#2
「桜って本当に季節を感じさせますよね。梅も大好きなんですけど、なにか始まるような、わくわくする感じになるのはやっぱり桜かな」
すぐ側にある名城を見上げ、影山は小首を傾げた。
「展望台や塔はあるけど、そういえば城はちゃんと描いたことないな……」
「描けばいいじゃんか。ちゃんと写真撮っておけよ」
品場は自分のスマホを影山に渡した。後のことは何も触れず、写真を撮るよう促す。
影山もただ頷き、お借りしますと言って城に焦点を合わせた。
「撮れた?」
「まぁ……」
「あぁ、良いじゃん」
二人で画面を覗き込んでいると、通りがかった女性に声を掛けられた。
「良ければお写真撮りましょうか?」
仲の良い友人同士に見られたのか、女性は笑顔で佇んでいる。隣にはもうひとり友人らしき女性もいた。
「あー……すいません、じゃあお願いします」
「えっ」
カメラを起動したスマホを女性に渡すと、影山が困惑しながら小声で訴えてきた。
「俺達の写真は別に撮らなくてもいいでしょう。品場さんオンリーで撮ってもらってください」
「何でだよ。諦めて付き合え」
「はい、撮りますよー」
女性の明るい声が飛び込んできた為、無理やり前を向かせる。そして極力微笑んだ。影山はどうせ無表情だろうと思ったが、写真を確認すると自然な笑みを浮かべていた。
「すみません。どうもありがとうございます」
「いえいえ」
女性達の後ろ姿を見届け、スマホを仕舞う。
「お前普通に笑ってんじゃないか」
「営業スマイルです。俺達の職業病でしょ」
「そりゃそうだけどさ……」
ため息まじりにつっこみ、辺りを見回した。露店は順に焼きそば、綿飴、たこ焼きにホットドッグ……様々な香りが混じって、園内を歩く人々の食欲を誘っていた。
「品場さん、そろそろお腹空いてきたんでしょう。何食べます?」
今度は影山の方から提案してきた。内心驚きつつ、そうだな、と動揺してないふりをする。
「あぁ、じゃがバタとか良いんじゃないか?」
「え」
「何だ、嫌いなのか?」
「いや……嫌ではないんですけど。前に嫌というほど食べたので」
「つまり嫌なんだな? じゃあアレは? 鮎の塩焼き」
定番のメニューに目移りしていたが、香ばしいにおいにつられてしまった。割り箸に刺さった鮎が所狭しと並んでいる。




