十四 身体測定≠民検査
「はい、顎引いて」
身体測定は、オーソドックスなものだった。身長、体重、座高、胸囲と股下、股上(制服のためだろうか)をはかる。
そして。
「じゃあ、民検査始めるわね。こっちへ来て」
「民検査?」
「そう、民検査。身体測定≠民検査なの。まずは見た目ね」
そう言うと保健の先生はイスに俺を座らせ、上から俺をじっと見つめた。
「うーん、黒髪に黒瞳、ねぇ。目が灰色がかってるわけでもないし……」
じろじろ見られて何だか恥ずかしい。俺は思わず目を逸らした。
「とりあえず握力測って」
次に握力計をもたされた。力いっぱい握りしめると、両方七十を超えた。まあこんなもんかな。
「力は火地の民レベル、と。じゃあ、今度はフラッシュ計算ね」
今度はパソコンの画面を見せられた。ぴっぴっと百桁の数字が切り替わっていく。
「いくつ?」
「三九八七二です」
「……正解。頭は水氷の民レベルね」
保健の先生は驚いた声を出した。え。
「何か変ですか?」
「し、心配はしなくていいのよ。ちなみに、50m走は何秒台?」
「六秒台です」
そこで、保健の先生はぴくりと眉を動かし、
「ちょっと待っていてね。長谷川学園長に用があるの」
部屋には電話があるにもかかわらず保健室を出て行った。ぽつんと部屋に残されて、俺は何か変なのかと少し怖くなってくる。
ぶーん、ぶーん
と、マナーモードにしてあった携帯がバイブレーションした。ポケットから携帯を引っ張り出してみると、メールだ。
『来週の今日帰るよ。 家は綺麗にしてあるかな? 匡輝のことだから大丈夫だと思うけど、琳と喧嘩してないよね? お父さんはいつでも君達のことを想ってるんだよ! じゃあ、またね!!』
父さんからか。来週の今日帰る……ってヤバい! 家が! ドアが! つーか家どうなってんだ?
どうしよう? 俺はその場で足踏みした。
でも……どうしようもない。いいや、夜にでも父さんにとりあえず電話しよう。
「ごめんなさいね、遅くなって」
保健の先生が帰ってきたのを見て、俺は急いでポケットに携帯をしまい、先生に向き直った。
「ついてきて」
次は何だ? 嫌な予感がしつつも、俺は保健の先生の短いスカート丈を気にしないように後ろをついていった。




