#20
カーテンを開けると、ビルの合間から朝日が顔を覗かせていた。
陽射しが強い為また半分ほどカーテンを閉めて、運ばれてきた朝食とコーヒーに手をつけた。
品場の視線の先では、影山がぼーっと壁を見つめている。
「食べないか。昨日から何も食べてないだろ」
声を掛けると、彼は遠慮がちにこちらを向いた。そして腰を浮かせ、足音もなく近くまでやってくる。
「和食にしたんですか」
「あぁ。洋食が良かった?」
「いえ、意外だっただけです。……勿体ないので、頂きますね」
影山は椅子に座り、手を合わせた。昨夜に比べるとだいぶ落ち着いたように見える。無理はしないでほしいが、空腹なのだろう。味噌汁から手をつけ、焼き魚を器用に食べ始めた。
「今日はどうする?」
「……?」
「仕事は? 俺は休み。……にしたんだけど」
影山は怪訝な顔で咀嚼していた。
「俺も休みにします。スマホ、壊しちゃったから電話がかかってきても分からないし」
「それはさすがにまずくないか? 電話機もあるんだし、後で連絡しておけよ」
「そうですね……」
影山はテレビを一瞥した。しかし電源は入れてない為、画面は真っ暗だ。彼がニュースを観たがっていることが分かった為、品場はリモコンを取って電源を入れた。朝のスポーツニュースが流れ、アナウンサーがはきはき解説している。
「別にお前は指名手配されてるわけじゃないだろ。犯罪者ってわけでもない」
「でも偽証罪になりませんか。俺は罪のない人を加害者にしてるから」
「タイムリミットをつくる」
箸を置いて、影山の頬に手を伸ばした。
「俺が決める。一緒に警察に行こう」
「品場さん……」
彼はしばらく驚いた顔をしていたが、徐に瞼を伏せて緑茶を飲んだ。
「ふふ、ついてこなくていいですよ。面倒なことになりそうだから」
「そりゃ随分だな。ホテル代だっていつも俺が負担してるのに」
「泊まりたいとも、そもそも行きたいとも言ってません。品場さんがヤりたいだけでしょう」
「なっ!」
あまりに酷い物言いに、品場は赤くなる。それを見た影山は、勝ったと言わんばかりに笑った。
「半年ぶり……でしたね。朝なんて来なきゃいいと思ってたのに、また安心してる。昨日のことも全部夢みたい」
茶碗蒸しにスプーンを差し込み、影山は動きを止めた。
「暗い場所に行く前に、明るい場所に行っておきたいですね。お祭りとかやってませんかね」




