第九話 週末は彼とデート
何処にでもいるはずの女性、桜名美姫はホロテイルジュとして謎の事件を追っていた。それは街の人達が生ける屍のようになって夜の間だけ街を徘徊しているというものだった。その事件を引き起こしたのはダークストーリーズの幹部ウィッチ・シスターズ。そして産み出したマリスは七体同時に倒さなければ復活し続ける厄介なものだった。ホロテイルジュはシンデレーザー、キルビーレオン、サファイアロード、アックシトリナー、マーメイデスト、ツインスウィーテス、そしてポイズノームの七人でなんとかマリスを倒すことに成功するのだった。
桜名美姫は今日もいつものように会社で淡々と仕事をこなしていた。そんな美姫にある男性が話し掛ける。
「美姫、元気?」
「どうしたのギジュ?」
その男性の名は鴻野義重。普段は美姫の会社の別の部署に勤務していて美姫とは恋人の関係にあり、美姫からはギジュと呼ばれている。この日、義重は別の部署にいるはずの美姫に話し掛けていた。
「もう、勤務中なんだから来ないでよ。」
「そんなこと言うなよ。今日はこの部署に用があって来たんだからさ。」
この日、義重は仕事の関係で別部署である美姫のところを訪れていた。
「それでさ美姫、今度の休日空いてる?」
「デート?それなら仕事の後にしてよ。」
義重は美姫をデートに誘うが、美姫はストイックな性格のため義重を追い返す。しかし美姫にとって義重に話し掛けられるのは嫌いではなかった。元々人に心を開く性格ではなかったため、ホロテイルジュに出会う前は義重が唯一の心の拠り所だった。
「じゃあ、また後でね。」
「うん、待ってるよ。」
そして義重はそう言って美姫の元を後にするのだった。
一方、ダークストーリーズではウィッチ・シスターズにパンドラス、ギルベアー、バブルガスが冷たい視線を送っていた。
「何で魔女が毒リンゴにやられるんだよ。」
「本当、お笑い草ね。」
パンドラスとバブルガスはそう言ってウィッチ・シスターズを責める。
「うるさい、この前はたまたま運が悪かっただけだよ。」
「次は上手くやるさ。」
ウィッチ・シスターズは必死に言い訳をする。それがパンドラス達にとってはかなり痛々しく見えた。そしてパンドラスはギルベアーの方を向く。
「ギルベアー、お前人間界に行って来いよ。暴れてもマリスを産み出しても良いからさ。」
「ああ、わかった。」
ギルベアーは特に何の感情を抱くこともなく人間界へと赴く。
「行ってら~。」
パンドラスは特に期待することもなく気の抜けたような声で言う。
そして週末、美姫は義重とデートを楽しんでいた。
「ごめんねギジュ、この前は冷たい態度なんかとって。」
「いや、俺も仕事中に話し掛けたんだから。」
美姫は先日仕事中に義重を追い返したことを気にしていたが、義重も話し掛けてしまったことに罪悪感があったため咎めることはなかった。そして二人は更に歩を進める。その様子を、たまたま居合わせていた水原夜衣魚と鈴木林檎が目撃していた。
「あれってデート?もしかして美姫さんの彼氏?」
「多分そうだと思う、…っていうかあまり見ないの。」
夜衣魚は興味津々に見ていた。林檎はそんな夜衣魚を咎める。
「えぇ~、別にいいじゃん。そうだ、ちょっと見てみようよ。」
夜衣魚はそう言って美姫と義重の後を追おうとする。
「あ、ちょっと夜衣魚!待ちなさい!」
林檎も夜衣魚の後を追う。
「あ、あの二人行っちゃった。私も行くか。」
そして、近くでずっとパフェを食べていた双見アラモードも二人の後を追うことにするのだった。
一方、洋館では桃井剣二、浦賀輝弓、金山依斧の三人が集まっていた。
「この前の戦いの疲れは取れたか?輝弓、依斧。」
「お陰様でね。」
「なんとか取れました。」
剣二は輝弓と依斧に労いの言葉を掛ける。皆は先日までの事件のせいで夜中も活動する日が続いていたため、疲労感が蓄積していた。しかしそれから暫くはダークストーリーズが現れることがなかったため皆は疲労感がすっかり取れていた。
