令されて震えていた。全く、天を恐れぬ所業である。
しかしセナは、縛めを解かれたが、動かなかった。ぐったりとしており、脈が弱い。
(魔力を消耗しすぎて、いのちをけずってる………。)