10:昔のオモイデ、今のジジツ
「タクくんはさ…好きな子っているの?」
「え…えーっと…」
突然のことで戸惑う。もちろん、そんな目で見たことがある人は今までいない。
「いない…かな?」
「そういう言い方は…もしかして?」
少しにやにやしながら聞き返してくる。
「いないよぅ!」
「ふぅ~ん。そっか。」
そんな風に考えたことは一度もなかった。
けど、よく考えたら俺一人と女子二人で毎日遊んでるって…
ちょっと…いや、けっこー変だな…
「あのさ…」タエが真剣な顔で。
「な…なに?」
「私のことは…どう思ってる?」
「えぇ~と、友達…かな?」
「…そうなんだ。」
タエの表情が暗くなる。なんか悪いこと言ったかな?
「な~に話してんのっ!」
キボウが僕に後ろから抱きついてきた。
「うわぁっ!」
びっくりしてついはねのけてしまった。
「あっはは…ごめんね~…」
タエが隣で何かつぶやいていたけど、よく聞こえなかった。
「ん?何か言った?」
「な…なんでもないよ!こっちのこと。」
「ふーん」
「なあに?悩み事?私が聞いてあげよっか?」
「いやいや!大丈夫だよ~」
「おっけー。何かあったらいつでも言ってね!」
「うん。ありがとう。」
そのわずか1週間後、母親からキボウの遺体が近くの公園で見つかったという話を聞いた。
まさか、その時に犯人が彼女だったなんて思いもしなかった。
「ーということだよ。」
「…。」
「キボウが死んでからも少しの間はタエと遊んではいたんだ。」
「…でも、気まずくなっていつか遊ばなくなった。」
「リュウと知り合ったのはそのあとだよ。」
ルリはしばらく何も言わなかった。
「…そろそろ料理が来るんじゃない?」
「そう…ですね…」
「どうしたの?」
「いえ…」
それから料理が来てもからもあまりルリとしゃべらなかった。
「ごちそうさま。」
「ごちそうさまでした。」
「…あの、手紙…読まないんですか?」
そういえば、話をするのに夢中で手紙を読むのを忘れていたことに今更気づく。
「うん、帰ってからゆっくり読むよ。」
「そうですね。…そろそろちゃんと帰りましょうか。」
帰る道中、ルリとあまり会話ができなかった。
さっきの話のせいだろうか、なんか妙に気を使っているような感じがする。
そして、そろそろ南市の街並みが見えるだろうというとき、ルリが何かに気付く。
「!?街が…燃えてる!?」
「ほんとだ…どうしたんだ!?」
近づけば近づくほど、異常ということが分かってくる。
街の中に入った時、大きな火柱が上がり、男の怒鳴り声が聞こえてきた。
「もう一度言うぞ!タクってガキを出しやがれ!
そいつが出てくるまで俺は街を燃やし続けるからな!」