「はぁ…、それにしてもこのメンバーじゃ結構ギリギリじゃね?もっとメンバー増やせないの?」
「いや、ホロテイルジュの力を引き出すのに最も重要な宝石が12個しかないらしい。」
輝弓はホロテイルジュのメンバーが少ないと感じるようになっていた。しかし剣二はホロテイルジュがどうしても12人までしか増やせないと言う。
「だったらせめて、未だ姿を現わさない残り三人に協力を仰ぐことは出来ないんですか?」
依斧はホロテイルジュにいると言われている残り三人のメンバーについて尋ねる。すると剣二はあることを言い出す。
「それなら会ってみるか?残り三人に。」
「「え?」」
剣二の言葉に、輝弓と依斧は驚いていた。今まで剣二以外のホロテイルジュのメンバーは皆、残り三人に会ったことがないからだ。
「剣二、お前どこにいるか知ってるの?」
「ああ、俺について来い。」
剣二はそう言って部屋を出る。そして輝弓と依斧も剣二の後を追うように剣二の後を追うのだった。
一方、街に降り立ったギルベアー。そしてギルベアーは堂々と街を徘徊する。
「さて、どうするか…。」
ギルベアーはマリスを産み出すことを苦手としていた。それ故にどうすればいいのかわからずにいた。そしてギルベアーは徘徊を続けるのだった。
美姫と義重は引き続きデートを楽しんでいた。二人はとある宝石店に行く。
「この指輪なんか綺麗じゃない?」
義重は沢山の宝石が並ぶ中で一際輝く指輪を見つける。
「これ結構高くない?」
美姫はその指輪の値段の高さに心配する。
「でも美姫、これくらいの指輪じゃないと君のしている指輪に負けちゃうだろ?」
「これは…、特別だから…。」
義重は美姫のしているダイヤモンドの指輪をとても綺麗に感じていた。しかし美姫はこの指輪がホロテイルジュの指輪だと知っているため、あまり比べられたくはなかった。
「お祖母ちゃんの形見だっけ?凄く綺麗な指輪だよね。」
「まあね。私もずっと綺麗だと思ってたんだ、この指輪。」
美姫はそう言って祖母である桜名琴姫との思い出に浸る。
「大好きだったんだね、お祖母ちゃんのこと。」
「うん。」
二人はそんな会話を交わす。その様子を夜衣魚は宝石店の外から見ていた。
「あの人、美姫さんとの結婚を真剣に考えているってことなのかな?」
「さあね、…っていうかどこまでついて行ってる訳?」
林檎は美姫のデートをこっそりと見ている夜衣魚に呆れていた。そしてアラモードはパフェを食べながら全く別の方を向いていた。
「アラモード、あんたは何処を見てるの?」
「あそこ、ダークストーリーズの幹部かなって。」
「え?」
アラモードがそう言って指を差した方向を向くと、そこには街を徘徊しているギルベアーの姿があった。
「ちょっと、それならもうちょっと早く言いなさいよ。」
ギルベアーを見つけてもなおマイペースを崩さないアラモードを林檎は咎める。
「ちょっと夜衣魚、ダークストーリーズ。」
「え、嘘?」
夜衣魚は林檎からギルベアーのことを聞いて驚く。
「よし、剣二さん達を呼ぼう。」
夜衣魚はそう言って携帯電話を取り出し、剣二に連絡を入れる。
「もしもし剣二さん?夜衣魚です。ダークストーリーズの幹部が現れました。何か熊っぽい奴です。」
「ギルベアーか。今そこに誰がいる?」
「私と林檎、それと…、アラモードです。」
剣二は夜衣魚に、その場に居合わせている人を尋ねる。夜衣魚は美姫のデートを邪魔したくはないため、あえて美姫のことは伏せる。
「そうか、ならお前達でなんとかしてもらっていいか?ヤバくなったら連絡して来い。」
「え、ちょっと!」
夜衣魚は剣二に戦いを頼まれて驚き、剣二に問おうとするが剣二は電話を切ってしまう。
「切れちゃった…。どうしよう林檎。」
「やるしかないでしょ。アラモードも。」
「え、そんな…。」
夜衣魚は日和ってしまうが、林檎はやる気を出す。そしてアラモードはいつものように面倒くさがってしまう。しかし林檎は無理矢理二人を連れてギルベアーの元に立つ。
