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野宿

異世界ファンタジーゲームに限らずあらゆるゲームにおいて何かしらの拠点がある。そしてその拠点とは一様にしてセーブポイントとなっている。そこでお金を払ってセーブする場合もあるが大抵は無償でセーブできる。もっと言えば拠点に行かなくても自働セーブ機能が付いているゲームもある。

つまりゲームならばセーブして電源を切れば自分の家の自分の部屋でゆっくり休むことができる。そしてまたゲームの電源を入れれば続きからスタートする。

何が言いたいかというとゲームならばすでに自分の体を休める拠点があるというわけだ。


しかし、ここはリアル異世界ファンタジー。体を休めるにも家がないから宿を借りるかどこかで野宿をするしかない。宿をとってしまうと明日買う防具やら武器が買えなくなってしまう。つまり必然的に野宿になるわけだが・・・・・・。

俺の役職はクリエイター。何かしらの建物がスキルか何かでポンポンっと簡単に建つと思っていたんだが。考えが甘かった。まず根本的に何かを作ろうにも道具がない。あるものといえば俺が元の世界から一人暮らしのために持ってきていた最低限の食べ物、勉強道具、ほぼ充電切れのスマホ。加えてすでに使えなくなった元の世界のお金二万と小銭が少々である。


「どーするんですか!?今日は野宿ですか!?私は嫌ですよ!食べ物も無い!寝床も無い!このままじゃ冒険者になる前に死んでしまいますよ!?」


エレアがうるさい。まぁ、初めての異世界で戸惑うのはわかるが少し静かにしてくれ。よく言うじゃないかパニックになったら終わりだと。バルクを見てみろ。この落ち着きよう・・・・・・。


「ハッハッハッハぁ~!!野宿だぞ!野宿!なんだか今からワクワクが止まらんぞ!!前世にも野宿をしたような気もするが楽しかった感じがするぞ!!」


こいつは・・・・・・ほっといていいだろう。


「エレア落ち着け。とりあえず食料は元の世界から持ってきたものがある。今日の食料くらいは大丈夫だろう。エレアとバルクは木を集めて火を付けておいてくれ。俺のリュックに虫眼鏡とノートと黒いマジックがあるから。俺は民家に行って寝床をもらってくる」


「りょ、了解です!!」


「よし、頼まれたぞ!安心して寝床をもらってこい!」


こいつらだけだと不安だが木を集めて火を付けるだけだ。心配無いだろう。ん?これフラグじゃね?と一瞬思ったがまぁ大丈夫だろう。


しかし、考えが甘かった。俺が戻ってきたときにはバッチリフラグが成立されてとんでもない事実が発覚してしまった。まぁ遅かれ早かれ発覚するのだろうが。


俺は今日の寝床を確保するためギルドで貰ったお金一万エリザを握りしめ近くの農家に行った。多少のお金を払って干し草を貰うつもりだったのだが親切な農家の人はただで干し草をくれた。


俺は両手いっぱいに干し草を持ってバルクとエレアの元に戻った。しかし火が付いている様子はない。

・・・・・・ったく、二人とも何してるんだよ。


「二人とも何してるんだよ。火付けといてって頼んどいたじゃないか」


バルクとエレアはしゃがんでゴソゴソしていた。俺の声を聞いて二人は振り返ったが二人とも不思議そうな顔をしている。


「もしかして俺が言ったもの入って無かった?」


するとバルクが俺に言ってきた。


「ん~。オサムの言う物はおそらくあるのだが・・・これを使ってどうやって火を起こすのかわからんのだ」


「私もわかんないです」


「「「・・・・・・」」」


マ・ジ・カ。

二人ともここまで馬鹿だとは思わなかった。さっきのギルドの発言でエレアは頭はそこまで良くないだろうと思っていたが。ここまで重傷だと思わなかった。


「おいおいおい。嘘だろ?小学生で習うことだぞ?いくら馬鹿そこまで・・・・・・」


「いや~。私この名前のせいで小学校の時イジメにあっていたので学校にほとんど行ってなかったんですよ~」


サラッとすごいこと言いやがる。だがバルクは違うだろ?前世は二人とも天才軍師・・・・・・もしかして!


