電紙図書館
エレ!この街の電連モノレールはエミュレーにもお金とるみたいよ!」
と目をキラキラさせながらエイルがこっち見ている。尻尾が激しく動いているって事は嬉しいんだろう。
「この街だとエミュレーはそんな珍しいものじゃないみたいだからね?さすが科学が発展している街って事かな?でもちゃんと人権?猫権?があっていいじゃん!今まで他の街の電連モノレールじゃ動物はキャリーにって言われたからね」
ガラスで出来た駅のホームで第三区ブラオへの行き方の路線図と睨めっこしながらヨラに小バカにした感じで答えたが、
本人はよっぽどキャリーに入れられないのが嬉しいのか全く気にしてないみたいだった。
「ここからだと20分位でつくみたいね!早く乗って行きましょう♪」
とヨラはご機嫌に僕をせかした。
以外と単純なネコだな
お昼時の車内は空いていて、同じ車両に僕たち以外の乗客居な乗っていなかった。
車両の進行と同時に光が当たる窓はソーラーパネルと変わる。
電気を充電しているタイプのモノレールらしい。
天井には3Dホログラムで出来た広告がこちらに向かって何かの商品を一生懸命アピールしていたり、今日の式典の様子を投影しているが、僕はあまり興味がないし、ヨラは嬉しそうに窓の外を見ているだけだった。
「ヨラさんテンションが上がるのはいいけど、乗り過ごさないでよ?」
「わかってるわよ!そんな事よりエレ、見て外の景色凄いわよ!」
多分、ヨラは感動を共有してほしいのだろう。その希望に乗ってあげる事にした。
最初に乗った第5区シュバルツの工業風景から第4区ゲルブに入ると景色は一変して変わる。
住宅地域だからか、レンガで出来たマンションや住宅が綺麗に区画整理された街並みが見える、その先に見えるのは第二区グリューンの商業地帯の会社のビルの群れだった!
「そういえば、エラ?
この街はエミュレーがそこまで珍しくないみたいだけど、今日他のエミュレーと逢えたり出来るのかしらね?」
とこちらに目を見開いて問いかけてきた
「どうだろうね?
そもそも、エミュレーって見かけは動物なんだろう?
それじゃ僕は気づかないかもよ?
喋っていたら別だけど…それに、ヨラはエミュレーと普通の動物の見分けが出来るの?」
「どうかしら…実際に私もエミュレーとそう、何度も会った事はないから、それは会ってみないとわからないわね?」
「まっ第三区ブラオはロットシティーで一番人が集まる場所みたいだし、エミュレーが普通にいるんじゃないかな?
ブラオから先だったら企業も多いしさ」
「そうね、素敵なオスネコがいてナンパされたらちゃんと助けなさいよ?」
と良いながら毛並を整え始めた。
まっ一応女って事で身だしなみに気を使ってるんだろうな
「はいはい。お嬢様。」
「なに、その適当な返事は!」
とヨラは爪を立てながらこっちを睨んでいる。
「だからエレは女の子にモテないのよ?もっと女の子の楽しみを盛り上げないと」
「すいません…ヨラさんの言うとおりです。」
めんどくさい時は謝るに限る
「本当にわかってる?それならいいんだけど…」
と窓を見ながらヨラは会話を続けた。
「そうそう、例の氷の少女の意味だけど、なんだと思う?少しは想像がついてるんでしょ?」
と僕の方を見つめて返事を待っている。
「どうだろうね?タダ…この街だからこそって意味なんじゃないかな?って想像はしてるよ。その氷の少女がなんなのかはわからないけど、この街の歴史に重要に密接してると思う。幸いこれから行く電紙図書館なら古い資料も多いって聞くし、結構有名な図書館だからね」
とヨラの方を見ながら話を進めた
「とりえあず、今日はカッコイイネコがいようが情報集めだけで終わりだからね?丸腰で来てるから、終ったらすぐにモーテルに引き返すよ?」
と言うとヨラは、わかったわよって顔でまた窓を見た。
ドアの上にある液晶には次の駅「電紙図書館前」への到着時間がカウントし始め、同時にモノレールの速度が緩み街並みも平行に遅くなって行く。
それはなんだか、これより先の未来には行けないと言われてる感覚になった。
ガラス張りで出来たターミナル駅を出たと同時に大きな建物が視界に入ってきた。
「電紙図書館」