「そこまでだよ、ダークストーリーズ。」
「ちっ、ホロテイルジュか。」
林檎はギルベアーに向かって啖呵を切る。そして三人は一斉に本を開く。
「うお座!アクアマリン!人魚姫!」
「ふたご座!オパール!ヘンゼルとグレーテル!」
「さそり座!アメジスト!白雪姫!」
三人がそう叫ぶと空が暗くなり、うお座とふたご座とさそり座が現れる。そして空から声が聞こえる。
「Miracle Force!」
「来ちゃって!」
「カモン!」
「来なさい!」
三人が空に叫ぶとそれぞれの星座の最輝星が光を放ち、三人の指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、三人の体を包む。やがて三人の体が光を放ち、三人は戦士の姿へとその姿を変える。
「マーメイデスト!」
「ツインスウィーテス!」
「ポイズノーム!」
三人はそれぞれ名乗り、ギルベアーに立ち向かう。
「剣二、行かなくて良かったのかよ。」
「ああ、一回あいつらだけでやってみたらいい。」
一方、ギルベアーとの戦いを夜衣魚達に任せた剣二達。剣二は夜衣魚達が普段あまり戦わないため、一度夜衣魚達だけで戦わせようとしていた。
「鬼畜だねぇ。」
「何とでも言え。」
輝弓は剣二に対し軽い鬼畜さを感じていた。そしてそれを皮肉のように言う。
「ところで剣二さん、この扉は?」
依斧は剣二にそう問い掛ける。剣二、輝弓、依斧の三人は洋館の中の行ったことのない扉の前にいた。
「まさかこんなところに扉があったなんてねぇ。剣二、あの中に残り三人が?」
「ああ。正確に言うとあの扉はホロテイルジュの真の本拠地とも言うべき異空間へと繋がっている。そこに残り三人がいるはずだ。」
「そんなところがあるなんて…。」
輝弓の問いに剣二はそう答える。依斧はホロテイルジュが異空間に繋がっていることに驚いてしまう。
「それじゃあ、行くぞ。」
そう言って剣二は恐る恐る扉を開ける。すると眩い光が放たれる。
「「「うわぁぁぁぁぁ!」」」
マーメイデスト、ツインスウィーテス、ポイズノームの三人はギルベアーに苦戦してしまう。
「さっさと決めないと…。」
ツインスウィーテスはそう言って二本の小刀を召喚し、両手で逆手に持つ。
「ツインデスナイフ!」
ツインスウィーテスは小刀をギルベアーに斬り付けようとする。しかしギルベアーはツインスウィーテスの腕を掴み、動きを封じてしまう。
「そんなことで、俺を倒せると思ったか。」
ギルベアーはそう言ってツインスウィーテスを投げ飛ばす。
「うわぁぁぁ!」
ツインスウィーテスは地面に叩きつけられてしまう。
「こうなったら…。」
ポイズノームはギルベアーの動きを封じようと毒リンゴを投げつける。しかしギルベアーは片手で毒リンゴを掴んでしまう。
「これがウィッチ・シスターズを痺れさせた毒リンゴか。俺に通用すると思うな。」
ギルベアーはそう言って毒リンゴをぐしゃっと握り潰す。
「そんな…。」
ポイズノームは落胆してしまう。
「今度は私が!」
マーメイデストはそう言って三又の槍を召喚する。
「マーメイトライデント!」
マーメイデストは槍を振るうが、ギルベアーはまたしてもいとも簡単に受け止めてしまう。
「その程度の力で俺を止められないことを、思い知れ!」
ギルベアーはそう言ってマーメイデストに蹴りを入れ込む。
「うわぁぁぁぁ!」
マーメイドもギルベアーの攻撃で吹っ飛ばされてしまう。
「ねぇ、やっぱりここは美姫さん呼ぼうよ。すぐそこにいるんだし。」
三人ではギルベアーに歯が立たず、ポイズノームは美姫を呼ぶことをマーメイデストに提案する。しかしマーメイデストはその提案を却下する。
「ダメ、美姫さんはデート中なんだから。」
「そんなこと言ってる場合⁉」
ポイズノームとマーメイデストは言い合いになってしまう。そしてツインスウィーテスは力が抜けてしまう。
