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7:守り抜くべきキボウ

タエが襲いかかる。

頭が回らなくなる。

手を払う。タエの手首に当たり包丁が宙を舞い、床に刺さる。

「凄いすごい!タクくんも男の子だね!」

違う。たまたま当たっただけだ。わざとこうしようとしたわけじゃない。

「やっぱり強いなぁ…強い人のほうがいい。そっちのほうが長期戦で疲れて弱ったところを見れる。強い人が絶望するところを見れる。」

「やめてくれ!なんで僕を殺すんだ!」

「この前、タクくん、私のグループのところに来てくれたでしょ。」

「…まさか、レンのとこか!?」

「そう。それでね、リーダーがカンカンになっちゃって。」

「私がタクくんを殺しに行きますって言ったら喜んで受けてくれたよ。」

「なんでお前なんだ。」

「私なら、タクくんの家だってわかるし、何より…


「好きな人を殺せるって素敵なことだと思わない?」


タエがほほ笑む。意味が分からない。

「ちなみに、あなたはまだ知らないと思うけど…

「キボウを殺したのは私だよ。」

「…は?」

もう訳が分からなくなってきた。いろんな情報が整理しきれない。

「…なんでだ?お前があいつを殺す理由なんて…」

「あるよ。理由ならたくさん。」

「…でも、まとめて言うなら…

「邪魔だったからかな。」

「…邪…魔?」

「簡単だよ。私の好きな人に近づき過ぎてしまった。それだけだよ。」

「そんなことで人を殺すのか?」

「そんなことって何よ。まあ、これから死ぬ人に説明する意味ないか。」

包丁が再び自分のほうへ向けられる。

ああ、今度こそあの刃が自分の胸に突き刺さる。想像するだけで寒気がする。

「じゃあね。タクくん」

右腕から痛みが走る。

…右腕?なぜか刃物の痛みではなかった。

気が付くと自分は床に倒れていた。


「っざっけんなよ!」服をつかまれる。

「リュウ?」

リュウは俺を蹴って攻撃からそらしたようだった。

「俺の試合見に来るって言ったよな!?」

「…」

「ただいまって俺に送ったよな!?」

「…うん。」

「それで来て見たらなんだよこの状況は!?」

「生きて帰ってきて本っ当に安心したのによ!」

意外だった。あんな風に別れたのに心配をかけていてくれていたとは。

タエが口を開く。

「…あなたは誰ですか?タクくんとはどういう関係で?」

「俺はリュウ。MKプレイヤーでタクの親友だ!」

「親友…」

「俺からも質問だ。なぜおまえは刃物を持っている?」

「それはですね、リュウさん…

「あなたたちを殺すためですよ!」

「そうか…なら正当防衛で行こうか。」

突き立てられた刃を鉄で覆った手でへし折る。

「なっ!?」

「残念だけど、俺もこいつもこんなところで死ぬわけにゃあいかないんだよ。」

「…後ろの窓から逃げるぞ。」タクがこっそり耳打ちする。冗談じゃねえ。ここは二階だぞ?

「おい、おめぇは生き延びたいと思ったときどうするか知ってるか?」

「はい?」

「そういう時は逃げんだよ!」

手をつかまれる。リュウは拳でガラスを割り、飛んだ。

ドサッッ

足がしびれる、リュウはそんなことを気にせずに手をつかんだまま走り出す。

半分引っ張ってってもらうような形になってしまった。完全に足手まといだ。

「おい、もうちょっと速く走れないのか?」

「足がしびれて動かねぇんだ。」

「嘘だろぉ~なんでお前を介護しながら戦わなけりゃいけないんだよ。」

「ごめんって」

そして少し離れた空き地にやってきた。

「八ァ…ハァ…ここまでくれば…少しくらい…時間稼げるだろ…」

「甘いですね」

タエはとっくに追いついていて、自分たちとの体力の差が感じられた。

「逃げられたつもりでしたか?」

「いや、時間を稼げればそれでよかったんだ。」

「なぜわざわざ…これだから諦めが悪い人は嫌いなんです。タクくんはもっと早くに諦めたのに…」

「ふっ…そうかい。」

「余裕そうですね。」

「これよりもきつい練習なんて何回でもしてきた。体力の尽き果てた状況での戦闘は慣れてるもんでね。」

「MKプレイヤーですか…」

「ああ、そうさ。戦っても逃げるのはそっちだぞ。」

リュウの拳が鉄に包まれていく…どう考えても本気で戦うつもりだろう。

「リュウ…本気でやるのか?」

「なぁに、俺たちに勝てないとわかれば諦めんだろ。」

「僕には何もできることはないぞ。」

「大丈夫。俺が何とかする。」


「任せたぜ!」

「ああ!」

僕たちは拳を突き合せた。





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