二十八 再会
学園に帰ってくる頃には幾らか気分も落ち着いていて、機嫌も直した俺。車を降りたら立花先生は足早に学校の方へ歩いて行った。俺たちの礼だけ背中で聞いて。
どこに行くつもりなんだろう? よくわからないが、まあそんなに俺たちに関連性はないだろ。授業の準備をしよう、とか思ってたのかもしれない。
とはいえ、これからどうすればいいんだろう?
とりあえず寮の方に歩いていくと、ちょうど昼食の時間が終わった時だったようで、食堂から移動してくる生徒が見えた。俺たちは下駄箱に行って靴を履きかえ、生徒の波を逆流しながら食堂へ向かった。まだ制服は湿っているけどまぁ仕方ないだろう。そんなに気にならなくなっていた。
あー、昼飯昼飯。終わったところみたいだったけど、まだ食堂に入れるかな?
と、そこで。
「匡!」
こんな短い言葉だけでも誰だかわかる。
「カズ!」
人波の中に手を振る人を見つけ、掻き分けて進むとそこにはやっぱりカズがいた。隣には光。またバスケ部に勧誘していたのだろう。黒髪に、灰色の目。バッジを見ると、やっぱり雨出の民だった。
「匡、よかった!」
満面の笑みを浮かべたカズが俺を抱き締める。俺も応えた。
「何か、雨くさ」
「うるせぇ」
ったく、感動の再会だというのに。体を離すと、カズがまた気を遣ってくれたんだってことにやっと気づいた。笑わせようとしたのだろう。案の定、琳が声を出して笑う。
「おお、翡翠ちゃんじゃねーか! えーと、こっちが茶髪だから、妹の琳祢ちゃんだな? で、この別嬪さんは?」
「俺の昔の学校の先輩、遥だ。今はバスケ部のマネージャーをしてる」
「おお、遥先輩か! 知らねぇけど。なんつーかお前ら、美形ぞろいだな」
初対面のはずの琳には微笑みかけ、遥には敬礼をし、カズはここでもムードメーカーだ。
「俺以外はな。それより、怪我は?」
「もうピンピンしてらぁ。痕も残らなかったから、まぁ一件落着だな」
どんな怪我だったのかは聞かない。そうか、よかった、と言うと、光が口を開いた。
「おいおい、おれを放ってかないでくれよ」
「ああ、ごめんごめん。もう知り合いになったか?」
「ああ、事情も聴いた。遥先輩、おれがお守りします! ……なんつって。さっき見たけど加藤先輩、悪い人じゃなさそうなんだよな」
遥が嬉しそうにカズを見る。光がそれを無視して話し出した。
「でも、匡の言ってた人がこういう奴でよかったよ。ダチになれて嬉しい」
肩を組んでカズと光は歩き出した。
「じゃ、おれFクラスだから。戦闘クラスは別だけど、午後の通常授業で会おうや」
カズに負けたか……悔しい。そう思いながら俺もカズたちに手を振った。
「いい人そうだね、カズさん」
琳が俺の横を歩きながら言った。
「まぁな」
「匡、あんたいい仲間もってんじゃないの。大事にしてる?」
「当たり前だろ」
「私のこと、覚えてくれていたのね、カズくん」
「そりゃそうだろ」
一人一人に言葉を返し、食堂に入る。ちょうど片づけを始めるところで、俺たちはぎりぎりセーフだった。
よーし、飯だ飯!




