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5:僕≠君

「では、準備はいいですか?」

「完璧だ。」


2057年12月2日18時30分


「あら。いらっしゃいませ。」

「またお願いします。お姉さん。」

「ハルでいいです。で、今日はこんな遅くにどちらへ?」

「第17部北市にお願いします。」

「ちょっと遠出ですね…了解です。1人2000円づつ4000円頂戴します。」

さっきから心臓がバクバクしている。

「でも、気を付けてくださいね。その辺は犯罪が多いとか聞きますし、そういう組織の拠点もあるらしいので。」

当たり前だ。これからそこへ行くのだから。

「はい、承知しています。」

「ではいきますよ~では気を付けて!」

ビュン

「いってらっしゃ~い!」

この前よりも高く、速いスピードで向かっている。

街の一つ一つの建物から光が漏れ、この街全体が輝いて見える。

やがてその光も見えなくなり、山を越え、また違う街が見えてくる。

しかしここはさっきよりも暗く、寂しい感じがした。

そこにひときわ影を落としている建物。周りの建物と形はほとんど変わらないが、雰囲気が全く違う。

「あれですか。レンの組織の本拠地。うまい具合に紛れ込んでいますね。」

「結構目立たないか?」

「それはたぶんそう思っているからです。普通の人には倉庫か何かのようにしか見えないはずです」


僕らはその目の前に立つ。その瞬間、

ガチャ

扉が開いた。

「どうぞ。そこにいるということは我々に何か用があるのでしょう?」

大人らしい女性。心臓が止まるかと思った。

建物の中に案内される。

「この奥にレン様がいらっしゃいます。どうか、話し合いは慎重にお願いします。彼は好戦的ですから。」

のどが渇き、鼓動が早くなる。この明らかに違う雰囲気の空間に入ることを身体が拒絶している。

その恐怖を破るため、ルリに声をかける。

「入るぞ。」

ルリがこくりと頷くのを確認し、その空間に立ち入った。


広々とした空間。もともとは本当に倉庫だったであろう残骸が片隅に固めてある。

壁は少し汚れていて、床も汚い。天井には蜘蛛の巣が張っている。

そして奥に恐らくレンだと思しき男が一人立っていて、その脇にも数人いる。

レンが口を開く。

「俺らのチームになんか用か?最近はうちに入りたいとかいうおかしいやつも増えてきたが…お前もそれか?」

「…この前、僕の両親が死んだんだ。」

「は?」やつの仲間が口をはさむ。

「二人そろって仲良く買い物してたんだよ。」

「…それをお前が殺したんだ。」

「…ほう。それで?」

「16部南市のファッションセンターでお前が僕の親を殺したんだ!その復習に来た!レン!!」

レンにとびかかる。…が、レンの目の前に何かがあってやつに近づけない。

「そうか。でも俺はお前の親なんか知らねえ。俺はそこにいた違うやつが目標であって、お前の親など興味はない。」

ガハッ

レンが操る“何か”によって吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

「あと、俺の魔法のことについて知らねぇようだから教えてやる。」

「俺の魔法はこの世で最強の魔法、第六魔法「異能」だ。詳しく言えば俺を守る最強のバリアを作り出し、それを操る。」

横を見る。ルリは他のレンの仲間と交戦中だ。

ルリを見て思い出す。“魔法が発現してないなら誰かから借りればいいじゃないですか!”

リュウ、お前の魔法、借りるぞ!

拳を鋼で包み込む。僕とリュウの合わせ技だ。

「これなら!」レンに向かって走り出す。

見えないバリアに当たる。その瞬間に拳を前に突き出す。何にも負けない硬い拳だ。

「それがお前の精一杯か?」レンが笑いながら言う。

俺の全力を込め、鋼で強化された拳は何も破れなかった。

「お前にはこれは破れない。これで分かっただろう?俺に挑戦するのは無謀だったと。」

どうして!どうして破れない!これで終わりなのか?

あの過酷なトレーニングは?リュウの試合は?

体が浮く。レンの魔法により首をつかまれる。

「ウッ…は…なせ…」

「残念だったな。こんなにあっけなく死ぬとは思わなかったか?」

正直自分が死ぬなんてことは考えていなかった。ただ自分の怒りで動いていた。

「残り少ない生きている時間に自分のしたことを悔いるんだな。」

ここで負けるのか…

まあ、冷静になれば2人であったとしても力が足りないことはわかっていたかもしれない。

もっとリュウにはっきり別れを告げておけばよかった。

力が抜けていく。視界が暗く、どんどん狭まっていく。


死ぬのか…



「生きて帰るって約束したのにもう諦めてるのですか?」


ルリの声だ。

フッと首にかかる力が消える。

おかげで呼吸を取り戻せた。

見るとルリと戦っていたレンの仲間は倒れていて、ルリはレンにとびかかっている。

「どうやらあなたのお仲間は負けてしまったようですよ。レンさん。」

「あまり1対1を好まないやつが多いからな。だが、お前が魔法を使っているようには見えなかった。どうやって勝利した?」

「あなたに言うほどのことはしていないのですが…まあよく見ればわかりますよ。」

そういいながらルリは跳びまわっている。おそらくレンの魔法をすべて避けているのだろう。

「ほう…俺にはお前が俺の魔法がどこから出るのか読み切っているように見える…」

「ほとんどそのような風です。」

「つまり予測ができると?」

「さあ?」

「じゃあこれは?」

ドガッ

俺を押しつぶすかのような力が働く。

「ウガアアアアアア」

「タクさん!」

ルリが奴の魔法を押し上げ、手を差し伸べる。

そのとき、ルリが振り返りレンのほうを向くと焦ったように言った。

「いったんここを離れましょう!はやく!」

ルリの手をつかむ。その瞬間にルリは高く飛び上がり、上のほうにある窓を突き破った。そのとき。

ドドドドドッ

この部屋自体が崩れ始めていた。

「間一髪でした。」

「何が…起きた?」

「私が振り向いた時、レンは複数のバリア…まあ板みたいなものですが、大量に展開してたんです。」

「完全に私たちを生き埋めにするつもりでしたよ。あの人。」

「何でそれがわかるんだよ?」

「ああ、まだ言ってませんでしたね。私の魔法。というより能力に近いですけど。」


「私の能力は、魔法を見る。第8魔法に属するものです。」


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