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#333333  作者: チバスコウ
1.氷の少女
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ロットシティ

時の流れは早く、時に便利に、時に残酷に、時代を変えていく。


SF映画や小説などで憧れた未来に手を伸ばそうと人々は飛躍を辞めず進化を歓迎した。


それは外見的な物とは裏腹に内面的なものは逆を辿っていった。

感情を持った事は人にとって対話へと繋げ空しい欲望を残した。

もしかしたら本能で生きる野性の動物の方がよっぽど幸せなのかもしれないし、平和なのかもしれない…


それとも人が知らないだけで野生動物にも感情があるのかもしれない。


人の歴史は戦争の歴史だと思う。

それは誰しもが知っている事で、歴史の教科書にはうんざりする程の争いが載っているものだと理解した。


それは今もどこかの国で現在進行形で起こっている事だから仕方がない。


物をお金で買う様に


偽りの平和を武器で買う


そうやって人の歴史は繰り返される。

見た目は違っても中身は同じ。


そんな事を思うのはきっと、今テレビで難しい肩書きの評論家と知ったかぶりのナルシストタレントなどが「平和」について討論をしているからだと思う。


普段はそんな事は思わないし漠然と誰が与えてるのかもわからない偽りの平和の中にいるからそれが当然だと思う気持ちも理解はしている。


だからと言って僕がそれを見ている訳ではなくテレビに釘付けになって居るのは窓からこちらを除く鴉だった。


暗闇に無音のテレビの光が壁をまるで繁華街のネオンの様に色とりどりに飾り立てていた


人は科学の発展と同時に未来に希望を押し付けてきた。

神様というものになろうと考えた。

もっと病気になりにくい体を

もっと頑丈な体を

もっと…もっと…


そして試験管の中で人が人を作る事を考えた。

俗に言う試験管ベイビーってやつだ…


表向きの試験管ベイビー達の就職先は病気などにより子供を作れない家庭への派遣。


そしてもう一つ裏では戦争や特殊工作員としての調教と教育。


人から産まれないからこそ都合がいいのかもしれない。


産まれた時から戦う事、人を殺める事を主観に教育を施された子供達は、それは当然の事だと認識していった。


そう…それは僕も例外ではない。


組織というものの維持は難しい。

少しの亀裂で壊れてしまう卵の殻と何もかわらない。


僕がいた組織も同じだった。


一国の偉い人が裏で特殊の機関があったとしてそれが、表には出してはいけないものだとしたらどうするだろうか?


