婚約破棄されましたが、あなたの婚約者は私ではありません
「アンナ・リーナ出てこい!」
卒業式の会場でロット・ハードイクナ公爵家の次男が男爵令嬢の腰に手を回しながら叫んだ。お祭り状態だった会場が一気に静まり返る。そんなことにもロットは気にしない。
「リーナではなくて、リイナです」
溜息を飲み込んで、アンナがロットの前に出てきた。
ロットはアンナに指を指して叫んだ。
「お前とは婚約破棄だ!」
「……ちなみに、理由は何ですか?」
「そーいう所だ! 泣きわめいたらどうなんだ!! お前はいつも僕を無視する!」
「無視していた訳じゃないんですけど」
「婚約者ならば課題を手伝ってもいいだろうが!」
「どうして私がやらないといけないんですか?」
「可愛げのない奴め! 弁当も作ってもこない!」
「もう理由はいいです。ぐたらない」
ロットは顔を真っ赤にさせる。
「僕を誰だと思ってるんだ! 公爵家の人間だぞ! だかが伯爵家の人間が僕に逆らっていいと思っているのか!!」
「次男でしょうに何を言ってるの?」
それを聞いた男爵令嬢が驚く。
「ロット様って次期公爵様じゃないんですか!?」
「僕は次男だよ。でも兄よりも優秀だから、そのうち次期公爵になるよ」
男爵令嬢は顔を歪めた。ロットは狼狽える。
「優秀ならば、こんな場所で婚約破棄なんてしないよ」
アンナの肩に手を回して現れた兄に、ロットは顔を歪めた。
「僕の婚約者に馴れ馴れしいぞ!」
「婚約破棄して何を言ってるんだ」
アンナの額にキスをする。アンナは顔を赤らめる。
「ハルト様。破廉恥ですわ」
「婚約者同士ならキスぐらいするさ」
「婚約者同士だって!?」
ロットは目を白黒させる。
ハルトはそうだ、と答える。
「アンナの婚約者は私だ。父上から聞いただろう?」
「アンナは僕の婚約者だ!」
「何でそう思ったのやら」
「じゃあ僕の婚約者は誰だ!?」
「そこの男爵令嬢がいるじゃないか」
「彼女は男爵だ! 」
「彼女と一緒になるためにアンナと婚約破棄したんだろう? アンナはお前の婚約者じゃないけどな」
「僕に男爵家に行けと言うのか!?」
「彼女は次女だよ。男爵家を継ぐのは優秀な姉だよ」
「なら平民になるじゃないか!!」
「恋人がいる婿は欲しがらないからね」
「冗談じゃないわ! 平民になるぐらいならお金持ちの商人の妻の方がいいわ!!次期公爵だと思ってたのに!!」
男爵令嬢は去っていく。
ロットは追いかけようとはしなかった。
「これで平民にならなくてすむ」
安堵するロットにハルトは残念な目を向ける。
「お前が婚約破棄したのは消えないからな。アンナはお前の婚約者じゃなかったが、婚約者だったら傷物にしたんだからな。誰が傷物にするお前を婿にするよ」
「そ、そんなぁ」
ガックリとするロットにハルトは鼻を鳴らして、やれやれと思っているアンナの手を取った。
「馬鹿な弟のせいで君と婚約破棄になったら、ロットを殺してやる」
手にキスをされ、アンナは顔を赤らめるのだった。




