表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/23

木の上に

俺は鍛冶屋で工具を買った後、ロープを五十メートルほど買いとりあえずギルドに行って見た。親方がギルドにはいないと言っていたが一応戻って来てるかもしれないし、それにさすがに無いと思うが親方が見落としてる可能性もある。

ギルドに行くとすでに俺達の騒ぎが収まっており、ギルドにいる連中は掲示板を見たり受付で職員と話し合ったりなんだかほのぼのしている。

お昼時の時間というのもあるのだろうが、今思ったのだが、なんだかこの世界の冒険者のギルドは俺の思ってた冒険者のギルドとちょっと違う・・・。俺が思う冒険者のギルドって言うのはもっと厳ついオッサンがゴロゴロいる場所だと思ったのだが・・・、意外にも普通の優男っぽい感じの人もいるし女性の冒険者もチラチラ見える。

しかし、どうやら親方の言うことは本当だったらしい。ギルド全体を見渡しても二人の姿は見えないし、物陰に隠れて見えないということもない。だいたい、アイツらが静かにすることが出来ないということがこの短い間でもう確信している。


・・・それじゃアイツらは、昨日野宿したところか?


俺はそう思いギルドを出て野宿をした所に向かうことにした。

今更ながら異世界というのは凄く美しい。自分でもこんな臭いこと自分で思うのも何だが、ホントに綺麗で美しい。東京のコンクリートで囲われた色とりどりの町並みも田舎から上京してきた俺にとっては珍しくて田舎とは違う美しさを醸し出していたし、もちろん実家の田舎も自然に囲まれて美しかった。

だが、ふとビル群の足下を見ればそこら中にゴミが落ちているし、田舎の森も結局は人間が植えた人工樹林だ。

やはり、町並みも中世ヨーロッパ風で新鮮みがあり、そして色々な人種がお互いに共存共栄して作った町だ。どこかしらで江戸時代日本人のもったいない精神がこの世界にも息づいているのだろうか?全くゴミが落ちていない。それにクエストで入った森も様々な種類の木々が生い茂っていた。

それに、森の奥に何か人工物的な物がが見えた。俺はそういう神秘的でいかにも異世界チックな物が個人的に凄く興味がある。


「今度そこに言ってみるか・・・。」


俺はそんな独り言を言いながら野宿した場所に行った。


野宿した場所に行くと焚き火が炊いてありそこにヤカンが掛けてありバルクとエレアが気持ちよさそうに寝ている。そして、なんだか辺り一帯がいい匂いがする。


バシッ!


