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46・地獄1


残酷な表現があります。


ーーーーーーーーーー







カロルは地獄へ共に行ってくれる仲間として、護衛のマクシムに声を掛けた。マクシムとは四年前の入学前にダンジョンに行って以来、ダンジョンへ同行して貰っていなかった。雪之丞達に乗ってダンジョンに向かうようになってからは、ランディと二人だけでダンジョン攻略をしていたからだ。勿論ジョルジュは見知らぬ冒険者と二人だけで旅をする事に反対したが、ランディと直接話をし、カロルの護衛の二人もランディの事を信頼出来る人間だと評した為、渋々頷いた。アドリアンとマクシムは、ランディがあのままこちらに戻らないという選択肢もあったのに、律儀に戻ってきた事を良く捉えていた。そしてカロルには雪之丞と力丸が付いているというのも許可した理由としては大きかった。ジョルジュは、そもそも冒険者としてダンジョンに向かう事を反対したが、何故かミレーユがカロルに味方した為、カロルは冒険者としての活動を続ける事が出来るようになった。


「…まさか冒険者を引退してからエルブルス大陸最難関ダンジョンに来る事になるとはな…。」


「マクシムが来てくれて助かりました。雪から絶対に離れないで下さいね。」


「休憩以外はずっと雪之丞さんに乗ってた方が良いぞ。雪之丞さんとはぐれたら即転移石だからな!」


マクシムはカロルとランディから念を押される。雪之丞か力丸が一緒ならばカロルと合流するのは容易いが、雪之丞達と離れてしまったら、合流するまでの間に何が起こるかわからない。なのですぐに転移石を使う事にしている。地獄に居るモンスターはかなり強いらしい。マクシムやランディ一人では太刀打ち出来ない。


「さあ、行きましょうか。」


カロルがそう言うと、三人は転移石を手に転移岩に触れた。そしてマクシムとランディはモンスターに跨る。雪之丞と力丸は食料やテント等の荷物を両脇に括り付けられている。初めは戦いを見ているだけな事に文句を言っていたが、休憩中は自由に狩りをして良い事にしたら文句を言わなくなった。雪之丞達も暴れたいらしい。


地獄の入口は地下に続く階段だった。階段を駆け下りる。高レベルの冒険者が集まる地獄の町でもズブラレウにウォラーグを連れた冒険者は珍しく、見物人が集まっていた。人々は一瞬で消えたズブラレウ達に驚いた。何よりあの髑髏兜はモンスターに乗っていないのに、自分達の前から一瞬で消えたのだ。地獄の町の人々は彼等がダンジョンを攻略してくれるかも、と期待した。




カロルはダンジョン内を駆けながらモンスターを倒していく。かなり身軽な動きをしていたが、カロルは髑髏兜と呼ばれるフルフェイスの兜にプレートアーマーを上半身に装備し、バルディッシュを持っている。バルディッシュは特注品で、斧の部分が厚く作られており全体の重さも十キロ程ある。そのバルディッシュをカロルは片手剣のように振り、敵をなぎ倒していく。


「お嬢様は、どんだけ強くなってンだ…。」


「ホントに一人でダンジョンを攻略するんだから、驚くよな。」


マクシムとランディは、雪之丞達に跨ったまま会話をしている。マクシムはカロルの戦う姿を四年ぶりに見た。以前とは全く違う戦い方に冷や汗が出る。体長三メートル程のオーガをバルディッシュ一払いで倒す様は鬼の如し…いや死神か。カロルの護衛として雇われているが、間違いなくこの護衛対象の方が強い。


「…俺は給料泥棒だな…。」


マクシムは乾いた笑いが出た。そんなマクシムの呟きにカロルは反応する。


「マクシム、護衛が付いているという事に意味があるのですから、そのように仰らないで下さい。」


「一階層目は楽みたいだな。会話する余裕がある。」


ランディは力丸に跨りながら地図を描いている。マクシムは四年前と変わらないランディの態度に安心する。

カロルはものの数分でホールに居たオーガ達を倒してしまった。宝箱が無いのを確認するとそのまま進もうとする。


「オーガが落としたアイテムは拾わないンスか?」


「荷物になりますから。もっと強いモンスターが落としたアイテムは拾いますよ。」


「地獄は深いからな!奥の方のお宝はどんななのか楽しみだな~。」


カロル達は一日目は三階層目まで進み、安全地帯でテントを張った。食事をとり、見張りは雪之丞達に任せてカロル達は休む。


「雪之丞さん達はずっと俺達を乗せて移動してただろ?休まなくて大丈夫なンスか?」


「お気遣いありがとうございます。私達はカロルに使役されてから疲れなくなりましたので、平気です。」


マクシムの疑問に力丸が答えた。雪之丞は狩りに出かけている。


「そうなンスか…。じゃあお言葉に甘えて休ませてもらいまス。」


マクシムはテントに入った。ランディは既に横になっている。カロルはまだ寝ないらしい。するとテントの外からカロルの声が聞こえてきた。リュシアンの名前を呼ぶ声が聞こえる。リュシアンと魔通話しているらしい。


