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二十  みんな部活をやることに

 七時限目を終えると部活が始まる。部活がない人たちは、図書室や寮の部屋で思い思いの時間を過ごすようだ。光と別れ、教科書等の荷物を置きに一度部屋に戻ると、琳も翡翠も部屋にいた。遥だけいない。


「お兄ちゃん、戦闘授業、すっごい楽しかった!」


 俺を見るなりそう言った琳は、まだ頬が紅潮していた。よほど運動したのだろう。


「よかったな、おつかれ。翡翠はどうだった?」


「私に運動はなかなかつらいけれど、能力を操ることなら思ったより出来たわ」


 翡翠もよかったなぁ、と呟き、俺はしようと思っていた話を切り出した。


「俺、バスケ部に入ることになった。琳と翡翠は?」


 琳がまた目をキラキラさせ、翡翠も微笑んだ。


「あたしは武術部。あ、この武術は、柔道とか合気道とかそういうのも混ぜた実践的な格闘のことね。お友達には他の部に誘われたけど、やっぱり好きなことやりたいから」


「私は弓道部。弓ができるから、先生にも勧められたの」


「そうか」


みな部活をやることになっていたのか。これは有意義な生活になりそうだ。


「遥は何部か知ってるか? やっぱりサッカー部のマネージャー?」


 2人とも首を横に振って、琳が言った。


「遥はバスケ部だって。お兄ちゃん、遥と一緒の部活入るんだね」


 あいつが、バスケ? まぁ、サッカーもバスケも似合うけど。あんなに楽しそうにサッカーのマネージャーをしていたのに、なぜバスケに転向したのだろう?

 なぜ三年がまだ部活をしているのかというと、この学園の部活には引退というものが存在しないからだ。何でも、精神面でも肉体面でも強くなれると考えられているかららしい。


「入部届、出した?」


「ええ。そろそろ行ってみるわ。今日からだものね」


「俺も出した。よし、行ってみるか」


 顧問はなんだか優しそうなハゲの先生(ハゲはハゲでも足利とは大違いだ)。入部届を出しに行ったら快く受理してくれた。おお、助かった、僕は水氷の民の顧問だけど……まぁ、よかったよかった、とか何とか……。

 琳と翡翠が手を振り、とりあえず何も持たないで部屋を出て行った。

 俺も続こう。そう思い立ち上がったとき、俺はとんでもないことを思い出した。

 父さんが、帰ってくるんだ。


「やべぇ!」


 すっかり忘れてた! 家が!

 俺は部屋から飛び出した。立花先生を探しに。


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「ああ、家ね。民の大工に直してもらったよ」


 いつも通りの様子で、自販機でコーヒーを買ってごくごく飲みながら立花先生が言った。


「じゃあ、近所の人も何も異変には気付いてないんですね?」


「そのはずだよ。まずあんな大きな音でドアが壊れたのに気付かない隣人だ。特に周りに興味もないんだろう」


「あの、滅多に帰ってこない父さんが帰って来るんです」


「ふーん」


 で? とでも言いたげだ。


「だから、一度帰らせてもらえませんか?」


 立花先生はコーヒーの缶を振るともう中身がないとわかったのか、つまらなそうにゴミ箱に投げた。

 すると缶は、淵に当たって跳ね返ってきた。

 立花先生を見ると、信じられないという顔でコーヒー缶を見つめている。


「あの、そのまんまにしちゃダメですよ。ちゃんと捨てないと」


「わかってるよ。あー悔しい。もう一回!」


 立花先生は立ち上がり、コーヒーの缶をがしっと掴んでさっきから座っているイスの場所に戻ってきて、また投げた。外れだ。

 それから入るまで何十回も缶投げにつき合わされ(しまいには外れて落ちた缶を取りに行かされ)やっと入ったかと思えば、


「疲れた。もう一杯!」


 とまた缶コーヒーを買う立花先生。何なんだこの人は。子供か。


「あの、俺の件は?」


 ああ、と呟き、缶コーヒーを傾けていた立花先生が俺に向き直った。


「許可は出来ない。また送迎するのもおっ……じゃなくて危険だから」


 おい、今絶対、億劫って言おうとしたろ。じゃなくてって言ってるしな。


「じゃあ、どうしろって言うんですか?」


「この学校にスカウトされて通い始めたから帰れない、とでも言いなさい。下手に嘘はつかないほうがいい。でも、この学校の本質のことは絶対に内緒だ」


 はぁ、と頷き、背を向けようとすると、


「匡輝、バスケ部入ったんだってね」


 声をかけられたために向き直り、答えた。


「はい。早乙女くんに誘われたので」


 立花先生が意味ありげに微笑んだ。


「そう。頑張って」


 短いこの言葉の中に、何か他の意味も含まれている気がしたのは、気のせいだろうか。


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