十六 琳と遥の腕比べ
琳と遥の初腕比べが始まった。
琳の突き――これはかわされる。
遥の右手ショット――あやうく当たりそうになった琳だが、何とか避けた。
民って本当に戦闘能力あんだなぁ、と素朴に思う。いや、マジで。
「やっぱりビービー弾だと遅いなぁ」
「何それ、言い訳?」
琳が不敵に笑い、一気に距離をつめ――足蹴りを食らわせた。今度はヒット。うわ、痛そう……。
「つっ……」
一、二m飛んだ遥が、蹴られた場所を痛そうに押さえる。でもすぐ体勢をなおし、琳に両手ショットをかました。
「いたっ……」
撃たれた腕を琳も痛そうに押さえ、でもまたすぐに構える。
ここまでは互角ってとこか。琳、すごいぞ。約半年練習してきた遥と互角なんて。けど、遥の表情は余裕しゃくしゃくだ。もしかしたら、まだ本気じゃないのかもしれない。
立花先生と学園長は、目を二人に向けながら何やら話している。気になるが、この距離じゃ読唇術も出来やしない。
遥が琳に向かって駆け出した。琳は構えた姿勢から動かない。遥が琳に蹴りを放った。
「遥は体術もできるのね」
「俺も初めて見たぜ」
この学園に来て習ったんだろう。と、そのとき蹴りの影響で遥のミニスカートがめくれた。綺麗な太ももだけでなく――。
「遥のパーンツ真っピンク!!」
それを見た琳が変な節をつけて叫ぶ。その声は闘技場の天井まで響くほどデカい。もしかしたら、この外にもいくかもしれない、というほど。
「きゃあっ!」
遥が負けない大声で叫び、スカートを押さえて座り込んだ。
そこに、琳は首元に足を突きつけた。
「勝負あり、だな」
呟く俺。頷く翡翠。短い腕比べだったけど、食い入るように見てしまった。迫力があって。
立花先生が大きな音で拍手をした。
「OKだよ~、おつかれさま! すごいね、二人とも」
学園長も感心した様子で手をたたいている。
「おつかれー!」
俺は両手をメガホンのようにして二人に言った。琳が遥から一、二歩離れ、振り返って笑顔で手を振る。遥は立ち上がり、ぱんぱんとスカートをはたいた。そしてちらりと俺たちの方を見た。顔が赤い。
「……見た?」
次に俺だけをガン見して、遥が銃を構える。おいおい、頭狙ってねぇか?
「見、見てない。断じて見てません」
両手でストップを示しながら言うと、遥の顔の赤みがすぅっと引いていった。
「嘘だったら今度こそ眼撃つからね」
いや眼狙ってたんかいぃ!




