表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/23

図書館の堕天使

お久しぶりです。大変長らくお待たせいたしました。

異世界で学ランを手に入れた俺は以前から行きたいと思っていた図書館に行くことにした。リンカは奇妙な図書館員がいると言う噂を信じてか柄にもなく騒いでいて、やたらエレアとタニアにちょっかいを掛けている。エレアはやはり年の近い女性の人見知りが直らないのかタニアの後ろに逃げ込んでいる。

ていうか、見た目、年下の男の子の後ろに隠れるなよ・・・。

タニアはさすが九十年生きているだけあってリンカが絡んできても軽く受け流している。


「図書館に行くとは、なかなか名案だな。我輩もこの世界の知識をもう少し知りたいと思っていた所だ。」


「その辺はさすが元天才何とかだな。まぁ、今から行く図書館には奇妙な図書館職員が居るらしいが、別にお前だったらそんなこと気にしないだろ?」


こんなことはコイツの前では口が避けても言えないが、わりと俺とバルクはなんとなく気が合う。趣味や好みとかではなく、考え方が似ているのだ。

いやだな~、コイツと似てるとか・・・。


*****


図書館は町の規模にしてはかなり大きい方だった。この規模の図書館なら俺の知りたいこの異世界の知識が手に入るだろう。

・・・さて、問題は噂の図書館職員だ。資料を漁るのに問題は無いだろうが、少しは俺も気になってしまう。

ドキドキしつつ俺達は図書館の大きなゆっくりと扉を開いた。


「誰もいないんですか・・・?」


エレアがタニアの後ろからビクビクしながら図書館の中を見回した。

図書館は本のことを配慮して異様な乾燥をしている。さらに、日焼けすることを避けて太陽の明かりは無く蝋燭の光だ。太陽の光が届かないせいか外に比べてかなり気温は低い。


さすがに勝手に本を読み漁る訳にもいかず、とりあえず職員を呼ぶことにした。


「あの~!すいませ~ん!誰か居ませんか~!?」


異様な静けさのせいか自分の声がよく通る。図書館中に反響した自分の声が聞こえなくなったところで、仕方無く自分で職員を探そうと一歩踏み出し・・・


「そこの扉を早く閉めてくれ~、湿気が入るよ。」


「んなっ・・・!!」


職員を探そうと歩み始めた俺の目の前に、突然モサッとした男が瞬間移動したかの如く現れた。正直、俺は全く気配に気がつかなかった。他の動物ほどでは無いにしろ人間にも気配察知能力は存在する。しかし、目の前に迫り来るまで全く気付かないことなどあるのだろうか?

俺の後ろに居たバルク、タニアは一瞬で臨戦態勢に入りエレアとリンカを守りつつに後ろに下がった。

一瞬遅れつつも俺も男との距離を空け臨戦態勢を取り、すぐさま男の観察に入った。

髪の毛がボサボサで一見もっさりしているが、肌は色白で顔立ちも整っていてイケメンだ。身長は俺と変わらないくらい・・・。しかし俺が一番目を引きつけられたのが目の色だった。透き通る様な黄金の瞳。ボサボサした髪の後ろからでもよく見える。

そして俺は、十八年間こことは違う別の世界で過ごしていたため最後に気がついたのだがコイツは・・・。


「なぁ、バルク・・・コイツの服、元いた世界の服装に近くないか?」


「オサム、貴様、何を言って・・・。んぁ?」


今度はバルクが男の顔をマジマジと観察し始め、何かに気がついた様に臨戦態勢を解いた。


「も、もしかして、貴殿はルシファー様ではありませんか!?こ、こんな所で何をしているのですか!!?」


バルクの急すぎる態度の変わりように、俺を含めタニア、リンカが目を白黒させている間にもバルクと胡散臭いもっさりイケメン男の話は進んでいく。ちなみにエレアはいつも通り会話の内容が理解できていないようなので放っておこう・・・。


