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11:悪夢

「…今の声は恐らく…いや、完全に敵ですね。」

「知ってる。…で、どうしたらいいかな?」

「そうですね…そのまま行くか…奇襲をかけるか…

ですが、どう考えてもレンの集団の一員でしょう。そんなことは想定済みなはず…」

「う~ん…どうしたもんか…」

「やっと来たんですね。」

突然声がしたので、反射的に構えてしまう。

「ハルです。ほら、いつも利用なさってるでしょう?」

「ああ!」

「まぁ、私のことはどうでもいいです。あなた、この前北市に行ったときにMKプレイヤーのレンのとこ行ったんですって!?」

行った…なんて言えずに沈黙が流れる。

「はあ…やっぱりそうなんだ…」

「…。」

「なんとか言ったらどうなの!あなたがそんなことするなんて思わないから飛ばしちゃったし、あなたがそんなことするから町がこんなになっちゃうし、原因があなただってわかった時から私がたたかれてるし!」

「ご…ごめ…」

「謝らなくたっていいから、さっさとこの状況を何とかしてよ!」

お姉さんが泣き崩れる。いつもあんなに明るいのに、こんなにさせてしまった自分が情けない。

僕が何とかしなきゃ。

「どこへ行くんですか!タクさん!」

「僕が行かなきゃ。僕が行けば炎を収めてくれる。街をこれ以上めちゃくちゃにされなくて済む。」

「…本気ですか。」

「本気じゃないならこんなことはしないよ。」

「私はハルさんを安全なところに連れていきます。あとで合流するので…」

「それまでは『絶対に負けないでください』。」

「…その確証はない。」

「駄目です。死なないでください。生きていてください。…絶対です。」

「…。」

何も言えずに走り出してしまう。

正直に言って勝率は限りなく0に近い。

ただ、目的を果たせばこの街から去ってくれる。…そう思っていた。


「おい爺さん。こいつがどこにいんのか知ってるんだろ?」

「知らない。何度もそう言ってるじゃないか。」

「てめぇも燃やされたいのか?居場所を吐いたら命は見逃してやるからよ。」

「そ、そんな奴は知らん…。」

「舐めてんのかてめぇ!知ってんだろ!?さっさと言えや!」

「やめて!おじいちゃんは知らないの!」

「おじいちゃん『は』?おめえは知ってるような口ぶりじゃないか。」

「うぅ…それは…」

「知ってんだろ!?知らないなんて言ったらどうなるか…わかるよなぁ!?」


「やめろ!僕はここにいる!」


「あぁ?誰だ…?」振り返って写真と僕の顔を見比べる。

「おいおいおい…探したぜぇ~?タクっていうのはお前だな?」

「ああ。僕のことだ。お前は誰だ?」

「やっと見つけたぜ!タク。俺はグレン様だ。レンのチームに所属している」

「目的は何だ?俺を殺すことか?」

「よくわかってんじゃねえか…。そうだよ。目的はお前の命を奪うこと。」

「やっぱり…。」

「レンはお前みたいな弱いやつになめられて今カンカンになってんだ。」

「だからよ…レンの気を静めるためにも…


「今ここで死んでくれ。」


彼の周りに炎の龍が漂う。

やはり、町を燃やしてるだけあって第一魔法〈炎〉使いか。

「俺の魔法は火龍ファイヤードラゴン。炎が生物のように動き回る。

こいつが通ったところは焼け跡しか残らない。」

どうする?こんなのがうようよしてたらさすがに近づけない。

今あるのは腰についたナイフだけ…遠距離攻撃の手段はない。

魔法なんてさっきたまたまできただけだし、そもそも効果があるのか、そして正確に落とせるかはわからない。

「くそっ。何かできないのか…」

「来ないのか?なら、こっちから行くぞっ!」

龍がこちらに来る。ジャンプしてかわすしかない。

「熱っ」

真下を通るだけで全身が蒸発してしまいそうだ。

「ほらほら。どんどんいくぞ!」

さっきかわした龍が帰ってくる。今度は少し高い。

「走って避ける!」

体をうまく曲げてかわす。全身が熱い。熱が体にどんどんこもっていくようだ。

「安心してる暇はないぞ!」

何度も。何度もかわし続けるしかなかった。

そしてかわすたび全身が燃えるように熱くなり、どんどん動きがにぶっていく。

「まずい…このままだとかわすことすら難しくなるぞ…」

「そうだ。お前はかわすことをやめて俺と戦わなくてはいけないんだよ。」

「くそっ…何か…誰か…!」

龍が真正面から迫ってくる。もうかわす体力、俊敏さはなくなりつつある。

シュッ

目の前で炎が消え去る。何だ?

「はあ…危なかったですね…もう諦めたんですか?」

「ルリ…なんでいまさら来たんだよ…」

「なんでって…」

「俺が死ねば、こいつらは満足してここからいなくなるんだよ!」

頬をたたかれる。

「何言ってるんですか。約束したでしょう?…私と。」

「『死なないでください。生きていてください。』か?」

「それもありますが、言ったでしょう?」

「何て?」

「『また、この美しい街を二人で見よう』って。約束したじゃないですか。」

「そんなことも言ってたっけか…」

「あなたはこの時点で2つも約束を破ろうとしている…」

「ほかのだれが満足しようと、私がそれを許しません。」

「…。」

「もういいかぁ!?こっちは早くそいつを殺りてぇんだ。」

「えぇ、もう十分です。」

そういいながら俺を立たせる。

「じゃあ、戦闘再開といこうじゃないか。」

炎の龍が再び出現する。

「あの龍は、普通よりも高い温度の炎でできてるはずだ。」

「そうですか…」

龍がどんどん迫る。

「…なら好都合です。」

ルリが取り出したものは…

「発煙筒!?」

それを炎の中に放り投げるとすごい勢いで煙が出て、辺りが何も見えなくなる。

「こっちへ。早く!」

「おじいさんとお嬢さんも。こちらへ。」

「逃げるのか!?」

「その通りです。私には到底かなう相手ではありません。」


煙がはれ、周りが見えるようになる。

「ゴホッゴホッどこ行きやがったあのチビ共!」


「ここが恐らく最も安全な場所、私の家の地下です。」

ルリが誘導したのだろう。すでに地下にはたくさんの人がいて、ざわついている。

その中には、うずくまっているハルさんもいた。

「タクおにいちゃん…なにしたの?」

ルリと一緒にここまで来た女の子は見覚えがあった。

「もしかして…シホか?」

少女はこくりとうなずく。

「タクおにいちゃん…みんな、お兄ちゃんのことを憎んでる。お兄ちゃん、いい人なのに…どうしよう。」

こんな小さい子に心配をかけられることが情けなくなる。自然と涙が出る。

「そうだよな…僕のせいで家がなくなったりして。そりゃあ、みんな僕のこと嫌いになるよ…」

ルリが歩み寄ってくる。

「タクさん。泣いている時間はありません。作戦を練る必要があります。」

「ああ。わかってる。」

「こちらへ。」

入った部屋にはさっきのおじいさん、ハルさん、そしてルリがいる。


「では、作戦会議を始めます。」


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