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47・地獄2


残酷な表現があります。


ーーーーーーーーーー





ダンジョンに入り十三日目、二十二階層目に降りると、階段の先が広いホールになっているのが見えた。今まで潜ってきたダンジョンのボスが居る階層に似ている。ホールの天井が高い。ホールの中程まで来ると、ホールの端にある大きな塊が淡く光って動き出した。立ち上がったそれは、岩で出来た人型のゴーレムだった。ゴーレムの体長はカロルの身長の倍以上あり、ホールの天井が高い理由がよく分かった。侵入者を感知したゴーレムは、排除の為に動き出す。カロルは顔の部分に埋め込まれた魔石に魔力が集中するのを感じた。強力な魔法攻撃を発動されては堪らない。カロルは魔力を棒状に練り上げ、それをゴーレムの頭目掛けて投げた。カロルの狙い通りに魔力の棒はゴーレムの頭に突き刺さる。魔石は粉々に砕けたが、集中していた魔力がそのまま爆発した。ゴーレムの体はただの岩に変わり崩れ落ちる。


「…運が良かったですね…。」


カロルは余りにも呆気なくゴーレムを倒してしまい、拍子抜けした。本来ならばこんなに簡単な相手ではない。


「運も実力のうちだろ?お~!魔石ゴロゴロ!」


ランディは魔石を拾っている。ゴーレムの体から大きな魔石がゴロゴロと出てくる。宝箱も開け先に進むと通路があり、出てくるウォラーグやゴーレムを倒しながら先に進む。


「…急に難易度が上がりましたね。」


倒したばかりのウォラーグの死体を避けながらカロルは零す。地を駆け宙を駆けるウォラーグの群れに加えて魔法を放ち一撃が重いゴーレムを同時に相手をするのは骨が折れる。ゴーレムから魔石を拾いながらランディは答えた。


「でもまだ無傷じゃん。最下層にはどんなボスがいるのかね?」


「そのボスを倒したら、彼に会えますでしょうか…?」


「んー、どうかねぇ?でも、ここでなら会えそうじゃないか?」


カロルとランディの会話にマクシムが反応した。


「彼?誰かを探してるンスか?こんなダンジョン内で?」


「そ。最近のカロルはあの方に会う為だけにダンジョンに潜ってるんだ。」


「まぁ、ここを攻略しても会えないかも知れませんし…、気にせず進みましょう。」


カロルはそう言うと先に進んだ。ゴーレムとウォラーグばかり出てくる階層を進み二十四階層目に入ると、グレンデルという食人巨人が出て来た。体長三メートルを超える巨体に、強靭な肉体を持つ強いモンスターだ。石の体のガーゴイルを砕くカロルにも、このモンスターの体は簡単には引き裂けなかった。しかもグレンデルは大きな体に似合わぬ俊敏さも持ち合わせていた。

カロルは苦戦しながらもグレンデルを倒していく。グレンデルの攻撃に合わせカウンターをくらわせる、攻撃を受け流してから一太刀を入れる、とにかく相手の動きに合わせて攻撃をした。肉体の疲れを感じないカロルも、この戦い方は精神的に疲れる。安全地帯を見つける度にカロル達は休みながら進んだ。グレンデルを倒すのにも時間がかかり、休憩も取りつつ進んだ為に二十四階層目の攻略に二日かかってしまった。


十七日目、やっと二十五階層目に入ったと思ったら、この階層にもグレンデルが居た。カロルはバルディッシュを振るうだけでなく、魔力による攻撃も加えて少しでも早くグレンデルを倒していく。慎重に戦うのを忘れずに立ち回る。しかしカロルは二十五階層目にして初めてモンスターからの攻撃を受けた。グレンデルの振るった腕がカロルの腕に当たってしまった。腕が千切れてしまいそうな衝撃がカロルの腕に加わったが、カロルは肉体を濃く練った魔力で守るように覆っていた。それでも強い衝撃が加わった事に変わりはない。腕が千切れる程では無いが、骨がミシミシと音を立てる程の衝撃だ。マクシムとランディに緊張が走る。しかしカロルはその後攻撃を受ける事無くグレンデルを倒した。


「カロル、大丈夫か?」


「はい。…グレンデル相手は緊張しますね…。早くて強いです。」


ランディはグレンデルの爪と牙を拾うと、宝箱を開けた。今までも装飾品が沢山出てきている。呪いの有無が分からないので、街に戻って鑑定してから装備や売却をする予定だ。今回の宝箱の中身も装飾品だった。素手で触らないように布袋に入れる。その後もグレンデルと戦い続け、二十五階層目の攻略に二日かかった。


ダンジョンに入り十九日目の朝、二十六階層目に入る。今まで洞窟の中のようなダンジョンだったが、森の中のようなダンジョンになった。

カロルが森の中を歩いていると、巨大なモンスターがこちら目掛けて走って来た。獅子の頭に山羊の頭を持ち、尾が蛇の、キマイラだ。巨大で強敵ではあるが、厄介な部位から始末していけば良い。

突進して来るキマイラを高くジャンプして避けると、そのままカロルはキマイラの背に立ち乗る。何事かとこちらを見る大蛇の尾を横一線に切り落とした。血飛沫が舞い切断された大蛇はしばらく暴れていたが動かなくなる。痛みに怒りキマイラは暴れているが、カロルは山羊の角に掴まりキマイラに乗ったままでいる。山羊頭は魔法を使う。獅子頭より先に処理した方が良いだろう。キマイラが暴れるので上手く立っていられない。揺れる背の上で山羊の角を掴んだまま、もう片方の手でバルディッシュを山羊の首に突き刺し、引き抜く。喉を潰された山羊頭は血を吐き出し苦しんでいる。もう一度突き刺そうとしたが、激しく暴れるキマイラに投げ出された。カロルは地面に転がり素早く起き上がる。怒りに燃えた獅子頭と目が合った。

