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カテゴリー  作者: 七賀ごふん


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66/88

#4



「お前が好きなこともやりたいことも、全部お前のものだ。それをとやかく言う権利は他人にはない。こんなクズみたいな世界でも、皆思いっきり楽しむ為に生まれてきてるんだよ」


品場は大通りを顎で示した。老若男女、さまざまな人が歩いている。共通しているのは、誰もが笑っていること。

「そういうことが言えるのは……明るい人の特徴です」

影山も人だかりを見つめながら、消え入りそうな声で呟いた。

「ポジティブな人には何を言っても前向きな答えが返ってくる。ネガティブな人は」

「何を言っても後ろ向きな答えが返ってくる」

「今の子どもが一番最初に教わることですね。今の俺は……駄目です。素晴らしいことを言ってるのは分かります。真っ白な時だったら感銘を受けたと思います」

影山は自嘲的に言って迂回した。どんどん静かな道へ入っていく。

「本当は嬉しい。励ましも慰めも、そこまで言ってくれる貴方の優しさも。でもその喜びが、見える位置に上がってこないんですよ。ずうっ……と深い水底に沈められたみたい。深海が光の届かない暗黒の世界なら、俺ぐらいのステージに入った人は皆こんな視界なんでしょうね」

住宅地を横断する川に差し掛かると、影山はその柵に掴まり下を見下ろした。

「落ちるなよ」

一応釘を刺すと、彼は頷いた。白い月が顔を出している。闇が彼の裾を引っ張っている。

「品場さん、これ以上俺と一緒にいたら貴方の精神状態が悪化します。今の俺は歩く病原菌ですから」

「その心配はない。何十何百って患者を傍で見てきたんだ。今さらお前ひとり抱えたって影響はないよ」

「俺の暗さなんて何の問題もないって?」

彼の瞳から色が消えた。まずい……と片足を前に出した瞬間、甲高い笑い声が響いた。

「あははっ。急にすいません、何だかおかしくって。ふふっ……大丈夫ですよ、……まだ」

影山は額を押さえながら笑っている。一瞬本当に焦ったが、大丈夫だったみたいだ。まだ、昼の彼のまま。夜には傾いていない。

「すいません……大丈夫……」

でも、指先がわずかに震えている。居ても立ってもいられず、彼の手を握り締めて歩き出した。


「品場さん……?」


通りに戻り、人を掻き分けて進んでいく。影山と手を繋いでいることは気にならなかった。わざわざ自分達に注目する者もいない。カップルらしき同性二人組もたくさん見かけるし、観光地の方が堂々と歩きやすかった。




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