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苦労する妖精

投稿してから気がつきました。

「もう二十話いってんじゃん!!」

経験値・・・・・・。ゲームならばモンスターを倒せば経験値が入りレベルが上がる。俺達もこの世界でモンスターを倒しレベルが上がったため、この世界のゲームと同じでモンスターを倒せば経験値がもらえレベルが上がると思っていた。

しかし、やはりゲームと現実は違う。ゲームはモンスターを倒すことでしか経験値を得られないが、ここでは生活自体が俺の経験として上乗せさせるらしい。新しい経験であればあるほどに。

その新しい経験として、異世界の新しい知識の習得である。

ここ一週間近く俺とバルクは図書館に通い詰めていた。かなり経験値もこの世界の知識の貯まったし色々とやりたいことも増えた。

俺は読んでいる本を閉じて呟いた。


「う~ん、試すか・・・・・・」


「・・・・・・ん?どうしたのだオサム?」


「んぁ、この世界の知識も増えたし、そろそろいろいろと試したいな~と思って」


「試したい・・・・・・とは?」


「まぁ、見とけって!受験生で難関大学合格した俺の科学力なめんなよ?」


「お、おう。随分と自信があるようだな・・・・・・」


そんな俺達の会話を聞いていたルシファーがフワフワとこちらに飛んできて俺達に言ってきた。ちなみに、ルシファーは堕天して力がかなり抑えられているとはいえある程度飛ぶことはできるらしい。さすが、かの有名な堕天使ルシファーというところか。

後日談の言い訳としては俺が初めて図書館に来た時にルシファーの存在に気がつけなかったのはルシファーが飛んでいたからだ。ということにしておいた。

さて、話を戻そう。


「なんだか、面白そうな話をしてるね~。僕も混ぜてよ~」


「ん~、なんていうかな・・・・・・?俺がいた世界の知識を使ってこの世界でいろいろとやろうと思ってな」


「ほぉ~、興味深いね~。是非どんな実験になるのか後で話してね~」


「ん?ルシファーは来ないのか?」


「ん~、僕はいろいろと制約のせいで図書館から出られないからね~」


「あ~」


「まぁ、そういうことだから。よろしくね~」


「オッケ、そんなことならお安い御用だ」


「オサムよ、良い感じに気持ちだけが進んでいるのはいいが・・・・・・、資金は大丈夫なのか?」


「あ・・・・・・」


というわけで、生活資金しか考えてなかった俺はバイトすることになった。

ちなみにバルクもエレアもタニアももれなく道連れである。パーティーとして協力しないとな!うん!


*****


「いいですか、タニア?私は近くでしか矢を撃てないので・・・・・・、んじゃ行ってきます!」


エレアはどこで覚えたのか良い感じそれらしい敬礼をして勢いよく飛び出していった。


「いやいやいや!!おかしいでしょ!?エレアねいさん!!レンジャーって長距離戦闘でしょ!?」


タニアの嘆きの声は勢いに乗ったエレアには聞こえず無謀にもバトルゴブリンに突っ込んでいく。

まぁ、すんごい勢いで走ってくる自分の敵にバトルゴブリンが気が付かないはずがない。

バトルゴブリンはエレアの突進に合わせてカウンターを決めようと持っていた片手剣を構える。バトルが付くゴブリンなだけあってカウンターの構えも様になっている。


「ふっ、だめですよ?そんなんじゃ。私の矢の威力から逃れられません!!おりゃぁぁああ!!」


タニアは「何がだめなのかな?」と思いつつ成り行きを見守った。


エレアは奇声を発しながらバトルゴブリンに矢を放つ。例の如く尋常では無いパワーのおかげでもの凄い轟音を立てながらバトルゴブリンの隣の大木を切り裂きながら勢いを止めることなく進んでいく。もう一度説明するがバトルゴブリンには命中していない。

初めて目撃するタニアとバトルゴブリンは種族は違えど同じ顔をした。


「まじかっ・・・エレアねいさん・・・」


すると、今度はエレアは走っている勢いをそのままにUターンしてタニアの方向に走っていった。


「ど、どうしたんだ?エレアねいさん・・・!?」


「いや~、私、矢、外しちゃったら終わりなんですよ。んじゃ、よろしくっ!」


エレアのあまりの変わりようにタニアとバトルゴブリンはまたしても同じ顔をして固まってしまった。


「・・・って、チョット待って!エレアねいさん!!僕、まだレベル1だから!!」


九十年も生きているだけあってその辺の野良モンスターとはさすがに対応速度が違う。急いで逃げたエレアの後を追った。タニアの行動を見てバトルゴブリンが本能を思い出したらしく逃げたエレアとタニアを追いかけだした。


「おいおいおい!!どうすんだエレアねいさん!?追いかけて来てるよ!?あのゴブリン強そうだよ!?超強そうだよ!?何か作戦とかないのかよ!!?」


「そうですね~。私に作戦とか難しいこと考えるのムリですね。そういうのはオサムかバルクの仕事なので!」


「それじゃ・・・!ホントに打つ手なし!?」


「手はありますよ?」


「・・・・・・え?手があるなら・・・・・・」


エレアは逃げながらタニアの目の前に手の平をだした。


「ふざけている場合じゃないでしょ!?エレアねいさん!!」


「手か~・・・・・・。よしっ!行くぞ!!」


「エレアねいさん?行くってどこに・・・・・・えぇぇっ!!?」


エレアは何を血迷ったのか再びUターンしてバトルゴブリンの所に突進していった。バトルゴブリンは急にUターンしたエレアに驚いたようだったが獲物が来るからにはモンスターといえど迎えに撃たねばならない。

バトルゴブリンはエレアを迎え撃つために武器を構えた。


「あぁ、もう!世話の焼けるねいさんだ!!リーフバインド!!」


リーフバインド。草木のを使って目標物を捕縛する高等魔法だ。普通、レベル一程度の冒険者で絶対に覚えることが不可能な魔法だが九十年も生きている妖精にとっては潜在的に覚えることができるらしい。

リーフバインドはバトルゴブリンの振り上げた武器を絡め取る。


「・・・・・・ガッ!?」


ゴブリンの驚愕に満ちた声を聞いたエレアは自慢げに叫んだ。


「ッさすが!よくできた弟だ!作戦通り!!」


「作戦ってなに!?そんなのあった!!?」


エレアはリーフバインドで武器を絡め取られてうろたえているバトルゴブリンの顔面に容赦なくパンチを放った。

ばんっ!!という顔を殴っただけではでないような音が炸裂した。まぁ確かにその通りだろう。エレアはバトルゴブリンの顔面を殴ったはずなのに顔はおろか上半身は消し飛んだのだから。

エレアはゴブリンの血糊で汚れた拳を払いタニアに言った。


「んじゃ、終わったことですし帰りますよ?今日は終わりです!」


「もう、何がなんだか・・・・・・。まぁ、次来る時はもう一人くらい連れて行く。いいな、エレアねいさん。」


「そうですね~、オサムに新技も褒めて貰いたいですし・・・・・・」


「あれ技だったの!?ただ殴っただけだろ、ねいさん!?」


多分、オサムにいさんも呆れるだろうな~と思い頭を抱える我らの弟であった・・・・・・。

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