「ほんっと、ラブラブだねぇ。」


ランディは小声でマクシムに話し掛けた。マクシムはランディの言葉に笑う。


「俺がこの国に戻って来て、ダンジョンに潜ると毎晩魔通話してたぜ?」


「俺が同行してンのも、殿下が、男と二人きりでダンジョンに潜るお嬢様を心配したからだしな。」


「ははっ、俺がカロルに襲いかかっても返り討ちに合うだけだって。………殿下?」


ランディは目を丸くした。


「何だ。聞いてなかったか?お嬢様の婚約者はこの国の王太子殿下だぞ。」


「ええー?あのすごい良い男?王太子殿下だったの!?しかもカロルの婚約者?え?じゃあカロルは将来王妃殿下になるの?」


ランディは驚き起き上がり、うわーうわーと忙しなく動いている。マクシムはそんなランディを見て笑う。


「殿下とお嬢様は卒業したらすぐに結婚式を挙げる予定だ。」


「…そっかー。じゃあ帰るのはカロルの晴れ姿見てからだな。」


ダンジョン内とは思えない平和な会話をしている二人は穏やかに笑った。すると魔通話が終わったらしいカロルがテントに入って来た。持っていた髑髏兜を枕元に置くと横になる。すぐにカロルは眠りについた。寝付きの良すぎるカロルを見て二人は笑う。テントの外では雪之丞が戻り、力丸が狩りに出掛けた所だ。地獄のダンジョン内で、平和な夜が過ぎていった。




地獄に入り四日目、カロル達は十階層目に入っていた。これまで遭遇してきたモンスターよりも強いモンスターが出てきている。しかしここでもカロルは問題無くモンスターを倒していく。

これまでの階層ではオーガやトロル、大きい昆虫類のモンスター出てきていたが、十階層目に入るとガーゴイルが集団で現れるようになった。石で出来た体は頑丈で、斧が刃こぼれしてしまいそうだが、カロルは斧を魔力で覆っている。魔力のお陰で刃こぼれする事無く、カロルはガーゴイルを真っ二つにする。

地上にいるガーゴイルを倒してしまったカロルは飛んでいるガーゴイルに狙いを定める。練って斧に纏わせていた魔力の斬撃を飛んでいるガーゴイルに飛ばす。斬撃を喰らったガーゴイルはそのまま地面に落ちた。落ちたガーゴイルにバルディッシュを振り下ろし、止めを刺す。飛んでいるガーゴイルはあと三体。カロルは跳躍して一体のガーゴイルに切りつけた。切られたガーゴイルは落下してバラバラになる。

空中にいるカロルは格好の的だ。二体のガーゴイルはカロル目掛けて飛んでくる。口を大きく開き噛み付こうとするが、カロルに頭を掴まれ動きを止められる。カロルは一体のガーゴイルの頭を掴んだままバルディッシュを振り、噛み付こうと飛びかかってくるもう一体を頭から真っ二つに斬り裂いた。そしてガーゴイルの頭を掴んだまま落下する。ガーゴイルを下にして落下した為、落ちた衝撃とカロルが上に落ちた衝撃に挟まれガーゴイルの体は砕けた。

ガーゴイルの体は石のように固い。カロルはガーゴイルの体がクッションにならなかった為に、落下の衝撃で足が痛む。タブレットポーションを飲んだ。


「カロルお疲れ。大丈夫か?」


「はい。やはり対空戦は苦手です。」


「いや、流石でしたよ。お嬢様。」


マクシムは褒めたが、カロルはやはり飛ぶモンスターを相手にするのは苦手だと零す。もし、最下層のボスが飛行系モンスターであれば、雪之丞に乗って戦う事になるかも知れない。こうして一行はダンジョン深くに進んで行く。


十五階層目に来ると、サイクロプスが出て来た。サイクロプスと一緒にゴブリンとホブゴブリンも居る。動きの鈍いサイクロプスは後回しにし、ゴブリンとホブゴブリンを倒していく。すぐにサイクロプスだけになると、カロルはサイクロプスの足を斬り付けた。ガーゴイルを真っ二つにする程の斬れ味のカロルのバルディッシュはサイクロプスの足の骨まで斬れる。サイクロプスは痛みに低い声で悲鳴を上げる。カロルはもう片方の足にも斬り付け、体勢を崩したサイクロプスの首をバルディッシュで一閃し飛ばした。

その後もサイクロプスが複数で現れたりもしたが、カロルは未だモンスターから傷付けられる事無く戦っている。他の冒険者達も、二十階層目位までは辿り着いているらしい。


ダンジョンに潜って十一日目、カロル達は二十階層目に入った。この階層はミノタウロスが多く出てくる。複数で出てくる事もあったが、カロルの敵ではなかった。


「お嬢様の戦いを見てると、ミノタウロスが弱く見えちまうな…。」


「それ分かる。カロルと比べたらダメだって分かってるんだけど、他の冒険者達とパーティ組んで行くと、頼りないなって思っちゃうもんなー。まぁ、俺自身は弱いんだけどさ…。」


「それこそ、お嬢様と比べたらダメだってやつだな。」


ミノタウロスとの戦闘が終わり、マクシムとランディが談笑している。カロルはミノタウロスの落とした斧を手に取っていた。バルディッシュを気に入ってはいるが、他の武器の使い勝手も気になっていた。かなりの重さのこの斧は、カロルのバルディッシュよりも重い。振ってみたが、使い勝手はバルディッシュの方が良さそうだ。カロルはミノタウロスの斧は諦め、バルディッシュを使い続ける事にした。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば、ミノタウロスの斧って誰が作ってるんだろねー人間のものの鹵獲ではなさそうだし。ミノタウロスの鍛冶屋がいたりして。
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