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12:災厄をはらうため

「それでは、作戦会議を始めます。」

「作戦?」

「はい。彼と何もなしで戦うには力の差が激しすぎます。」

「そんなゆっくりしてる暇ないでしょう!?今もあいつが街を燃やして…」

「落ち着いてください。ハルさん。」

「落ち着いてられるもんですか!逆にあんたたちが落ち着いてるほうがおかしいですよ!」

「よく聞いてください。人間には魔法を使うためのエネルギー…『魔力』を持っています。」

「そんなの知ってるわよ!」

「でもそれには限度があります。魔力を消費して魔法を使う以上、魔力がなくなってしまうことがある…それが『魔力切れ』です。」

「いまもあの人が炎をばらまいているのなら、私たちがここに籠っていれば魔力切れを起こして勝ち目があります。…ですが、そんなことは承知のはず。」

「何が言いたいのよ。」

「まだわからんのか?わしたちを急かすための炎じゃ。奴がずっと炎を打ち続ける可能性はほぼない。だから会議にさける時間はたっぷりとあるということじゃよ。」

「…そう。でも、戦う気はないわよ。死ぬのはまだ嫌ですもの。」

「理解しています。…それを踏まえたうえで、サポートに徹していただきたいんです。」

「…どういうこと?」

「作戦の内容はこうです。」

ルリがボードを出す。そして、それに作戦を書きながら説明を始める。

「まずタクさんが正面から出てきます。それに奴が釘づけになっている隙に私が仕留めます。」

「私は?」

「釘づけとはいえ、あの龍がどんな挙動を取るのかはわかりません。なので、私に向かってきた時にハルさんの風魔法で少しだけ、軌道をずらしてほしいんです。」

「なんだ。そんなことですか。」

彼女は少しほっとしたようなそぶりを見せた。

…確かに、彼女の役目なら気づかれる可能性は低いし、ましてや殺されることはほぼないだろう。

…しかし、僕の役目はどうだ。

「…あれ?僕のとこってすごい危険なんじゃないの?」

「…えぇ、もちろんその通りです。ですが奴を釘づけにして周りの注意をそらすには相当のエサが必要です。それに一番向いているのが奴の目標であるタクさん、―あなたでしかできないんです。」

「そうかもしれないけど…」

「大丈夫です。絶対に殺させはしませんから。」

「…了解。」

あまり乗り気ではないけど、受けるほかに道はない。

「そしておじいさん、あなたの役目はここにいる人たちを落ち着けることです。」

「簡単じゃの…まあいい。」

「作戦はここまでです。…最後に一つ。」

「ここにいる誰が失敗しても全滅する可能性は非常に高いです。最大限の注意を払い、臨機応変にお願いします。」

「わかってる。」「はいはい。」「オッケーじゃ。」

「では、30分後には作戦開始の予定でいきます。それまでに準備を。」


各々で装備を整える。…とはいえ、別に僕は準備するものがないし、おじいさんは戦闘自体しないから、女子の準備時間という風になってしまう。

「大変じゃのう。」

おじいさんが突然話し出す。

「何がですか?」

「いやあ…本来恨まれるべきは奴―グレンといったか。だというのに。」

「いや、僕が後先考えずに突っ込んだことが悪いんです。恨まれてもしょうがないですよ。」

「お主がそういうのならわしは何とも言えんが…」

「心配かけてくれてありがとうございます。」

「心配ついでに一ついいか?」

「なんですか?」

「お主は魔法が使えるか?」

「はい…といっても、ついさっき使えただけですから『使いこなす』のは無理だと思います。」

「そうか…ちなみに種類は?」

「第七…雷でした。」

「そうか…」

「いやあ、こんなになってやっと出てきたのに、最弱扱いの雷ですよ。音はうるさいわ、魔力消費は多いやらでこんな魔法で残念ですよ。」

「ぬしは第七は最弱と思っておるか?」

「違うんですか?世間的にはそう言われてるから疑わなかったですけど。」

「そうか…孫が聞いたらがっかりするだろうな。」

「孫?」

「シホのことじゃよ。彼女は自分が第七に生まれたことを誰よりも誇らしく思っておる。」

自分が言ったことを後悔する。まだ小さいあの子の夢を壊してはいけない、そう思った。

「まあいい。こっちにこい。」

と手招きを受け、地下室を出て路地裏に入る。

「使えるのと使えないのとではわけが違うからな。」

「なんです?」


「ここで一つ、いい魔法技を教えてやろう。」


「…でも、うまくできるかわかりませんよ?」

「それでもよい。まずは聞いておけ。」

「…この技は危険じゃから、できれば魔法になれた時に教えるんじゃが…。」

「じゃあ、今教えちゃいけないんじゃ?」

「だがな…この作戦の中で主が死ぬ可能性も捨てきれんからの。」

そう言われて、自分が死の間際にいるかもしれないことを思い出す。

「ウッ…」

「悪い悪い。死ぬなんて思ってないぞ。」

「…それでじゃ。やり方としては、自分に雷を落すんじゃ。」

「…!?それは正気ですか!?」

「だから言ったんじゃ。調節ができてきたころに教えるのが一番いいんじゃが…今は時間がないんじゃよ。」

「それで?」

「それに成功したら運動能力、思考能力ともに跳ね上がるであろう。」

「…成功したら…ですか。」

「ああ。じゃから負けそうなとき、それも最後の最後の手段として使ってくれ。」


「まあ、負けないだろうけどな。ほれ、作戦が始まるぞ。」


そう言い残すとおじいさんは地下室に戻っていった。

それと入れ替わるようにルリが出てきて、ハルさんも戻ってきた。

ルリもハルさんもそれなりの軽装備、といった感じだ。ただ、ハルさんが背負っている大刀が気になった。

「これ、気になるの?」

「いやあ…どうしてそんなでっかいの持ってくんだろうと思って…」

「これね、おばあちゃんからのもらい物なの。」

「へぇ、何かしてたんですか?」

「おばあちゃんは私にいろんなことを教えてくれたの。…まあ、別にこの刀を使えるようなほどじゃないけど…お守り?的な感じで。」

「準備万端ですね。」

「もちろんよ。絶対死ねないもの。」


「準備はいいですか。」

「おう。もちろんだ。」



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