獅子の口をからチラチラと炎が出ている。カロルは獅子に向かって走った。獅子は口を大きく開くと炎を噴き出すが、カロルは素早くキマイラの後ろに回り込んで炎を避けた。炎を全て吐ききっていないキマイラは、後ろを向くのが難しいようだ。その隙をつき、カロルは数回斬りつけた。獅子は痛みに悲鳴を上げ暴れるが、山羊頭はぐったりとしていて暴れる度に揺さぶられている。カロルは隙を見つけては攻撃を加えると、キマイラの動きが段々と悪くなる。動きの鈍くなったキマイラの首にカロルが横からバルディッシュを突き刺すと、キマイラの体がぐらりと揺れて倒れた。カロルはバルディッシュを引き抜く。


「この階層はキマイラですかね。」


「これまでの階層からすると、きっとキマイラだらけだな。」


「この階層も攻略に時間がかかってしまいますね。まぁ、それでこそ最難関ダンジョン…ですかね。」


カロルとランディは話しながら先を急ぐ。するとキマイラが二頭現れた。カロルはバルディッシュを構える。二頭だろうと三頭だろうと、先程とやる事は変わらない。蛇から狙い、山羊頭を戦闘不能にし、討伐する。カロル達はキマイラを討伐しながらダンジョンを進み、二十二日目、二十八階層目に入った。

前の階層と同じく森の中を進む。広けた場所に居たのは三つの頭を持つ巨大な黒犬のモンスター、ケルベロスだった。カロルを見つけ、三つ首が涎を垂らし低く唸っている。

ケルベロスは低く吠えながらカロルに向かって走って来た。三つの頭がカロルに噛み付こうと順に動く。カロルは避けながらバルディッシュを一つの頭の片目目掛けて振った。低い鳴き声を上げてケルベロスが怯むと、カロルはもう一度バルディッシュを振りかぶり開いている片目に振り下ろした。

ケルベロスの三つある内の一つの頭はもう何も見えないだろう。カロルはケルベロスを視界に入れつつ走り距離を取ろうとしたが、ケルベロスは怒り狂いカロルに噛み付こうと追いかけて来た。カロルも魔力を使い走っているので、かなりのスピードが出ているのだが、怒りに燃えるケルベロスは更に早かった。すぐに追い付かれそうになる。

カロルは空いている方の手の指に魔力を溜めると振り向きざまに腕を振って魔力を飛ばした。四本の指から斬撃が放たれ、丁度カロルに噛み付こうとしていた真ん中の頭に命中した。ケルベロスの頭は斬撃に切り裂かれ血を噴き出す。ケルベロスが怯んだ隙にカロルはケルベロスの眉間目掛けて魔力の槍を突き刺した。

カロルはまた走り距離を取る。ケルベロスの真ん中の頭は眉間に穴を開けぐったりとしている。左側の頭は両目から血を流し口からは血泡を吹いて唸っている。右側の頭は怒りカロルを睨むように見て唸っている。

暫く睨み合っていたが、ケルベロスが動いた。カロルに向かって走って来る。カロルも走り、噛み付こうとするケルベロスの攻撃を避けて脇腹に一撃を加える。ケルベロスが怯むとそのままカロルはケルベロスの脇腹から背中に登った。暴れるケルベロスの背中にバルディッシュを突き刺しながら頭まで移動すると、まだ元気な頭の脳天にバルディッシュを深く突き刺した。まだ左側の頭の意識はあるようだったが、ケルベロスの体は力無く倒れる。カロルはケルベロスに近付きバルディッシュを胸元にズブリと刺し込む。バルディッシュを引き抜くと血が大量に出て来てケルベロスは動かなくなった。


カロルはため息をつき、図鑑で見たケルベロスの習性を思い出す。音楽を聞くと眠くなり、甘いお菓子に目が無い。甘いお菓子は無いが、音楽ならば音魔石を持っている。カロルは雪之丞に括りつけてある荷物から音魔石を取り出した。そして録音してある曲を再生する。


「あ、この曲知ってる。」


「最近じゃ街の方でも流行ってるらしいな。お嬢様が作曲して演奏してるンだぜ。」


「これもカロルなの!?音楽の才能まであったのかよ…。」


カロルは音魔石を出した事を軽く後悔した。少し恥ずかしいからだ。自分の趣味の為にミズホノクニの楽器を集め録音していた音魔石のコピーをシャルルが欲しがり渡したものが、何故かサミュエル・ルーに渡り、今では貴族ばかりでなく平民もカロルの演奏した曲を音魔石にコピーして楽しんでいる。遠いミズホノクニの楽器の音色を、ガルニエ王国民が楽しんでくれているのは嬉しいとは思うが、本当はカロルが作曲したものではないのに、という思いが強い。

カロルは後悔したが、ケルベロスにはこの音魔石がよく効いた。曲を流しながら移動していると出会うケルベロス達は皆眠そうにしていた。しばらく待つと完全に眠ってしまう為、ケルベロス討伐はかなり安全に出来た。但し、一撃で屠らねばならなかった為に魔力の消費が激しく、魔力のタブレットポーションを度々飲んだ。

カロル達は安全に進み二十三日目、遂に三十階層目に到達した。

誤字報告ありがとうございました。

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