表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カテゴリー  作者: 七賀ごふん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/88

#1



「祭りか……」


それこそ意外な要望だったが、彼が乗り気なのに無下に断ることはできない。少し考えて、それから指を鳴らした。

「桜を見に行くか」

「桜? もうさすがに終わりでしょう」

昨日、折りしも五月の一週目に入ってしまった。困った顔をする影山とは対照的に、品場はスマホを弄る。

「いや。もっとずっと上に行くんだよ」

「あぁ、なるほど。東北は今が見頃でしたね」

「近くで屋台とかいっぱい出してる所に行こう。さすがに大変だから新幹線でな」

即決して、即行動した。チェックアウトしてから東京駅に向かい、北陸新幹線の切符を買う。ホテル代を負担した為か、切符代は影山が払った。

「指定席で良いですか?」

「グランクラスでも困らないけど」

「俺が困ります。安月給なので」

ビールだけ買って、隣り合わせの席に座った。今朝起きた時には考えもしなかった状況だ。落ち着かない為ビールを飲んで、無理やり焦燥を抑え込む。

「しばらく誰とも旅行なんて行ってなかったんだけど、まさかお前とこうして出掛けるとは思わなかった」

発車した後は喧騒も途絶え、車内に静寂が漂う。影山は何も言わず微笑んだ。


三時間近くかけ、目的の駅に到着した。昼時も過ぎ、大勢の人が忙しなく動いている。

影山がまだ食欲がわかないと言うので、昼はとらずにタクシーで桜の名所へ向かった。ドライバーの中年の男性は感じ良く、お勧めの観光地を丁寧に教えてくれた。

タクシーから降りると、さっそく桜の絨毯が敷かれていた。大きな公園を囲うように植えられた桜の木が観光客を出迎えて、風が吹く度に花弁を散らす。

「じゃあ、良い休日を」

「ありがとうございました」

御礼を言い、他の観光客の後について公園に入る。予想通り、この時期この公園はたくさんの屋台が出て縁日のようだった。


「賑やかですね。子どももいっぱい」

「あぁ。俺は来たことあるんだけど、お前は初めて?」

「俺は初めて来ました。それより品場さん、来たことあるなら退屈では……大丈夫ですか?」


影山は歩く速度を落とし、わずかに眉を下げた。

「全然。桜は毎年見たいし、前に来た時は雨が降ってたんだよ。傘さして歩くのすごくしんどかったから、今日は晴れてて良かった」

枝垂れ桜に近寄り、花弁を観察する。祭りより花見がメインになってしまっているが、彼は柔らかい笑みを浮かべて隣に並んだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