「バルクお前もしかして前世の記憶が残っているのか!?」


「あぁそうだが。我輩がいた時代にはこんな物存在しなかった」


「そういう重要なことは先に言えよ!!」


はぁ、参ったなバルクは言動は大分おかしいが頭はいいと思ってたんだが頭が良くても記憶が二千年前じゃ話にならない。


「もぉいいよ!俺がやり方教えてやるからよく見とけ」


そう言って俺は二人を近くに寄ってこさせて小学生の理科の実験をやってみせた。


「オサム!貴様すごいな!!我輩の前世の時代ならおそらく昇格、出世間違いなしだぞ!これで寒さに夜震えることは無いな」


小学校に普通に通っていたら誰でも知ってるけどな。


なんだかんだ言って今日の夜はなんとか乗り越えられそうだ。俺たちは日も傾いてきたのでそのまま何もせずに俺が持ってきた藁を下に敷いて晩飯を食べることにした。晩飯は俺が元の世界から持ってきていた缶詰とスナック菓子と少しの菓子パン。カップラーメンもあったのだがお湯を沸かす物が無かったので食べることができなかった。だが、俺たち三人が食事をするには十分だった。バルクは現代の食事がよほど珍しかったのかしきりにパッケージを眺めている。そして食事の最中俺たちは色々な話をした。


「なぁバルクお前この世界へ人間を転移させる仕事の前は何をしてたんだよ?お前天界にしばらくいたんだろ?後輩もいたみたいだし」


天界にしばらく居たのなら元の世界の今の状況とか少しは知っているものだろうと勝手に思い込んでいたのだが、前世の記憶から全然進歩していない。


「我輩が天界でしていたことは神のゲームの相手だ」


「ゲーム?ゲームは今してるじゃないか。俺たちが天界の駒として」


「これもゲームだがこのゲームで神がすることといったら人間を異世界に送り出して見守ることだけだ。それだけでは神も暇になるということで我輩のような前世の記憶が残った者が神の相手をするのだ。そして我輩の役目がゲームの相手だ」


「ゲームって例えば何をしていたんだ?」


「まぁチェスがほとんどだったな。日本の神は将棋が好きだったぞ。我輩以外にも神の相手をする者がいたんだが我輩が一番強かったのだぞ。中でもアテナー様と唯一互角の・・・


「自慢はいいよ」


話が脱線し長くなりそうだったので修正する。


「つまり、我輩が言いたいのはゲームばかりしていて元の世界の状況などしらんのだ」


「でも、転移の仕事を就くときに色々と教えて貰えなかったのか?」


「我輩が教えて貰ったことは転移の仕方と転移する前と転移した後の説明だけだ」


なるほどな、バルクの知識が大昔で止まっているのはそのせいか。はぁ、先がいきなり思いやられる。だが無駄に暇を持て余している神とずっとゲームをしていたらしいし、それも成績はトップときている。戦闘になれば役に立つだろ。


そういえばエレアは何も話してこないなーっとエレアの方を見てみると仕切りに俺の参考書を見ている。だが漢字が読めないのだろうかページをめくるスピードが早い。多分イラストを見ているのだろう。イラストがあるページだけめくるのが遅い。


「そんなイラストだけ見ていて楽しいか?」


「いえいえ、簡単な漢字なら読めますよ。それにイラストが綺麗ですから」


「今度少し勉強教えてえやろうか?」


「結構です」


即答かよ。


「あっ、そう・・・・・・」


エレアはどうしてこの異世界へ来たんだろう。頭が悪いだけで根は真面目で結構美人なのに。


「なんで私のことジロジロ見てるんですか?」


「いや、なんでエレアは異世界に来たのかな~っと思って」


「私が小学校にほとんど行っていなかったのは言いましたよね」


「あぁ、名前のせいだったな」


「私、中学生になったときは気持ちを改め学校に行ったんですよ。でも中学校は小学校延長みたいで他のみんなは友達がいて私は一人ぼっちだったんですよ。それで班を組なんだんだりしたりするときは毎回先生と組んでて・・・・・・。それに名前でもいじられ続けてきたので・・・・・・それでさっきパーティーを決めるとき自分からあの若いパーティーに声を掛けることができなかったんです」


「なるほどな~。それにしてもよく俺達二人に声を掛けることができたな」


「はい!緊張しましたがなんだか二人とも馬鹿そうだったんで!」


「「おい!!」」


正真正銘の馬鹿のお前が言うなよ。確かに馬鹿っぽいことはやっていたが・・・・・・。


「それにオサムはアキバで私に声を掛けてくれたじゃないですか。それで、話しやすかったんです」


ああ、確かに。


「そして、そんな感じのまま中学校が終わって成績ビリでボッチのまま高校に進学することになったんですが、高校になってもこんな辛い学校生活は嫌なんでどこかに逃げられないかと本気で考えて色々調べてこの異世界に来ました」


「お前も色々大変だったんだな」


「はい。だからオサムが私の名前を聞いても何も思わなかったのはすごく嬉しかったです!!」


そう言ってエレアは俺からソッポを向いた。俺としてはそんな風に褒められ照れられてもな~。俺としても照れるしかない・・・・・・。


「貴様ら我輩の前で惚気るのはやめて貰いたい。不愉快だ」


体育座りでバルクが言ってきた。雰囲気ぶち壊しやがって・・・・・・。俺はそう思いつつバルクを睨んだ。

俺の視線にバルクがヤレヤレといったジェスチャーをしてきて言ってきた。


「いい加減そろそろ明日の話をしないか?」

誤字脱字改善すべき点があれば教えてください。

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