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HEAVEN!ヘヴン!HEAVEN!00  作者: coconeko
25/26

いろんな我侭

えー、今月末から来月中旬までプロバイダー変更のためネット使えなくなるので、ちょっぴりお休みします。たぶん。

で。次回で最終話です。

キリが悪くてすみません(−−;)

「どうしてもか?」

「拗ねて見せてもダメ。どうしても!」

 きっぱり言い切ったセインの右腕を引っぱって、キャルが王様からセインを引き剥がした。

「そうよ!」

 唐突に、キャルが叫んだ。

「まだあんたの返事、聞いてなかったわ!」

 がばりと、セインにしがみ付く。

「うわー、思い出しちゃったか」

「思い出さないでどうするの!逃がさないんだからね!」

「その時点で僕の意思は二の次じゃないか」

 セインは、冷や汗をかきながら、ずれた眼鏡を直す。

 このまま、うまくごまかしてしまおうと思っていたのに、国王のせいで、キャルが思い出してしまった。

 キャルと一緒にエルドラドを探す。

 それが出来たら、どんなにか。

「答えは二つ!YESかハイか!?」

「や、既に選択権がないわけだし・・・」

「あんたの意思を聞いているのよ!」

「・・・・・」

「・・・・・」

 しばらく睨み合った後、セインは自分にしがみ付くキャルの小さな手を、そっと外した。

 一瞬、びくりと息を飲んだキャルに、セインは微笑んだ。

「まったく、僕のマスターになる人たちっていうのはどうしてこう、我侭な人ばかりなんだろうね?」

 キャルは大きく大きく、蒼い瞳を見開かせる。

「そういうことだから、僕のことは諦めてくれる?」

 キャルの頭を撫でながら、セインがガンダルフ2世を振り返った。満足気なその顔に、ガンダルフは盛大に溜め息を吐いた。

「・・・ラオセナル、お前の一族はこんな我侭なヤツを代々守ってきたのか?」

「セイン様を指差すものではございませんよ。それに、我侭は国王陛下の方が上級者かと思われますが?」

 にっこりと、最上級の笑顔で言われてしまえば、国王も恩師には手が出せない。

 額に手を当てて、大仰に空を仰いでしまった。

「それって・・・・」

 こくりと、セインは頷いた。

「よろしく?キャロット」

 ぱあっと、キャルがひまわりのような笑顔になった。

 その笑顔に、セインもつられて笑った。

 が。

 ガン!

「あいた!」

 また、足を踏まれてセインが飛び上がった。

「我侭だけは余計よ!」

「うわあ、やっぱりやめようかな」

「あら?男に二言ってモノは存在しないんじゃないの?」

「うはー、いったい誰が法律化したのそれ」

「あ、そゆこと言うんなら、コレ、返してもらうわ」

 キャルが、いつの間に取り出したものやら、青い絵本を掲げてにんまり笑って見せた。

「うわわわ、それはナシ!」

 二人のやり取りに、ぽかんとする国王と、ほほえましく頷くその臣下一名と、臣下の執事一名は、セインとキャルの頭上高く、東の空が白んで行くのを、まぶしく見つめたのだった。


 結局、キャルとセインの二人は、シェリエッタの怪我が治るまで、ディーナに留まることになった。

 シェリエッタの自業自得とはいえ、彼女に一生消えない傷を負わせてしまったのだからと、キャルが気にしていたからだ。

 滞在中、オズワルド家に世話になり、セインは懐かしい屋敷の内を楽しんだ。

 多少改築や修繕で、新しくなっている場所もあるとはいえ、五百年の長い歳月を保ち続けていられたのは単に、代々のオズワルド家の熱心な管理と、初代当主ローランドの堅実な屋敷の建て方だろう。