「やば、もう糖分切れちゃった…。」
ツインスウィーテスは立ち上がれなくなってしまう。
「やはりホロテイルジュもこの程度か。」
ギルベアーはそう言って三人に止めを刺そうとゆっくり近付く。
「もう…、こんなところでピンチになるなんて…。」
三人はギルベアーに成す術もなく、ギルベアーが近付いて来るのをただ待つしかなかった。
「レーザーストライク!」
すると突然、その声と共にレーザー光線が飛んで来てギルベアーの胸を貫く。
「何だこれは…?」
ギルベアーは突然自身の胸を貫いたレーザー光線に驚く。マーメイデスト達三人も驚き後ろを振り返る。するとそこにはシンデレーザーがいた。
「まさか…、こんなことが…。」
そしてギルベアーは消滅してしまう。
「みんな、大丈夫?」
シンデレーザーはそう言うと美姫の姿に戻り皆の元に駆け寄る。マーメイデスト達も元の姿に戻る。
「美姫さん、すみません。」
夜衣魚は美姫に助けられたことに申し訳なさを感じてしまう。
「もう、ダークストーリーズが現れたなら言ってよ。私すぐそこにいたんだから。」
「ごめんなさい、私は呼ぼうって言ったんですけど…。」
美姫は自分を呼ばなかったことを責め、林檎は弁解しようとする。
「じゃ、じゃあ美姫さん!美姫さんは忙しいんだからもう行ってください。」
「え?いや忙しいって…、確かに人を待たせてるところだけれど…。」
夜衣魚は美姫を恋人の元に行かせようとする。美姫は夜衣魚の行動に困惑しながらも三人の元を後にする。
「さて、私達はどうしよっか…。」
美姫を見送った後、林檎は夜衣魚にこれからどうしようかと尋ねる。
「もう美姫さんの後を付ける訳にも行かないしね。」
「っていうか、元々ダメなんだけどね…。」
夜衣魚と林檎はもう美姫の後を追うことを止めようとする。するとアラモードは何処かへ行こうとする。
「アラモード、どこ行くの?」
「だってさっきの戦いでお腹空いたし、またパフェ食べないと。」
林檎の問いにそう答えて歩を進めようとするアラモードに夜衣魚と林檎は呆れてしまうが、二人も他にいくところがないため仕方なくアラモードについていくことにする。
一方、剣二、輝弓、依斧の三人はホロテイルジュの残り三人がいるとされている異空間へと繋がる扉を開けてその異空間へと赴いていた。そして三人は扉から戻る。
「はぁはぁ、中々疲れる場所だね剣二。」
「確かに、消耗が激しいですね。」
輝弓と依斧は初めて訪れた場所に疲労が蓄積していた。
「ああ、俺も初めて訪れた時はこんな風に疲れてしまったものだ。」
剣二も輝弓と依斧に労いの言葉を掛ける。
「ところで、一つ聞きそびれていたことがあったような…。」
輝弓は謁見したホロテイルジュの残り三人に何か尋ねることを忘れていたと感じる。
「何かあったか?輝弓。」
「う~ん。」
不思議に感じた剣二は輝弓に尋ねるが、輝弓はしばらく頭を抱えてしまう。しかし、突然思い出す。
「あ、美姫さんのこと!」
「あ。」
「美姫さんのこと?」
剣二と輝弓は美姫の祖母、ホロテイルジュの創設者のことをすっかり尋ねそびれていた。依斧はそのことを知らないため、何のことか全くわからなかった。
「まあいい、次は他のみんなを連れて行こう。その時に聞くんだ。」
「そうだね。」
剣二と輝弓は美姫にまつわることをまた次の機会に尋ねることを決め、この日は解散するのだった。
そして時間が暫く経ち辺りがすっかり暗くなった頃、美姫と義重は少し高級なレストランにいた。
「今日は結構奮発するね、ギジュ。」
「今日は大事な話があって。」
「大事な話?」
美姫は色々な物を買ってくれたり、高級なお店に連れて行ったりする義重に驚くが、義重には大事な話があるようだ。そして夜衣魚達はまたしてもその場に居合わせてしまうのだった。
「アラモードが新しくパフェのメニューを出したレストランに行きたいって言うから来てみたら、まさかまた美姫さんのデート現場を目撃しちゃうなんて…。」