きっと誰もが同じ考えだと思う。


「なかった事にしてしまえ」


試験管で産まれた僕たちは最初から実在していたのかさえ定かでもなければ居なくなってもわからない。


後はカップラーメンにお湯を入れて3分間まつくらい簡単なこと


後は暗い闇の中に消えて行くだけ。


ほとんどの仲間は大人たちの理想の為に消え


数人の仲間は籠の中の鳥から鴉へと変わった。


この時に本当に産まれたのかもしれないって気持ち悪い事は考えたくもない。

そんなもの、どうでもいい。


漠然と思ったのは明日のご飯の事。


奇麗事を言って幸せになれるほど素敵な勘違いは持ち合わせていなかった。


この、大人たちの世界に気にいらない事があれば中指立てて舌をだしてニッコリ微笑めばいい。


「年寄りの道楽が通じない世の中にしてやる」


その時の僕は、そう思うことで生きていく理由をとりあえずは決めてみた。


世界の平和とかそんな、カッコイイ理由じゃなく、年寄りの道楽への…戦線布告だ。






過去の人は未来に来て最初に言う事はどうやら、台本でもあるみたいに決まっているらしい。


20世紀の終わりからお金持ちは不治の病を未来でなら…と死を受け入れず体を冷凍する事でこの世界にやってくるやつが少なくない。


今日もテレビでは、過去から来た人でも言えばいいのだろうか?冷凍保存から目覚めた1人の男がインタビューを受けている。


「未来はすばらしい」その言葉を聞き出すために。


このテレビに映っている、ちょっと人相の悪いおっさんは、20世紀の企業家だったとテロップに説明が流れている。


コールドスリープから目覚めた人間は歴史の証言者として政府から色々と手当てが出ると聞いた事がある。


確か、今花束を持って未来にやってきた、おっさんに近付いている女もそうだったはず。


彼女は20世紀末~から21世紀の初めに掛けて絶大な人気を持った歌手だった。

もちろん、今のこの時代でも歌手として良く彼女の歌が街中やテレビで頻繁に流れている。


世界と言うのはほんの僅かな大人の力によって右にも左にも動いて行く。


それは昔からの決まりごとで、これからも同じ事。

人は誰しも「自分は人とは違う」という素敵な勘違いをするもの。


それは悪い事でもなく当たり前の事。

人と同じでは嫌だ…

人と同じじゃないと不安…

最高の矛盾の塊。

それは僕も同じ事。


だから単純に勘違いの行動でもほんの数ミリ世界を動かしてみたいとそう思った。


そう…これは偽りに対して中指を立ててニッコリ笑う方法だ。


「我々人類は絶え間なく争いを続けてきました。ですが…今は違います。過去の過ちは浄化しなければなりません。傷つけ傷つき…憎み憎まれ…その不のスパイラルから断ち切る為に我々ロットシティは中立の立場から世界に平和を広めていきましょう。短いですが、これが私の願いであり言葉です。」


「市長ありがとうございます。続きまして最後にロットシティのシンボルになりますバビロンタワーの完成披露に移りたいと思います。」


司会者が「第一区ヴァイス」に手の平を向けると歓声と共にカメラの映像はロットシティ生誕20周年記念として建築された新たな街のシンボルとなる地上53階建ての建物、「バビロンタワー」へと向けられ、それと同時に花火と歓声が混ざったノイズがさらに大きく膨れ上がった。


テレビに映された、円錐の建物には窓がほとんどなく、唯一最上階から灯台の様に光を出すための大きな窓が在るだけだった。


「まるで大きな監視塔みたいね?センスが最悪…あれをシンボルにする気持ちが知りたいわ!」


テレビ越しに国営放送を見てる僕の隣で、一匹の黒猫がブーブーと文句を言っているが、いつもの事なので取りあえず無視をした。


「エレ!あなたがやりたい事はわかるけど、悪趣味なセンスが移るわよ?」

と、隣の猫さんが口うるさくブーブー言っている


「悪趣味だって見る人から見たら芸術なんだろ?ピカソの絵とかだってそうじゃないか?結局どんな、凄い芸術も一周したら良くわからない得たいの知れない物体になるんじゃない?」


「何?その適当な回答は…」

どうやら、僕の返事は間違っていたらしい…すっかりゴキゲンナナメになってしまったようだ…猫のくせに!


この隣でさっきから文句ばっかり言ってる獣は…まっ普通の人から見たら猫に変わりないのだけど、自然の摂理に反して人の力で生み出されたキメラみたいなもの…試験管ベイビーで生み出された人が居る様に人の遺伝子と動物との組み合わせで作り出されたもの…


