13:作戦、決行
僕の役目は奴の正面に立つだけ。そして時間稼ぎをすること。
できるだけ長く、自分へ注意をひくような感じで。
さっきから震えが止まらない。心臓は跳ねるように動くし、のども乾きっぱなしだ。
…やはり怖い。
今度は助けは来ない。死ぬと思ったときにはもう死んでいるのだろう。
…でも、諦めたくない。やっとここまで来たから。
もしかしたら勝てるかもしれない、信頼を戻せるような道がようやく見えはじめたのだから。
「だからこのチャンスは、このチャンス『こそ』は…絶対につかみ取りたい。」
僕は広場に立って叫んだ。
「僕はここにいる!タクは…ここにいるぞ!」
そして奴が姿を現した。
「ようやく出てきたのか。待たせやがって。」
「僕を殺したいんだろ?なら来てみろよ。」
「ほう…随分と自信を付けたじゃないか?なんだ?みんなから応援でもされてきたのか?」
実際は非難を浴びてきているから、どちらかというと逆なんだけど。
「いいや。僕は元々強い。君とは比にならないくらい強いんだ!」
こうしたハッタリで何とか戦闘を避けるようにしたかったけど、相手には逆効果だったみたいだ。
「はっはっはっ!!面白れぇじゃねえか!いいぜ、見せてみろよ。その強さってやつを。」
奴が構えるのと同時にまたあの炎の龍が出現する。
「くっそ。戦闘はもっと後にしないとなのに…」
予定よりずいぶん早い戦闘入り。これだとルリたちが間に合うかどうかも分からなくなってくる。
仕方なくナイフを取り出す。
その間にも龍は距離を詰めてくる。
「ルリがさっきどうやって龍を消したのか知らないけど…知ってる技重ねるしかないか…」
右足を後ろに引きずり、体をひねる。
「燃えちまえ。」
龍が口を開けて、炎に飲み込まれる直前に!
「高技!『迅』!」
ナイフの切っ先が炎を、龍を切り裂いていく。そして振り上げ切った頃には消えてなくなっていた。
成功だ。
「なに!?魔法なしの攻撃で…」
「どうだ。これが僕の力だ。おとなしく引け!」
精一杯、堂々を演じた。足は震えたまんまだし、目も泳いでいるかもしれない。
だとしても時間を稼げるのなら、どこまででも演じ切ってやる。
「そんな攻撃で破るなんて、俺も舐められたもんだな。」
「どういう意味だ!?」
「そのままの意味さ。そうやって自分の魔法は隠し続ける…手の内がばれないように。」
「なぜそう言い切れる!」
「単純さ。うちのリーダー、レンに恨みを持っていて倒しに来た…でも倒し損ねた。
それならまたもう一度来るはずだ。それまでに魔法は明かしたくないんだろ?違うか?」
「そんなことはない!」
「もうわかってんだよ!それならやめておけ。魔法を使わないと後悔すんぞ?」
だめだ。何を言っても挑発と勘違いされる。ここまできたら、もう…
「しょうがない…」
「やっと使う気になったか。おせえんだよ。」
もう出し惜しみしている暇はない。少しでも多く時間が稼げるのなら、やるしかない。
右手、人差し指だけを立て、
そこに自分の力をすべて指先に集中させる…コツは『ピンポイント』だ。
「これが僕の魔法だっ!!」
自分の真上から雷が落ちた感触がして、意識がプツリと切れる。
「あれっ…?」
―「タクさんが出発してから2~3分経ちました。」
「そろっとね。」
「はい。ここからなら見えるはず……!?」
「どうしたのよ?」
「もう龍が出てきている…つまり戦闘が始まっています!」
「えっ…ちょっと!?」
「まずい…もう時間がないです。その時間の中で、最大のタイミングが来るかどうか…」
「っていうか…ここ少し寒くないかしら。」
「…そうですか?あまりそうとは思いませんが…」
タクさんは何を考えているんでしょうか…緊張?自責?あの顔は少し焦っていますね…
少し耳を澄ますと彼らの話が聞こえてくる。
魔法を隠している…なぜ…レンに恨み…しょうがない…
「…まさか!?」
ドドドドド
「何が起きたのよ!?」
「…雷です。タクさんの魔法…と思われます。」
「へぇ~あの子、雷魔法だったのね…」
「第七…その言い方は悪意がありませんか?」
「いやあ…つい…って!?」
「どうかされましたか?」
「あの子、ぶっ倒れてるじゃない!?」
「!?」
「まずいんじゃないの!?」
「当たり前です。作戦中に…それに敵の前で倒れるなど、もってのほかです。」
「もう…どうしたらいいのよ…」
敵が我を取り戻して彼に近づく。
「びっくりさせやがって。って、おい!なに倒れてんだよ!」
「…返事なしか。しょうがない。もうここで死ね。」
そういって敵は彼の首をつかんで再び炎を呼ぶ。
「じゃあな。最後のは結構よかったぜ。」
ダメだ。走る足が止まらない。今なら確実に取れる!
ナイフを両手に持って振りかぶる。
…とその時。
「…え?」
足が突然動かなくなり、その場に倒れる。その時に初めて自分の足が凍っていたことに気づいた。
倒れた時の音で奴に見つかる。
「おいおい…ここにもバカがいるじゃねぇか…背中を取れば殺せるとでも思ったか?」
「おかしい…あなたの魔法は炎のはず…なぜ足が『凍って』いるのですか!?」
「よく考えてみろよ。魔法は一人一種類…ということは?」
「…まさか二人!?」
考えてもいなかった、二人目の存在…その可能性を忘れる自分の甘さに嫌気がさす。
「そんな顔すんなよ。はなから俺は一人で来たなんて言ってねぇ。」
「ルリ!」
「ハルさん…私のことはいいです…逃げて…」
「おいおい…3人もいたってのかよ…こっちは『二人で』頑張ってたのにさぁ…」
「じゃあ、誰から殺すかは決まってるな…」
「一人は気絶…一人は行動不能…なら、最初に殺すのは!」
ハルさんに指さす。
「私…死ぬの?殺される?」
「ははっ!そうだよ!怖いか?」
彼女の首をつかんで持ち上げる。
「嫌ぁ…誰…か…」
―ここはどこだろう。




