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婚約破棄されましたが、あなたの婚約者は私ではありません

作者: 羽倉了
掲載日:2026/05/11

「アンナ・リーナ出てこい!」

卒業式の会場でロット・ハードイクナ公爵家の次男が男爵令嬢の腰に手を回しながら叫んだ。お祭り状態だった会場が一気に静まり返る。そんなことにもロットは気にしない。

「リーナではなくて、リイナです」

溜息を飲み込んで、アンナがロットの前に出てきた。

ロットはアンナに指を指して叫んだ。

「お前とは婚約破棄だ!」

「……ちなみに、理由は何ですか?」

「そーいう所だ! 泣きわめいたらどうなんだ!! お前はいつも僕を無視する!」

「無視していた訳じゃないんですけど」

「婚約者ならば課題を手伝ってもいいだろうが!」

「どうして私がやらないといけないんですか?」

「可愛げのない奴め! 弁当も作ってもこない!」

「もう理由はいいです。ぐたらない」

ロットは顔を真っ赤にさせる。

「僕を誰だと思ってるんだ! 公爵家の人間だぞ! だかが伯爵家の人間が僕に逆らっていいと思っているのか!!」

「次男でしょうに何を言ってるの?」

それを聞いた男爵令嬢が驚く。

「ロット様って次期公爵様じゃないんですか!?」

「僕は次男だよ。でも兄よりも優秀だから、そのうち次期公爵になるよ」

男爵令嬢は顔を歪めた。ロットは狼狽える。

「優秀ならば、こんな場所で婚約破棄なんてしないよ」

アンナの肩に手を回して現れた兄に、ロットは顔を歪めた。

「僕の婚約者に馴れ馴れしいぞ!」

「婚約破棄して何を言ってるんだ」

アンナの額にキスをする。アンナは顔を赤らめる。

「ハルト様。破廉恥ですわ」

「婚約者同士ならキスぐらいするさ」

「婚約者同士だって!?」

ロットは目を白黒させる。

ハルトはそうだ、と答える。

「アンナの婚約者は私だ。父上から聞いただろう?」

「アンナは僕の婚約者だ!」

「何でそう思ったのやら」

「じゃあ僕の婚約者は誰だ!?」

「そこの男爵令嬢がいるじゃないか」

「彼女は男爵だ! 」

「彼女と一緒になるためにアンナと婚約破棄したんだろう? アンナはお前の婚約者じゃないけどな」

「僕に男爵家に行けと言うのか!?」

「彼女は次女だよ。男爵家を継ぐのは優秀な姉だよ」

「なら平民になるじゃないか!!」

「恋人がいる婿は欲しがらないからね」

「冗談じゃないわ! 平民になるぐらいならお金持ちの商人の妻の方がいいわ!!次期公爵だと思ってたのに!!」

男爵令嬢は去っていく。

ロットは追いかけようとはしなかった。

「これで平民にならなくてすむ」

安堵するロットにハルトは残念な目を向ける。

「お前が婚約破棄したのは消えないからな。アンナはお前の婚約者じゃなかったが、婚約者だったら傷物にしたんだからな。誰が傷物にするお前を婿にするよ」

「そ、そんなぁ」

ガックリとするロットにハルトは鼻を鳴らして、やれやれと思っているアンナの手を取った。

「馬鹿な弟のせいで君と婚約破棄になったら、ロットを殺してやる」

手にキスをされ、アンナは顔を赤らめるのだった。

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