「エミュレー」


表向きは、20世紀後半から21世紀に掛けて、莫大に増えた人類の世話役などの為に作られた生物だ


と言うのは表向きの建前。この世は悪いことをする為にどうしても建前が必要になる


元々は動物の本来の力と人の知恵を組み合わせれば新たな力を手に入れられるのでは?という発想から戦争の為に作られた動物。


動物に人間の感情を入れた生き物?入れ物が人間じゃないだけの人?世界中で実験がされたらしい。

今では、昔ほどエミュレータを作る事はなくなったらしい。


らしい…と言うのは、僕も聞いた話しだから実際に昔ほど作っていないのか、世界のどこかで作ってるのか…


ただ、目の前の猫との関係は…僕と同じ研究施設で産まれたから姉弟みたいな関係だろう。


小さい頃から訓練と人を殺す任務を一緒にこなしてきたもう一人の自分と言えるのかもしれない…

やっぱり撤回しとく。

僕はあんなに毛深くはないから。


「そう言えば、エレ?テネシアンの報告書はもう確認したの?情報調べるの大変だったみたいよ?」

ヨラが薄めで当然読んでるわよね?って表情でこっちを見ている。


「ちゃんと確認してるよ!後はこっちで細かい事を調べてみないとまだ確信までには、ならないんじゃないかな?さすがに不明な所が多すぎだし」


「そうね、まだ期限までは時間があるんだからちゃんと下準備をしておかないといけないわね?」


「うん。まだこの街が何をするのか、そして氷の少女ってキーワードについても調べないといけない事があるからね。とりあえず、第三区ブラオの図書館にでも行ってみないとね?」


コーヒーを飲みながら僕が言うとヨラは納得した表情になった。



ロットシティ…円形状に出来てるこの町は真ん中から、それぞれ、1区画2区と円状に5つの区画に分かれている。


第一区ヴァイス

市長が住む区画で町の行政を決める施設などの重要な所。そしてバビロンタワーがある場所。


第二区グリューン

一つ目の住宅区画。企業の社長などが多く住んでいる


第三区ブラオ

ここには全ての学校や役所といった全ての公共施設や会社、商業施設、娯楽施設などがある区画


第四区ゲルプ

2つめの住宅区画


第五区シュバルツ

工業施設やそれに勤めている労働者などが住む区画



そして僕たちが今いるのは第五区シュバルツにあるコンクリートだけの飾り気のないモーテル。



第三区ブラオにある、電紙図書館までは電蓮モノレールで行く事になった。

この街の公共の乗り物はバスか電蓮モノレールしかない。

そのモノレールは頭の上をまるで蜘蛛の巣みたいな形で繋いでいる。

まるで一度入った獲物は逃がさないと言いたげだ。


矛盾の矛先に何があるのか…

平和という偽りの旗を大きく振るこのロットシティーに来た理由を説明しておかないといけないことをすっかり忘れていた


その事を話すには少し歴史の話をしないといけない


20世紀の発明家アルベルト・アインシュタインは言った。


「第三次世界大戦がどの様な戦いになのるかなんて、私には分からない。

しかし、第四次大戦ならわかる。石と棒で戦うだろう」



21世紀に起こった第三次世界大戦…それは技術の発展、科学の発展が戦争を肥大化させ、大きな傷を残した…

それから小さな争いは多々あり国という大きな権力は次第に力を使いきり、小さな街へと変わっていった。


この街ロットシティーもその一つ。

数々の戦争で「中立」という平和の色を塗りたくった街は増え、戦いに疲れた人は流れ着く…


そう最後の楽園だと思って。


ただ、このロットシティーはどうやら平和カラーをメッキにして何か裏でやってるという噂が入った。

もちろん、今の市長ガルデモに変わってから。


それを聞いて僕とヨラはこの街に来た。

ただ、「戦争を止めよう!」なんて正義のヒーロー気分ではない。


正義のヒーローは妄想の中やイメージの中だけで結構。


3次元にヒーローがいるっていうのは…もうそれは窮屈で、勝手に正義を押し付けてくるに決まっている。


そんな、迷惑なものになろうなんて全く思っていない。人一人の力で世界は動かない。


ただ、そのロットシティーの秘密に掛かっている賞金目当てで来てるだけなんだから。


もし、今回の獲物が世界に影響を与えるのならほんの数ミリ世界を動かせる。それだけで大満足だ。


ただ、戦争の道具として生み出された僕が出来る世界への復讐はただ、大人の思い通りにさせない。

っていう些細な事。


また、それを利用してお金を貸せぐっていう事。


さぁ、この蜘蛛の巣に守られたロットシティーはどんな悪い事を隠しているのかな?


それが無駄になった時に、あの市長はどんな絶望の顔を浮かべてくれるだろうか?

今から、ワクワクでならない。

この最高の遊び場を充実してみようじゃないか!


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