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52・城の夜


ちょいエロです


ーーーーーーーーーー






リュシアンの部屋に着くと、ゾエが入って来た。カロルはゾエの姿にホッとする。


「お嬢様、湯浴みの支度が出来ました。」


ゾエに促され部屋から出る。何故城の侍女でなく、ゾエが来たのだろうか、何故ゾエは城に居るのだろうか。カロルは不思議に思い、ゾエに聞いた。


「ゾエ、何故城に居るのですか?」


「私はお嬢様がご結婚なさいましたら、お嬢様付きの侍女として城仕えとなる予定でございます。少し前に、慣れておけるようにと殿下からご指示を受け、こちらで勉強させて頂いております。ご主人様にも、ご了承頂いております。」


ゾエはカロルにずっと仕えてくれるつもりらしい。カロルはそんなゾエの思いを嬉しく思った。


「ゾエが一緒に来てくれるなら心強いですね。ありがとうございます。」


「お嬢様にお仕えする事が私の幸せでございますので。」


ゾエはいつもの無表情で答えた。何故ここまで自分に尽くしてくれるのか不思議に思いながら浴場に向かった。


湯浴みを終え、リュシアンの部屋に戻る。リュシアンも湯浴みを終えていた。胸元が開いていてその色気に目眩がしそうになる。


「夕食をここで食べられるようにしたよ。」


リュシアンはそう言うとカロルの手を取り案内する。すぐそこの距離なのにエスコートをしてカロルを座らせた。

城でリュシアンと食べる食事は毎回とても美味しい。一流のシェフが王族の為に腕を振るう料理を、こうして時々食べられるのを嬉しく思っていた。

食事が終わるとデザートとお茶が運ばれて来た。クレーム・ブリュレとひんやりとしたアイスだった。どちらもカロルの好物だ。リュシアンは幸せそうに食べるカロルを見て目を細めた。

食後、寝る支度を整えてからソファで並んで座る。カロルは適度な距離を置いて座ったが、すぐにリュシアンに腰を引き寄せられて密着された。


「もうすぐ新学期が始まりますね。」


「うん。…カロルは今年の武術大会にも出るの?」


二学期の中程に毎年行われる武術大会は魔術と剣術の腕を競う大会で、魔術科と剣術科を専攻する生徒達が熱狂する行事だ。カロルは二年生の時から出場していた。出場したのは、カロルの魔法学の実技の成績に不満を持つ者が、そんなに成績が良いのなら実力を見せてくれと出場を求めてきたからだ。カロルはイヌクシュクの個人授業を受けてから実技の成績も満点になっていた。魔法の使えないカロルが満点を取るなんて、贔屓されているに違いないと思われていたらしい。そしてカロルは武術大会に出場し、二年生にも関わらず優勝してしまった。それから三年間優勝し続け、今に至る。


「今年は出ないつもりです。もう私の成績を疑う方もいらっしゃらないでしょうし…それに私は政治科専攻ですし。」


「そうなんだ。私は安心出来て良いけど、カロルの勇姿を見られないなんて、皆は残念だろうね。」


「私の戦う姿を見たい者などおりませんよ。」


カロルはご冗談を、と笑った。実際は、カロルが武術大会に出場してから、カロルのファンは増えていた。魔法が使えなかったのに、属性の無い魔力の塊で魔術科の生徒と戦い、体格の違う剣術科の男子生徒相手に立ち回り勝利する姿に、魅了された生徒は多かった。


「カロルの戦う姿は素敵だけど、やっぱり心配だからね。今年は一緒に応援出来るのなら、嬉しいな。」


「今年は誰が優勝するでしょうか?同じ学年ですと、アンリも強くなっておりますし、魔術科のルイ・フランソワ様も天才だと聞きますし…。リュシアン?」


カロルはリュシアンが不機嫌そうな顔になったのに気付き、最後まで言えずにリュシアンを見た。


「そんなに可愛い顔で他の男の話をするなんて、妬けるな…。」


リュシアンはカロルの額に自身の額をコツンとつけた。リュシアンの熱い視線がカロルの瞳を見つめる。


「カロルの可愛い姿を、他の男に見せるのなんて嫌だな。学期末には舞踏会もあるだろう?カロルのドレス姿を、他の男も見るだろうし、カロルも他の男と踊るのだろうし…。嫉妬心で焼き尽くされそうだよ。」


「ドレスは今注文しているのですが、デザイナーも困ってしまっているようです。」


カロルは思い出し笑いをした。先程まで切なそうにしていたリュシアンは、不思議そうな顔をしてカロルを見た。


「去年よりも筋肉がついて、ドレスが似合わなくなってしまったので、この体格に合うドレスのデザインに頭を悩ませているようなのです。」


「カロルならどんなドレスだって似合うだろうに…。」


カロルはリュシアンの呟きを聞き可笑しそうに笑った。リュシアンは冗談を言ったつもりはなかった。しかしカロルがヒラヒラのフリルだらけのドレスを着て登場したら、良い笑いの種になるだろう。女子生徒の間で孤立していて更には笑われるなど、恥ずかしすぎる。絶対にそうなる事は避けたい。似合うドレスなどなくても、少しでもマシなものをと、デザイナーにイメージを伝えて試作品を待っている段階だった。


