こころがやせてゆく
こころがやせてゆく
〈へっ からだはこんなにこえているのに〉
〈つりあわないわね〉
わたしの真ん中へんが喋っている
〈えいようはたくさんもらってるはずでしょ〉
〈こころにはとどかないのね〉
あまいナッツタルト食べたのに
〈でもこころはひつようとしてないのね〉
ナッツタルト
美味しいのに
こころがひゅるひゅるしている
風の音
風がこころに纏ってる
少しずつ
また こころが削られる
〈でもダイエットにはならないわね〉
〈ぜんぜんこころはみえないし〉
〈あなたぜんぜんきれいじゃないわ〉
わたしの真ん中へんはよくしゃべる
〈それになんにもしてない〉
〈ただ まってるだけじゃない〉
〈それってずるくない〉
〈まわりにはあなたのこころをまあるくできるもの〉
〈あるでしょ〉
〈かぜをよけてくれるものが〉
〈みつけなさいよ〉
うるさい
歪なこころ
きょうもこころがやせてゆく
知っている
こころの栄養をつけるすべを
知っているけど
わたしの身体の下のほうから声がする
《さっさとゆきなさい》
止まってたら体が肥えるし
これ以上こころがやせたら
わたしが丸ごと消える
まだ消えるわけにはいかない
ナッツタルトが
こんなんだから
こころがやせてゆくって言っても
か弱き女とは誰も思ってくれない