17:夢から覚めた朝
…光が眩しい。
目を覚ますと知らない部屋が…いや、僕はここを知っている。南市の魔法式病院だ。
何も変哲もない、普通のベッドの上にいる。
ベッドの横に机があって、その上にリンゴやら、桃やらがかごの中に入れてある。
誰かお見舞いに来てくれたんだろうか。…誰が?
というか、あれから何日がたったんだろう。
正直、奴の前に立って雷を思いっきり受けたところまでしか記憶にない。
それから先を思い出そうとすると頭が痛くなってくる。
僕が生きてるってことは、少なくとも奴は何とかなったんだろう。
左側にある窓から街が見えてくる。
いつものようにきれいな街…というわけにはいかなかったけれど、修復作業や市場などが見えてこの街の活気が戻りつつあることに少し安心する。
ガラっと病室の戸が開く。
「やあやあ。今日もレイラお姉さんが見舞いに来たぞう!…なんて、起きないのにこんなこと言っても……うわぁっ!」
一瞬目が合って、とんでもなく驚いた顔をして病室を飛び出す。
レイラお姉さん?…ああ、魔法管理会にいたあの人か。
開けっ放しの戸の奥から少しずつ話し声が近づいてくるのが聞こえる。
「…だから、タクくんが目ぇ覚ましてたんだって!」
「ほんとですか?」「うそっぽ。」
さっきのお姉さんの声と、そのほかに2人の声が聞こえてくる。
トントンと、開いてる戸をなぜかたたいてから、部屋に4人入ってくる。
さっきのお姉さん、ルリ、リュウ、そしてハルさんだった。
「ほら!ね?起きてるでしょ?」お姉さんが、こっちを指さしながら3人に訴える。
「ほんとだわ…」ハルさんが口に手を当てて驚いた顔でいる。
「おはようございます。タクさん。」
ルリが安心したような顔で手を握る。その眼は少し潤んでいるように見えた。
「お、おはよう…」
みんなの反応が意外なものだったから少し戸惑う。
「みんな…なんでそんなに驚いてるの?」
「そっか、寝ているだけだったからわからないだろうけど、あんたはしばらく目を覚まさない予定だったんだよ。…それもあと1か月は。」
「そんなに…?」
「そうです。タクさんは魔力切れの状態で魔法を使った…そんなことができることすら謎ですが、ただの魔力切れでさえ意識を失うほどのものです。それを超えた使用なんて、もはや死のうとしているようなものです。その状態で意識を失っていたので、目覚めるには早くて1か月半。遅いと1年以上かからないと復帰できないといわれていたのですが…」
「ほんとに、こんなに近くに病院があってよかったね~。もうちょっと遅かったら確実に死んでいた。なんて言われたよ。…ねえ?」
お姉さんが周りに同意を求めると、リュウ以外の2人がうんうんと言うように大きく首を縦に振る。
なんか、相当ギリギリな状況だったことはよく伝わってきた。
「心配かけて…ごめん。」
「いやあ…私たちが聞きたいのは謝罪じゃなくて…ねぇ?」
一瞬意味が分からなかったが、すぐになんて言ってほしいかが分かった。
「ええっと、なんか…世話してくれて、あり…がとう。」
少し恥ずかしかったけど、なんとか伝えることはできた…と思う。
「どういたしましてっ!」
「別にどうってことないわ。」
「大丈夫ですよ。」
「…そういえば、リュウはちゃんと復帰できたんだな。よかった。」
「ああ。なんとか治ったぜ。」
みんなが僕を心配していたことに感動しかける。
「タクくんが起きたら、『みんな』であれをしようって言ってたんだった!」
「ん…?『みんな』?『あれ』…?」
「そ。目覚てからすぐで悪いけど…すぐに来てもらえる?」
僕のことを気にかけていた『みんな』はどうやら、この4人だけじゃないようで…