「あの時は随分と建築士に無理難問を降りかけていたけど、こうしてみると、やっぱりローランドの人柄が出てるね」

 町を見渡せば、五百年以上の歴史を誇る建築物などはそうそう見当たらず、いかにこの屋敷が強固に創られたかが分かる。

 屋敷内の改築されたところなどは、その時々の当主の性格が分かって、これもまた面白かった。

 まあ、そのオズワルド家の屋敷よりも古い歴史を持つ建築物、いわゆる王城の持ち主である国王が、自ら毎日のように訪れては、セインを王宮仕えに誘うものだから、そのたびに接待をしなければならないオズワルド家の人々も、セイン本人も、少々辟易していた。

「あの王城の外壁、爆破してやろうかしら」

 などと物騒なことを、キャルが口にするくらいだった。

 しかしそれも。

「また、あの剣技を見てみたいものだ」

 との国王の言葉に、

「僕はいつでもいいけど?」

 とセインが答えたことで、回数が減った。王のお出かけに付き従う、近衛の希望者が減ったためだった。

  国王の目の前で、国宝級の剣の達人と手合わせされられてはたまらない。一度目の当たりにしているから尚更だ。

 実はキャルなら本当に爆薬を仕掛けるくらいやりそうなので、卿とセインが考じた策だったのだが。

「なんと情けない」

「あれだけ簡単に蹴散らかされては、仕方のない事でしょう。せいぜい鍛え直してやることですな」

 国王とオズワルド卿の会話を聞いて、近衛たちはさらに自信を喪失したらしい。しっかりと、止めを刺すのを忘れない発言に、セインは苦笑いした。

 中央役場の役人達は、といえば、王宮からの一斉検挙を受け、不正やら横領やら、税金の私物化等など、叩けば埃のように出てくるスキャンダルに湧き、あの髭面の役人はもちろん、役場長を筆頭に、知事やら町長やら、ボロボロと逮捕、解任が続出。

 近々、王宮の老中指揮下の元に、選挙が行われるらしい。

「いっそのこと、全部解体しちゃえば?」

 とは、やっぱりキャルの言だが、一部ではあるが、人道的な役場もあることから、建て直しを図るだけとなった。

「ま、しばらくは大人しくなるだろうし、市民もこれで、真剣に選挙に望むだろうさ」

 自信があるような無いような、微妙な顔で国王がキャルにそう言った。結局のところ、一般市民を信じるという事か。

 そんな日々が、半月ほど続いただろうか。

 澄み渡った空に、千切れ雲がぽっかり浮いて、さらに空を青く見せていた。

「お世話になりました。治療費は必ずお返しします」

 腕を白い包帯で巻いたシェリエッタが、オズワルド家の大きな門の前で、ラオセナルとアルフォードに、深々と頭を下げた。

 傷の理由を、町医者には話せないので、結局オズワルド家お抱えの医者に見てもらうことになり、結果、シェリエッタはオズワルド家へ通う形となっていた。

 それが、ようやく指先も動くようになり、後はリハビリだけとなったのだ。

 いつものように門先まで見送りに来てくれた屋敷の主は、にこやかに微笑んだ。

「もう、大丈夫かね」

 その、オズワルド卿の一言には、身体的に、心境的に。様々な意味が含まれていて、シェリエッタは顔を引き締めた。

「はい」

 綺麗な、まっすぐな返事に、老紳士は満足して頷く。

「あー!」

「あれ?もう帰っちゃうの?」

 大きな声と、とぼけた声に、門の奥を覗けば、広い庭に古くからあるのだろう、屋敷の玄関まで続く、低いレンガ作りの、半分崩れて蔦が這った塀の間に、ひょろりと長い影と、ふわふわした小さな影が見え隠れした。

 かと思えば、小さい方は勢い良く走って来る。

「もう大丈夫なの?痛くない?」

 走って来たかと思えば一気にまくし立てた。

「ええ。もう大丈夫よ。あとはリハビリだけだから、自分ひとりで出来るだろうって」

 出合った時と同じ、大きな瞳を見れば、嬉しそうに輝いた。

「そう、良かった!」

 満面の笑みにつられて、シェリエッタも笑った。


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