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9:余韻は広がってゆく

-同時刻、第17部北市-

「失敗か…」

「申し訳ありません。レン様。」

「あのチビ一人に何をてこずっているんだ?まともに魔法も使えん奴だろ?」

「いえ、彼ともう一人、友人と思われる男が一人。」

「そいつに負けたというのか?お前が?」

「いえ。実力では私とほぼ互角。あまり差はなかったように思います。」

「じゃあなぜ?」

「…戦闘中-その友人にとどめを刺そうとした時、彼、タクが叫んで、同時に強い落雷が発生しました。」

「まさか?」

「はい。彼の魔法だと思われます。」

「…そうか。タエ、ご苦労だった。下がっていろ。」

「…はい。」

「グレン!ソウ!お前たち二人ならやれるな?」

「「ハッ。」」

「ならば恐らく16の南に戻るはずだ。」


「お前たちがいい知らせを持ってくることを期待しているよ。」


-第16部西市郊外-

「この辺で休まないか?もう疲れた。」

「…あなた、ここを走ってきてたんですよね?」

何を言いたいかわかったような気がして、恐る恐るうなずく。

「よくそんな体力でそんなことができましたね。」

「ですよね~」

「まあいいです。もう夜も近いですし、この辺で食事をとってゆっくりしましょう。」

「じゃあ、あのレストランがいい。」

さしたのは、子供のころに出かけるとよく行っていたレストランだ。


「ここは肉料理がおいしいんだよ。」

「へぇ~…じゃあ、ハンバーグ1つ。」

「僕はステーキで。」

店員が去ってから、ルリが何かいいたげにしている。

「…金は持ってるからな?」

「…よかったです。」

安心したような顔を見せる。…まあ、ステーキは結構高いし…しょうがないよね?

「ここに来たことあるんですね。」

「うん。小さいときによく南市に出かけることがあって、その帰りにここに来ることが多かったんだ。」

「お父さんと?」

「うん。両親と一緒に。」

「あなたには兄弟はいないんですね。」

「いないけど、小さいころに兄弟みたいにして遊んでた…」

その時に気づく。…そう、キボウからの手紙だ。

バッグの中をあさる。…ない。

「どうしたんです?」

「いや…ちょうどその子からの手紙が家にあって…」

「…なくしたんですか?」

「いやぁ…どっかにあると思うんだけどなぁ…」

バッグをひっくり返して一から探る。

…ないよなぁ

ルリが立ち上がって僕のズボンを指さす。

「そのポケットのふくらみは何ですか?」

…あ。

「はい、あたりですね。」

あきれたような顔で言ってくる。

「料理が来るまで時間がと思うので、その子との話、聞かせてもらえませんか?」

「そうだな…少し長くなるかも。」

「お構いなく。」

「じゃあ…僕5~8歳くらいの時まで、時間があれば家で一人で遊んでるような奴だったんだ…


-2048年8月4日(タクが6歳のころ)-

「これで、こうして、こうだ!」

こうして家でパズルを1人ですることが一番の楽しみだったりする。

あまり多くの人と遊んでもうるさいだけだし、仲間外れもたびたびあったから、親がいないときにはこうして一人でいることが多かった。

「おーい、タ~ク~」

それを知ってから、

「お~い!いるんでしょ?」

母親は何度も

「はいっちゃうよぅ?」

こいつを…!

「何で返事してくれないの?」

隣で横になってこっちにうるさいほど話しかけてくる奴がキボウだ。

「うっさいなぁ!」

「や~っと返事したぁ~」

「なんだよ家に無断で入ってきて!」

「タクのお母さんには許可とってるも~ん」

「…くッ!」

何も言えなくて悔しい。確かに『無断』ではない。

「…なんだよ」

「いやぁ~?ずっと一人でパズルして、なぁ~にが面白いんだろうなって。」

「別にいいでしょ。一人でしてたって。」

「だって、友達とワイワイやったほうがいいじゃん。楽しくて。」

「…そうかな?」

「そうだよ。」

「いや、僕はそうは思わないぞ。」

「いじっぱりだなぁ~」

「…っていうか、なんで君はうちに来るんだ?僕は一人がいいんだから、他の子と遊べばいいじゃん。」

「ん~?それはね…


君といるのが特別楽しいからだよ。」


そのときの僕にはあまり意味が分からなかった。

ただ、変な奴だなぁとだけ思っていた。

そのあとキボウはある日、一人の子を連れてきた。また女の子かい…と思っていた。

その子の名前はタエといった。

僕たちはしばらく3人で遊ぶようになった。

タエは僕と同じで考えるゲーム(パズルとかドミノとか)が得意で、

キボウは僕とは正反対の体を動かす遊び(鬼ごっことかボール系の遊び)が得意だった。

僕とタエがパズルをしている中に入って、キボウが

「早くサッカーでもしようよ~!」

と割り込んできたこともあった。

そんなこともあってか、タエと話す機会は増え、強いきずなを感じられるようになり、

逆にキボウとは話す数が減って、何か特別感を感じることが増えた。


1年半、そんな生活が続いた。

そしてある日、キボウは外でバスケットボールのフリースローをしていて、

タエと僕とでトランプをしている時だった。

タエが言った。

「ねぇ…タクくんはさ…」

「うん?」


「好きな子っているの?」


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