#9
施設を運営しながら、学校の特別講師として呼ばれることが増えた。当たり前のことを、当たり前の顔をして言う。講義を聴いているひとりひとりの顔を確認していた。
何となく分かった気になっても、いざという時には役立たないかもしれないし、数分後には綺麗さっぱり忘れているかもしれない。
でも、それは全てかけがえのない経験となり、財産となり、その人の人格を形成していく。いくつになっても成長はする、というのはまさに今の自分なので、まだ若い彼らに夢を持ってほしかった。
夢はいくら持ってもタダなんだ。後ろを振り返っていたらあっという間におじさんおばさんになるんだから、好きなことには全力で挑んでほしい。たくさん笑って、泣いて、成功と失敗を繰り返して。
暗く明るく生きよう。それが人だ。人の正しい在り方だ。
疎外感や孤独感を覚えると急斜面を転げ落ちるように悪化する。どれだけ管理と育成、営業に追われても、入所者とのコミュニケーションは怠らなかった。
だが久しぶりに働き過ぎて体調を崩しそうだ。まずいと分かっているのに繰り返してしまう……。
大切な日が迫っていることも忘れて、品場は経営者として忙殺されていた。
施設では季節毎にイベントも開催する。地域の交流を目指し、春に小さなお祭りを開くことにした。夏祭りは決定しているので良い予行になる。改善点があれば次のイベントに活かそう。
とすれば、やはり桜が散る前が良い。桜の開花に合わせて、簡単な催しや軽食を振る舞うお祭りを開いた。
「品場さん、大丈夫ですか? 目の下すごいですよ」
当日、施設の中庭に設営したテントの中で、事務員の女性が心配そうに尋ねてきた。
「大丈夫ですよ。ただ、ふああ……ここのところ全然寝てなくて」
「当直の人が、最近はずっと日付変わるまで残ってたって言ってました。大変ですねぇ……お祭りが終わるまで休んでくださいね」
お礼を言い、軽く手を振る。広場では依頼した音楽団が演奏をしたり、協力に来てくれた地元の高校生達が屋台でお菓子を作っている。和やかな風景がさらに眠気を誘い、ずるずるとパイプ椅子にもたれかかった。