夜衣魚は説明口調で驚いてしまう。
「あまりじろじろ見ないの。」
林檎は夜衣魚を注意する。そしてアラモードは相変わらずパフェを口にしている。
「でも気になるじゃん。だって今から大事な話をするんだよ。」
夜衣魚は義重がすると言う大事な話が気になって仕方がなかった。
「これはきっと、『結婚して下さい』だね。もうそれしかないよ。」
「まあ、多分そうだろうね。」
そして義重はゆっくりと口を開く。
「実は美姫、俺と別れて欲しいんだ。」
「え?」
「「嘘⁉」」
義重の言葉に、美姫は驚いてしまう。そしてそれ以上に夜衣魚と林檎が驚いてしまう。義重は更に話を続ける。
「実は、今の仕事の他にやりたいことが見つかって会社を辞めようと思っているんだ。」
「でも、それなら別に別れる必要なんか…。」
「いや、やりたいことをするためには君と別れなきゃいけない。君に迷惑を掛ける訳には行かないんだ。」
「そんな無茶苦茶な…。」
美姫は義重の身勝手な言い方に呆れてしまう。そして美姫も決断をする。
「わかったよギジュ、その目は本気だってわかるから。」
美姫は義重と別れることを決める。
「じゃあね、美姫。」
「じゃあね、ギジュ。」
そして義重は美姫を残してレストランを去ってしまう。そしてその光景を見た夜衣魚と林檎は唖然としていた。
「何この急展開…?」
「最終的に自分から連れて来たレストランに置いて行くとか、正気…?」
夜衣魚と林檎は義重の行動が信じられなかった。そして二人は、美姫と目が合ってしまう。
「夜衣魚ちゃん、林檎ちゃん、アラモードちゃん…?」
「「やば…。」」
二人は気まずくなってしまう。そして美姫は夜衣魚達が座っているテーブルの方に席を移動する。
「さて、どこから見てた?」
美姫は夜衣魚達に詰め寄るように問う。夜衣魚達は言葉が詰まりながらも説明する。
「え…ええと、このレストランにはたまたま…。」
「そう、アラモードが新しいパフェのメニューが出来たレストランに行きたいって言うから…ね?」
夜衣魚と林檎はなんとかレストランから見ていたことにして誤魔化そうとする。しかし、パフェを食べているアラモードが口を滑らせてしまう。
「それにしても、あの相手の人も酷いですよね。色々な物を買ってあげたりしてデートを楽しんでおきながら結局別れるなんて。」
「ねぇ、それレストランからじゃないよね…?」
「「あ、アラモード…!」」
アラモードの言葉で美姫はデートにずっとついて来たことを悟る。そして夜衣魚と林檎はアラモードにひしひしと怒りを覚える。
「まあいいや、今日は一緒に食べよ?」
「そ、そうですね美姫さん。」
「一緒に食べましょう!」
美姫は義重から別れを告げられたショックで疲れてしまい、夜衣魚達と共に食べることを決める。
「じゃあ美姫さん、お酒でも飲みましょ?」
「そうだね。」
夜衣魚はお酒を注文することを提案し、美姫も賛同する。そして未成年であるアラモードは引き続きパフェを食べるが、美姫達はお酒を飲む。すると次第に美姫はお酒が回ってしまう。
「大体ねぇ、あの男は前から独り善がりなところあったの!」
「美姫さん、もうその辺で…。」
林檎はお酒で気が立つ美姫を落ち着かせようとする。しかし夜衣魚は美姫に便乗してしまう。
「そうですよね!あんな男のことなんて忘れちゃいましょう!」
「夜衣魚、何であんたも酔ってんの?」
林檎はお酒に酔う二人に収拾がつかなくなってしまう。
「林檎、会計は私が済ませておくからどこかバーでも行ったら?」
「任せたアラモード!」
林檎は会計を引き受けるアラモードに珍しく頼もしさを感じ、お金を渡して美姫と夜衣魚を連れてレストランを出る。そしてアラモードは引き続きパフェを食べるのだった。
「ほら美姫さん、バーに行きますよ。夜衣魚も!」
「「ふぁ~い。」」
林檎はかなり酔いが回っている二人を連れてなんとか近くのバーに行く。そしてそれからの美姫の記憶は途絶えてしまうのだった。