「去年は最後だからとジョエルがカロルとばかり踊るから、あまり踊れなかったしね。今年こそはカロルと沢山踊りたいな。シャルルもカロルと踊りたがるだろうし、ウィリアムもジャンも。ライバルが多いな。」


リュシアンは困ったように笑った。カロルもつられて笑う。


「ライバルが多いのは私の方ですよ。リュシアンはいつもご令嬢に囲まれておりますから。それに、ウィリアム達もこんな体格の私と踊りたいと思わないと思いますよ。」


この学園には可愛らしい令嬢が多い。それに今年はシャルロットも居る。カロルよりも、そちらと踊りたいと思うのが普通の感覚ではないかと、カロルは思う。


「もしそうなら、私がカロルを独占出来て良いな。」


「他のご令嬢方が許してくれませんよ。」


カロルは困ったように笑った。カロルが正妃となるのは決まっているが、側妃はまだ決まっていない。側妃を狙っている令嬢も多い。現国王には側妃はおらず、正妃だけだが、リュシアンは側妃を迎える可能性はある。カロルは側妃が居た方が良いとは思っている。王妃になっても騎士団と共にモンスターを討伐しに行くつもりでいるからだ。遠征中に公務が出来ないのを助けて貰いたい。カロルが側妃になるのも良いとすら思っている。その方が自由が利くだろうし。リュシアンの愛を独占出来ない事は寂しいが、仕方ないと思う。感情だけで王妃が勤まるとは思っていない。


「カロルは私の婚約者なのだから、他の令嬢達に気を使わなくて良いんだよ。堂々と私を独占してよ。」


リュシアンは甘えるようにカロルを抱き締める。カロルもリュシアンを抱き締め返した。夜着越しの鍛えられたリュシアンの体にドキドキしてしまう。


「私は独占出来る時に独占していますから。」


「もっと貪欲になっても良いのに…。もっと私の事を求めてよ。」


カロルが薄く微笑むと、リュシアンは拗ねたような表情でカロルの唇に軽くキスをした。


「こうして一緒に過ごす事が出来るだけで幸せですから。」


学園でも一緒に居るのだ。充分過ぎるとカロルは思う。リュシアンはそうではないようで、不満顔だ。するとリュシアンはカロルを横抱きに持ち立ち上がる。びっくりしたカロルは咄嗟にリュシアンにしがみついた。


「ベッドに行こうか。」


「あ、あの、自分で…。」


カロルは降りようとするも、甘く微笑んだリュシアンはカロルを離さない。そのままベッドに運ばれてしまった。カロルは自分が重いのを分かっているので、恥ずかしいし運んでもらうのは申し訳ない。

ベッドに寝かされるとリュシアンが上に覆いかぶさってくる。


「今日のベッドは前より広いけど、抱き締めて寝させてね。」


リュシアンはそう言うとカロルの唇に優しくキスをした。カロルはリュシアンの背中に腕を回して抱き締める。二人はお互いの愛情を確かめるようにキスを交わした。ベッドの中でリュシアンに包まれるように抱き締められる。


「明日の朝もこうしてカロルの隣で起きられるかな。」


「そうですね。流石にお城でトレーニングは出来ませんから、明日の朝はリュシアンの寝顔を見て過ごしますね。」


「カロルと朝を迎えられるのは嬉しいけど、それは恥ずかしいな…。」


リュシアンは少し赤くなるが、カロルはクスクスと笑う。


「リュシアンは寝顔も美しかったですよ。」


「…見てたんだね…。」


リュシアンは更に赤くなった。リュシアンの可愛い反応にカロルは目尻を下げてリュシアンの頬に触れ、触れるだけのキスをした。


「カロル、少しだけ、触れてもいいかな…。」


リュシアンも男だ。そういう欲望があるのはカロルも理解している。それをリュシアンが必死で押し殺しているのも。カロルはリュシアンの問いにキスをして答えた。舌を絡め、上顎を舌先でなぞる。リュシアンはカロルを強く抱き締めた。カロルもリュシアンに抱き着くように腕を背中に回した。

リュシアンはカロルの首筋になぞるように唇を這わせ、時折吸い付く。首筋から鎖骨を通り胸の膨らみまで移動する。夜着の上から柔らかく胸を揉まれた。

カロルは熱い吐息を吐く。羞恥心と、はしたない期待が入り交じる。心臓の音がドキドキと喧しい。

真っ赤になったカロルにリュシアンは深く口付けをし、包み込むように抱き締めた。


「カロル、愛してる。…おやすみ。」


「リュシアン、私も…愛してます…。おやすみなさい。」


少しがっかりしている自分に驚きながら目を閉じて平常心を取り戻そうとする。目を閉じるとすぐに眠りについた。カロルはものすごく寝付きが良い。それはこんな状況でもそうだった。

リュシアンはそんなカロルを愛しそうに、複雑そうな表情で見つめる。愛撫をすぐに止めたのは、止まらなくなってしまいそうだったからだ。カロルとの約束があるし、リュシアンはカロルとの約束を大切にしたかった。折角相思相愛になれたのに、軽蔑され嫌われたくはなかった。

リュシアンは可愛らしく寝息をたてて眠るカロルを優しく腕の中に閉じ込めて目を閉じた。

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