「・・・~ん、お前は僕のことを知ってるということは天界の奴か?」


「はい!元々天界でゲームの相手をさせられていたハンニバル・孔明です!」


「あ~、あ?そんな奴いたっけ?まぁ、忘れても仕方無いよな~。僕がここに堕とされたのが十年も前だしな~・・・うん。」


十年ってそんな長くないだろ・・・。エレア以外のここに居る奴が思ったところでバルクは続けて質問した。


「堕とされたとは・・・、ルシファー様は堕天されていたのですか!?」


「そーそ、まぁ堕天したことは別に気にはしてないんだけどね~?」


「はぁ、そうですか・・・。」


話が一段落したようなので俺は色々残る疑問を尋ねていった。


「なぁ、バルク。ルシファールシファー言ってるがけど、もしかして、あの堕天使ルシファーか!?」


「何を言ってるんだ?オサム。たった十年前の天界の事象をお前が知ってるはずがないだろう?」


「いやいやいや、俺が元いた世界ではルシファーと言った堕天使ルシファーが王道だけど・・・?」


俺とバルクの話を横で聞いていたルシファーは何かに関心した用に頷きながらいった。


「さっすが天界の神達だな~。多分、お前の居た世界の伝承や伝説を神達がすべて書き換えたんだろうな~。」


「「・・・は?」」


俺とバルクがキョトンとした間抜けな顔をしているとルシファーがバルクを指して言った。


「お前の居た時代ではまだ伝承改変もされていないから知らないのも当然だろう~?だいたい僕が堕天した時お前はすでに天界に居たんだろう?」


「た、たしかに・・・。」


バルクは納得したように顎に手を当て頷いた。

そして、俺は中二病をこじらせている者なら誰でも聞きたくなる質問を投げかけた。


「なぁ、ルシファー。お前が別に気にしている感じゃなかったから、なんでお前が十年前に堕天したか理由を聞いてもいいか?」


「まぁ、話してもいいけど・・・、僕、お前の名前まだ知らないよ~?」


「あぁ、俺は岡本治。オサムって呼んでくれ。」


「その名前・・・。オサムは天界の駒か?」


「そう、俺はこの世界に来るはずじゃなかったなかったんだが偶然連れてこられて、そのまま天界の駒にさせられたんだ。」


俺がウンザリしたようにそう言うとルシファーは笑いながら言ってきた。


「ハハハッ、以前に似たような事を僕に愚痴ってくる駒もいたな~。」


・・・俺のように神のゲームに巻き込まれた奴が存在していたとは。

俺が感慨深くしているとルシファーが言ってきた。


「話が逸れてしまったね~。僕が堕天させられた理由だったね。ん~、この話をするとなると天界の力関係を知ってないと駄目だからね~。まず、そこから説明していこうかな~。」


ルシファーは一呼吸おいて昔を思い出すように話しだした。


「最初に、僕のような天使や神々の力というのはオサムたちのいた世界にの信仰が大きく関わってくるんだよ。まぁ、信仰と言っても厳密にいうと僕の名前や想像した外見を考えてくれるだけでいいんだけどね~。」


「ん~、今のルシファーの話だと、多分、俺のいた時代だとお前メチャクチャ信仰されてるぞ。」


俺のいた時代、つまり西暦二千年以降、日本に限らずあらゆる国々においてゲームやアニメ、フィクション映画などで堕天使ルシファーは登場する。もっと言えばスマートフォンのソーシャルネットワーキングゲーム、いわゆるソシャゲの登場で信仰はさらに増えたと言えるだろう。


「そう、それなんだよね~。その信仰のおかげで僕の力がドンドン大きくなってさ~、神々に目を付けられちゃってね。それで堕天させられたんだよ~。下界は結構、神とか天使の力は抑えられるからね。」


「でも、それ逆効果じゃないのか?多分、堕天した方が人気でたぞ?」


「そうそう!そうなんだよね~。神々は僕を堕天させて信仰を堕とそうとしたんだろうけど逆に信仰が上がっちゃってね~。オサムのいた世界は変わっているよね~。ていうかオサム、お前なかなか鋭い指摘をするね~。」


まぁ、その手のサブカルチャー的情報は今の日本の若者なら誰でも知ってるがな・・・。


「まぁ、そんなこんなで僕は天界からハブられたんだよ~。でも、結果的に下界で与えられた仕事が図書館職員という楽な仕事で、今では下界に堕とされて良かったと思ってるんだよね~。」


天界でハブられて堕天するというモノがどれほどのことかはわからないが、ルシファーは強がりとかでも無く本気で良かったと思っているようなので気にすることは本当に無いようだ。

そんなとき、タニアとリンカが俺とバルクに言ってきた。


「なぁ、オサム兄さんもバルク兄さんも何の話をしてるんだ?僕にも教えてくれよ。」


「そうですよ~。聞いててサッパリわかりません。エレアさんなんて難しすぎて真っ白ですよ?」


しまった!!話し込んでてスッカリ忘れてた!!

エレアはいつも通りだから良いとして・・・。この世界で生まれたこの二人にはなんて説明しよう・・・。

俺は言い訳を考えるのに頭を抱えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