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カテゴリー  作者: 七賀ごふん


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61/88

#19



分かる。自覚してしまうことが一番怖い。

日々壊れていく自分に気付いてしまうことが……明日が来ないかもしれない、と考えることが本当に恐ろしい。

品場も同じ病に罹ったが、早い段階で治療を受けられたからまだ良かった。完全な治療法はないものの、同じ病の者達と距離を置くだけで症状は緩和する。


だが影山の症状は分かりづらいものだった。

多重人格者のように暴れる彼を見てると思う。

人が壊れるのはあっという間だ。優しくて明るかった彼はもういない。品場が知らない間に誰かがロープで締め上げて、瀕死状態にしてしまったのではないか。

正直もう見てられない。

最後に残った、絞りカスのような理性が切ない。影山は涙で顔をぬらしながら、品場の足元に伏せた。

「品場さん……お願いします。俺を殺して……もう無理だ」

額を床に擦りつけて、繰り返し願った。完全に壊れる前に壊すのは……善意なのだろうか。

影山をこれ以上苦しませない為に、自分が手を下す?

違う。自分はそんなことの為に、影山を追い続けたわけじゃない。傍にいたわけじゃない。

病が進んで、人格が破壊される恐怖と闘い続けるのは大変なことだ。でも、それでも彼は負けちゃいけない。

勝たしてやりたい。この狂った世界で、自分達は醜くも強く生きなきゃいけないんだ。

「休もう、影山」

バスタオルで頭から包み込み、彼を抱え起こした。

ベッドまで連れて行き、そのまま寝かせてやる。暖房を強めに設定し、すぐ横に座って煙草を吹かした。


精神の健康ばかり重視される時代になり、肉体の健康は疎かになった気がする。でも狂人になるより、煙草の吸いすぎで肺がんになる方がマシだ。

安楽死の選択がしやすくなった現代は、昔と比べて生きやすいのか……それとも、昔より生きづらい世界になってしまったのか。

空いた手で影山の頭を撫でてやる。


ひどいウイルスだ。


この世界に神様がいるのなら、どうしてこんな悪意をばらまいたのだろう。




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