過去から未来への欲望
「この、切り抜きはどうゆう意味があるの?」
エレは二枚の切り抜きを見て首をかしげている。
状況が把握できなかったみたいだ。
「右の方は、前知事のノーリ知事がロットシティを作った時のパレードと記者会見の写真だろ?」
「次に、左の写真を見て欲しいんだ」
コーヒーをテーブルに置き、エレと向かい合って座り直した。
「左の写真は、ノーリ知事が製薬会社アポロンの所長だった時の写真みたいね?」
白衣の研究員が数人並んで、写っている写真を見てヨラは不思議そうに見ている。
「そう、製薬会社アポロンの写真と知事になった時の写真に共通点があるんだ」
「なによ?」
ヨラはもったいぶらないで早く言いなさいよ!と言わんばかりにこっちを見ている。
「重要なのは、知事自身じゃなくて一緒に写っている後ろの肖像画なんだ。」
「肖像画に写っている人物を良く見て欲しい。」
ヨラは猫目を大きく開けて、切り抜きを覗き込んだ
「これって…まさか、今の知事じゃないわよね?」
「髪型は違うけど、そうだと思う。間違いなく、今の知事だと思うんだ。これって、どうゆう意味だと思う?」
「そうね、もし今の知事がクローンやコールドスリープから目覚めた過去から来た人だったら同一人物の可能性もあるわね!」
「うん、そこも少し調べないといけないけど図書館だけでは情報を全部探すのは難しいと思うんだよね。」
「それと、もう一つヨラに気づいて欲しいモノがあるんだ」
ヨラは頭に「?」を浮かべながら、僕の顔を覗き込んだ。
「その二枚の肖像画に注目して欲しいんだ。左の製薬会社アポロンの方にはもう一人の人物が写っている。」
「ホントだわ!でもノーリ知事になってからの写真には、その人物の肖像画の部分が消えているわね」
顔を擦りながら、ヨラはまじまじと二枚の切り抜きに写っている肖像画を見比べている
「その、写っている少女はなに者なのかな?そして、なんで知事になってからの写真には、その少女の肖像画消されてるんだと思う?」
ヨラは前足を一通り、毛づくろいをしながら考えていた
「もし、現知事が過去から来た人物でその少女も過去から来ていたらどうかしら?」
「それだとしても、どうして肖像画を消す必要があるんだ?」
「そんなの知らないわよ!」
ヨラが目を見開きながら、こっちを見ている。
「とりあえずは、現知事と前知事のノーリ知事との関係と肖像画、そして肖像画の少女の事を調べる必要があるね。」
「そうね、先ずはそこの関係を調べましょ。幸い明日からはバビロンタワーの完成とロットシティの生誕祭で街中がお祭り中だから、私達がウロウロしても目立つ事もなさそうだしね」
とヨラは言いながら、全身を毛づくろいをし始めた。
それは、人間の女性がデートに行く時みたいにおめかしをし始めるのと同じ様に。
「調べ物するのに、なんで小奇麗な猫です。みたいな準備し始めてるんだよ。」
「いいじゃない!レディーにとってお祭りはある意味、新しい出会いの場でもあるのよ。しかも、小奇麗な猫ですって何よ!!!それじゃ、いつも私が汚いみたいじゃない!」
爪を立てて、僕を睨み始めた。
女はこうゆう時は面倒だから、僕は「はいはい」とその雰囲気を流すことにした。
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製薬会社アポロンについての報告
私は、兼ねてより裏があると言う噂が絶えない世界最大の医療メーカー製薬会社アポロンに潜入捜査をしている
このメモが世界を愛する人に届く事を願ってここに書き残す。
アポロンの設立には多くの裏がある。
その裏は海よりも深く全貌を暴くのは難しい
生物兵器、クローン技術、遺伝子操作など、考えられる研究は全てしているのは事実だった。
現に、人の言葉を喋る動物や試験管に入った人間を私は目にした。
そして、アポロンの創始者「エドワード・リハルド」は何か別の意味を持って、上記の実験をしている様子がある。
既に、第三次世界大戦の前夜と言われる今だが、この世界大戦の始まりは、石油資源や領土問題が原因ではない。あの国が世界を巻き込んで戦争を始めようとしているのは、どうやらアポロン…
イヤ、エドワード・リハルドが大きく関係をしているらしい。
そして、兵器と言うのは、どんなに強力な武器や強力なガス、生物兵器だとしても必ず対策が行われる。
だが、それが出来ないようなモノを使って世界を一つにしようとしている様だ。
彼は、世界を愛している。
イヤ…正確には世界を愛していたと言った方がいいかもしれない。
それには、あの少女が
すまない、どうやら時間がないみたいだ。
一人でも多くの世界を愛するものに、このメモが届くことを願う。
そして、未来がある事を願う。
第6機密機関、調査隊主任
ミリアン・ドミニク
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