世界でも5つの指に入る巨大な図書館で、今の時代ほとんどが電子書籍となった本の中にも、電子書籍として扱えない本を、紙のままで保存している書籍を多く保有している。
電子書籍にはプロテクトが掛かっているものは一般に購入などが出来ない。
そう言った貴重な資料を見るには一番手っ取り早い。
それに、昔は紙の本が主流だったらしいが技術の進歩と環境の対策の結果、電子書籍が普及した。
それには問題もあって、資料がハッキングされて改ざんされる場合もある。
それなら、改ざんが出来ない紙の資料の方が情報を集めるときは便利だったりする。
特に古い情報だと
「広いわね?これ今日一日で目的のものを探すのは大変ね」
エントランスに入ると同時に本棚が戦争に行く兵士の如く無数に整列をしていた。
「とりあえずは、あの市長の事を調べるのが一番先かな?そこからピースを集めていこう。」
案内図を見ながらどこから回るかの目星を考える事にした。
「そうね、とりあえずはロットシティーの歴史を調べてみましょう。」
「後、獲物の話は大きな声で言うのはこれから禁止ね?どこで聞かれて横取りされるかもわからないからさ。」
「わかってるわよ!」
ヨラは当然でしょ!って顔で返事を投げつけてきた。
とりあえず、時間を短縮するためにも受付のお姉さんにロットシティーのフロアを訪ねてみた。
「ロットシティーのフロアですか?ただ今、係りの者を呼びますので少々お待ちいただけますか?」
と爽やかな笑顔で言ってもらえたので、とりあえずソファーにヨラと腰掛けて担当の人が来るのを待つ事にした。
5分程まっただろうか…ヨラの望みは違う意味で案外早く叶ってしまった。
「お待たせしました。ロットシティーフロア担当のフィリップです。」
声の方に顔を向けると、そこに立っていたのは帽子を被り、ビシッとした、ブレザーを着たサルだった…
「はい。あれ、もしかしてエミュレーですか?」
とそのサルの案内人に問いかけてみた。
「そうですよ。もしかして、観光でしょうか?でも、お客様の隣に居られる方もエミュレーですよね?」
とヨラの方を見て質問返しをされた…
以外と早くエミュレーに会うなんて思わなかったから拍子抜けだ。
しかも、ブレザー着て働いてやがった…
「はい。そうなんですよ。それで今日は旅行でこっちにきて有名な電紙図書館を見学してみようと思って。なっ!ヨラ?」
と、さぞカッコイイネコとの対面に希望を膨らませて毛並まで綺麗に整えてたメスネコの、ガッカリした表情が見たくて話をエリスに振ってみたが意外な形でその小さな夢は壊された。
「そうなの、ちょっとこの子が1人じゃ行けないってわがまま言うから私がついてきてあげたんです。」
と、どこから出してるのかわからない、外面の声で返事をした。
「そうなんですか、優しい方なんですね?それではロットシティーのフロアまでご案内させて頂きますので、私の後について来てもらえますか?」
と言うと、案内人のフィリップさんは…案内人のサルは歩き始めたので僕たちはその後を黙ってついて行く事にした。
目的のフロアまで行く途中に何匹かのエミュレーにすれ違った。
みんな、ブレザーを着たサルだった…
多分、名前言われてもブレザーの名札を取ったら僕には誰がフィリップさんなのか、言い当てる自信はなかった。
そんな、考えをしながら本で出来た兵士の行列の中を10分少々歩いてやっと目的のフロアに到着した。
「お待たせしました、こちらがロットシティーの資料があるフロアになっています。もし御用などありましたら、お申し付け下さい。」
とお辞儀をしてフィリップさんは今来た道を戻っていった。
「ヨラ、どうだった?久しぶりに会ったエミュレーの感想は?」
と僕は皮肉っぽく問いかけてみた。
「そうね、ちょっとビックリしたけど、この図書館の中だと一番のハンサムだったわ!」
と普通の返事が帰ってきた。
もしかして、ネコ以外でもアース同士ならOKなのか?
しかも、この図書館でって顔の見分けできないんですけど…
「そっか…とりあえず、僕は紙の書籍の方を探すから、ヨラは電子書籍の方を調べてみてくれる?」
話が膨らんだ時に対応ができないと思って、さっそく作業を始めようとヨラに提案をした。
ヨラはわかったわと言う顔で電子書籍を調べに行った。