「・・・おい。起きろ。」


俺はそこでヨダレを垂らして間抜けな顔をしているバルクとエレアの頭を叩いた。


「ん、んぁ?なんだ、オサムか。いつの間に帰って来たんだ?」


「たった今だよ。住む場所造るための工具を買ってきたんだよ。」


俺は昼寝から起きたバルクの横に道具を置いて腰を下ろした。ていうか、頭を叩いたのにエレアは全然起きないし・・・。

さて・・・。


「ところでバルク。ここら一帯に充満しているいい匂いはなんだ?」


「いい匂い・・・?あぁ、それはこれのことだろう。実にうまかったぞ。」


そう言ってカップラーメンの器を指差した。


「やっぱり俺の物じゃねーか!!何勝手に人のリュック漁って大事な食料食ってんだよ!?俺の物なのに俺一口も食ってねーよ!!」


そう言って俺はバルクの胸ぐらを掴んだ。


「ま、待て待てオサム、落ち着け!お前の分も残してある!」


バルクは両手を挙げながら俺にそう言ってきて顎で再びカップラーメンの器を指した。

俺の分も残してあるならまぁ、許してやるかと俺はバルクを解放してカップラーメンの器をのぞき込んだ。


「・・・んなっ!?」


そこには麺ははなく冷めきって油の浮いたスープだけが残っていた。

俺は眉間をピクピクさせて優しく笑いながら言った。


「お前ら、晩飯抜きでいいよな?」


「すいませんでした。晩飯抜きは勘弁してください。」


バルクは直角九十度の綺麗な一礼をして素直に聞き分け良く謝ったので俺もなんだか興が覚めてしまった。


「はぁ、冗談だ。もういいからエレアを起こせ。家を建てるから。」


俺が一発頭を叩いても起きなかったエレアを起こすのにバルクが手こずっている間に俺は自分のリュックに荷物をまとめて移動する準備をした。

結局バルクが手こずって起きなかったエレアの顔に冷めたスープをぶっかけて起こした。


「わぁ!?ぷ!臭い!何んですかこれ!?しかもヌルヌルする!」


「エレア起きたか?起きたならサッサと顔洗って行くぞ。」


「オサム・・・貴様も大概えげつないことをするな・・・。」


俺達はとりあえず家を建てる場所を探さなければならないがこの異世界にも土地の所有権とかあるだろうし少し町から離れた場所に作ることにした。


「この辺でいいかな・・・。」


俺はそう言って町の外れのチョットした林の中に荷物を下ろした。

俺の後ろから付いてきたバルクが周りを見ながら俺に言ってきた。


「ここにするのか?言っておくが我輩は建築技術など全く知らんぞ。」


「まぁ、俺も専門的な建築技術とか設計とかは知らないが、俺がいた世界にはテレビという物があってそれが色々と面白いことを見せてくれたり教えてくれたりするんだ。」


「ほぅ、その便利な物で得た知識によって造るということだな。」


「まぁ、そういうことだ。」


家を造るとなればサバイバル系の番組を参考に作ればいい。

俺はエレアとバルクを見て質問した。


「二つ選択肢がある。一つは木の上に造るか。もう一つは高床式で地面から少し浮いた位置に家を造るか。二人ともどっちにする?」


なぜ地面に直接建てないかというと地面から浮いた所に作らなければ虫や動物が家の中に容易に侵入できてしまうからだ。


「木の上に作ってみたいです!」


まだカップラーメンのスープで顔をテカテカさせているエレアが天真爛漫にリクエストしてきたのでとりあえずバルクにも意見を聞いてみたが別にどっちでもいいと言ってきたのでエレアの意見で家を造ることにした。


「家は木の上に造るの理由は納得したが・・・、一体どのように作るのだ?」


バルクは木の上を眺めながら俺にそう聞いてきた。


「まず木材だな。出来るだけ真っ直ぐな木を使いたいから・・・この木をとりあえず切るか。」


そう言って俺は近くに生えていた真っ直ぐで丈夫そうな木を指差さした。

すると、エレアがノコギリを取ると凄い勢いで切り始めだした。


「お、おい!なんでお前家造りにそんな積極的なんだ?そんな一気にやったらすぐ疲れるだろ。交代しながらでいいぞ・・・?」


「いや、いや、私今すごく楽しいですから!ここに来てからワクワクすることばかりです!!それに、レベル上がってなんだかいつも以上に力が出てる気がしますから。」


そう言ってる間に早くも一本切り倒してしまった。

結局、俺とバルクは何もすることなくエレアによっていとも簡単に切り倒されてゆく木材をずっと見ていた。

十本ほど切ったところで今度は俺が林の中でもかなり大きな木に登った。そして、俺が登った位置にエレアが切り倒した木材を立てかけて、それを俺が登っていた木に縛り付けた。アイテムクリエイトの効果の効いているのかのかいつもよりも簡単に縛れている気がする。

そして今度は縛り付けた方と反対側の方を違う大きな木に滑車の原理で持ち上げそれを水平になるように縛り付けた。

その方法を残り三回続けて木の上に四角形の空間を造った。そして今度はその四角形の空間に竹っぽい木材を沢山並べて床を造った。

ちなみにバルクは竹を切らせてみたが竹一本切るのに十分も掛かるし、切った木材を運ぶのも遅すぎて効率が悪く全く役に立たないのでロープではしごを造らせることにした。

今度は床の上にもう一つ四角形の空間を造りその骨組みをベースに壁と屋根を造りひとまず雨風を凌げる場所を造ることができた。余った木材は地面から浮いている床を支える柱として使い切った。

バルクが造ったロープのはしごを取り付けて俺達の家は完成した。

俺達は出来上がった家を見て思い思いに感想を言った。


「見た目はそんなに良くないな・・・。」


俺は自分で指揮しといてあまり良い家ができなかったのでバルクとエレアに少し申し訳ない気持ちなった。


「いやいや、見た目は良くないが素人にしては上出来だと思うぞ?」


「確かに見た目は良くないですが私は大満足ですよ!」


お前ら・・・。


「二人ともこうゆう時は気を遣って言わない方が良い真実があるから覚えとけよ。」


「「・・・んっ?」」


家が出来た俺達は町に行って今日の打ち上げを開くことにした。エレアがかなり楽しみにしていた様だし俺もバルクも今日は打ち上げをしたい気分だった。

家を造った林を抜けるとすでに空は夕焼けに染まっており綺麗なオレンジが俺達三人を迎えてくれた。

夕飯にはまだ少し早いせいか子供達が無邪気に遊んでいる。

俺はその遊んでいる様子を昔の自分と重ね合わせて少し懐かしく思いながら子供達の横を通ろうとした。


「そのままじゃ、いずれ崩れてしまうよ?」


俺が子供達の横を通ろうとしたそのとき、子供の一人が意味深なことを言ってきた。俺は急いで振り返ったが子供達は無邪気に何も無かったように遊ぶだけだった。


「・・・?」


「どうしたオサム?ボーッとしてると先に行くぞ。」


「あぁ、悪い。」


バルクに急かされ俺はなんだか変な気持ちのまま夕焼けに染まる町に向かった。

向かったのだが・・・、十分後にはそんなことすっかり忘れて気持ちよく酔っ払っていた。

ほのぼの路線から少しズレるかも・・・?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