#12
これから影山は過去の償いだけでなく、就ける仕事も限られてくるだろう。こういった支援系の職種は不可能だし、精神病のカテゴリーとして、時には冷たい視線を向けられるかもしれない。
けどそれは、彼が一番目の当たりにしてきたことだ。今までは彼が、そういった者達を庇ってきた。今度は庇われる側に回るだけだ。
そして彼のことは、自分が守る。仕事ではなく、生涯、彼の恋人として。
こちらが思案していることを察したのか、影山は遠慮がちに声を落とした。
「品場さんには迷惑かけないよう頑張るので、これからも傍にいて良いですか?」
「えらく腰が低いな。俺を幸せにするとか言ってた、あの強気な感じはどうしたんだよ」
あえてからかってみると、彼は露骨に頬を赤くした。
「色々あって、回復はしたけど自信が削り取られた気がします。隔離生活の中でもけっこう揉まれてたんでしょうね」
どこか他人事のようだが、実際はそんなわけない。彼にとって思い出したくない出来事も山のようにあっただろう。今は見栄というより羞恥心の方が勝っているようだ。
「まぁ、良い意味で丸くなったんじゃないか?」
「そういう風に捉えていただけると有り難いです。……強気かどうかは微妙ですけど、自分を奮い立たせる為にももう一度言わせてください」
影山はフェンスの前の小さな段差に乗り上げ、空に向かって宣言した。
「品場さんは、俺が絶対幸せにします」
品場に向かって……ではなく、あえて全然違う場所に叫ぶところは、本来の彼の姿なのかもしれない。品場は至って冷静に、彼の決意表明を考察していた。
影山は元々天然で、ちょっと抜けていて、馬鹿がつくほど正直だ。ようやく、その彼に戻りつつある。
「品場さんはこれまでもこれからも、たくさんの人を救っていくと思ってます。この病は治らないけど、暗い底から助け出すことはできる。現に俺は、貴方に救われた……だから俺は、生きて、その証明をします。何を言われてもいい。折れない強さと、優しさを教えてもらったから……それを少しずつ、返していけるように」
「……うん」
振り返った影山の頭を撫でようとして……もうそんな歳でもないな、と手を引っ込めた。
上司でも先輩でもない。彼は人生を捧げる恋人だ。遠慮はしないし、してほしくない。これからはずっと、対等な立場で歩んでいく。
ようやく、ゴールが見えてきた気がする。




