新しい名前
ゆるやかに揺れる馬車に対して騒ぎ立てる蓮のおかげで静寂な新鮮な森が騒ぐ
「だから!なんでそうなるんですか!俺はシソン村の事も戦争の事も知らないんですって!大体戦争て……いつの時代だよ!」
騒ぎ立てて血相を変える蓮。しかし、無理もない、あのとき毎日吸っていた空気の違いでさえも分かる。
口を大きく開き唾が飛ぼうが自分の疑問をぶつけるが、兵士は唖然としてる。
「…な、なかなか面白い事を言うね~まぁ、君は初のセイコウシャだ、そうゆう変化もあるのだな」
「……………セイコウシャ?」
成功者。
「…あの、成功者って?」
思わぬ疑問を口にする、その声は木々が風に揺れてさえずるように小さく、細かった。
蓮の心拍数が真実に近づくたびに逸るからだ。
「…?またまた変な事をッハッハッハ、村を覚えてなかったり、ましてや自国ごと………不思議だなレイティアの神の魔法は」
「…あんたさっきから、何言って……………」
「君は自分が一度死んだことを理解していないのかい?」
その瞬間、蓮の心臓がッドクと音をたてた。それと同時にさっきまでなかった汗が滴り落ちる。
(…こいつ、俺が一度死んだことを………知ってる?)
記憶にないこのファンタジーのモブみたいなキャラ、相手はしかも兵士。そして辻褄が必ずしも合わないこの状況、世界観が何もかもがちぐはぐしている。
(そんな状況に対してこいつは俺が死んだことを言ってきた………そうだ俺は飛び降り自殺した…はずだ)
その時、兵士は視点を少し下に落とし落ち着いた声で
「でも君は凄いよね。自分で自分を差し出してまで国に貢献してくれた…」
そう呟いた。
その声はちょっとの僅かな悲しさと後悔が見えた。
その様子を覗き、蓮は
「……あの!…………俺は…誰ですか?」
そう声をあげて問うた。
その言葉に兵士は顔をあげ、やれやれと穏やかな笑みを浮かべた。
「…テオル大国、次期騎士隊第一部隊長候補、シソン村出身…っ」
ーーーーーー。
(…………………っ!?なんだ?)
「【レン・ヒュガレイン】さ!」
レン・ヒュガレイン、それが蓮の、この異世界の名となった。
一瞬静まり返った馬車内だったが、
「…兵士さんよー着きましたぜ」
馬車の揺れが止まり、馬主のご老人の声でこの場は終えた。




