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第十章 再会と静止の午後

午後の「ゆあまーと」。

早田晃市は、店内でいつものように品出しの準備をしていた。

柔らかな日差しが棚の間から差し込み、静かな午後の空気がゆっくりと流れていた。


「……お疲れさまです」

背後から届いた声に、晃市は手を止めて振り返る。


そこに立っていたのは、伊沢美紀だった。

仕事着を身にまとい、胸元のネームプレートが光を受けてきらりと光る。

後ろで束ねた髪が揺れ、少し緊張したような表情が浮かんでいる。


「久しぶりですね」

晃市は少しだけ声の調子を整えて、静かに言った。


「はい……少し、自分と向き合う時間がほしくて」

美紀の声は落ち着いていたが、その言葉の奥には、迷いを乗り越えたような確かさが感じられた。


晃市は小さく頷いた。

すぐに言葉を返すことはできなかったが、彼の胸の内には、ほっとしたような気持ちが静かに広がっていた。


――ふと、店内の空気にわずかな違和感が走った。

冷蔵庫の駆動音がいつの間にか止まり、天井のスピーカーから流れていた音楽も静かに消えていた。

その異変に気づいた晃市が顔を上げた瞬間、通路を歩いていた客たちが――まるで時間ごと凍りついたように、ぴたりと動きを止めていた。


「一体、何が起こったの……?」

美紀は戸惑いと驚きを隠しきれず、小さくつぶやいた。


晃市は静かに頷き、落ち着いた声で応える。

「何が起きているのかは、僕にもわからない。でも……僕がいる。だから大丈夫です」


そして晃市は、心の奥でそっと願った。

――どうか、この時間が少しでも長く続いてくれますように。


美紀は少しだけ息をつき、ぽつりと呟く。

「前にもこんなことがあった気がするけど、覚えていなくて……でも、どこかで感じたことがあるような気がして」

晃市は黙って頷いた。


「誰にも邪魔されない、二人だけの時間……」

二人の心の中に強く響いたが、口には出さなかった


美紀は突然の事態に驚いたものの、すぐに平静を取り戻し、今何をすべきかを考え迷わず行動に移す――

彼女はそっと囁いた。


「早田さん……奥のバックヤード、誰にも見られないで静かです。行きませんか?」


晃市は小さく微笑んで頷いた。


ふたりは、時が止まったかのように静まり返った店内を、ゆっくりと歩いていった。

指先が触れ合うたびに、互いの鼓動がそっと伝わってくる。

やがてふたりは、しっかりと指をからめながら、誰も来ることのないバックヤードの奥へと足を踏み入れた。


沈黙のなかで、晃市は胸の奥で小さく息を呑む。

伝えなければ、と決意を振り絞るように、美紀の横顔をそっと見つめた。


「伊沢さん……」

晃市はそう言いかけて、わずかに言葉を止めた。

一瞬、呼吸を整えるようにして目を伏せ、再び顔を上げる。

「……美紀さん。ずっと、好きでした」

晃市は、絞るような声で言った。

「最初に会ったときから…何年経っても、ずっと」

声は低く、けれど誤魔化しのない確かさを帯びていた。


美紀はわずかに肩を揺らし、短く息を呑んだ。

そしてすぐに微笑みながら目を伏せると、そっと口を開いた。

「……気づいてました。たぶん、ずっと前から」

目を上げたその瞳には、もう迷いはなかった。


「私も……最近、晃市さんのことばかり見てた。止めようとしても……だめだった」

美紀の声は震えず、穏やかだった。

そこには、長く閉じ込めていた想いをようやく差し出す、静かな勇気があった。


晃市は言葉の代わりに、美紀の背中を強く抱きしめた。

美紀も黙って晃市の胸に顔を埋めた。


時間はない――けれど、ふたりの想いは、もう言葉以上に重なっていた。


時間の止まった世界で、ふたりだけの気配が熱を帯びていく。

互いの存在を確かめ合うように、腕を伸ばし、強く抱きしめ合う。

まるで、これまでの時間のすべてを埋め合わせるかのように。


指先が肌を探り、唇が唇を探し当てる。

乾いた呼吸が混ざり、唇と唇は強く、何度も吸い合った。

――それはただの口づけではなく、長く抑えてきた想いの放出だった。


美紀は思った。

(いつ時間が動き出すのかわからない......)


彼女は浅く息を整えると、手早くバンダナを外した。

その下でまとめていた髪をほどき、肩へと流す。

続いて、腰のエプロンの結び目を解き、前へ回して脱ぎ取り、手から滑らせるように床へ置いた。

そしてシャツの第一ボタンに素早く指をかけ、小さく息を吸った。

戸惑う暇もなく、美紀はひとつ、またひとつと手早くボタンを外していく。

シャツが肩から滑り落ちるのを確かめる間もなく、すぐさまベルトを外し、ズボンを腰から一気に滑らせるように脱いだ。


晃市も勢いよく衣服を脱ぎ捨てると、たくましく盛り上がった胸板と、広く厚みのある背中が露わになった。

その体には、年齢を重ねた男ならではの落ち着きと、積み重ねてきた確かな力強さがにじんでいた。


――ふたりは、下着までもすべて脱ぎ去り、素肌をさらけ出した。

一糸まとわぬ姿で向かい合い、まっすぐに見つめ合う。

もう、隠すものは何ひとつなかった。


美紀は、晃市の分厚い身体に手を伸ばした。

自然と晃市の下腹部に触れた瞬間、驚くように目を見開く。

そこには、彼の普段の物静かで控えめな性格とは対照的な晃市の己が、確かに存在していた――


晃市の己は、まるで彼の中に秘められていたもうひとつの「意志」のように、硬く、真っ直ぐに張り詰めていた。

まるで長く閉じ込められていたものが、ようやく外へ出られたことを叫ぶように、天を突いていた――

晃市は、彼女の手が自分の中心部に触れた瞬間、恥ずかしさと誇らしさの入り混じった気持ちに襲われた。

普段は誰かの前で自分を強く見せることなどなかった。

だが今、美紀の前では、そのすべてをさらけ出してもいいと、心の奥で静かに感じていた。


美紀は静かに膝をつくと、晃市の己の前に顔を寄せた――

その動きに言葉はなかったが、彼女の目には、どこか確かな決意と優しさが宿っていた。

晃市は戸惑いにも似た静かな緊張を感じながらも、その手つきにすべてを委ねていく。


彼女の右手が、そっと晃市の熱を帯びたものを包み込む。

左手は彼の睾丸を下から柔らかく支えている。

そして口元が近づき、やがて、ぬくもりを帯びた美紀の柔らかな口内に、彼の張りつめていたものを静かに迎え入れた。

美紀は口に含んだ晃市の己を、ゆっくりと癒すかのように柔らかく舌を這わせた――

それはまるで、晃市という存在の一部を、丸ごと優しく赦していくようにも思えた。

 

彼女の首の動きは前後に一定のリズムを持ち、どこか祈るように丁寧だった。

晃市は、自分の奥に残っていた焦りや孤独、誰にも触れられなかった感情のかけらが、ひとつひとつ溶かされていくのを感じていた。

刺激ではなく、赦しのような感触だった。


荒ぶるように昂ぶっていた自身が、彼女の柔らかな口内に吸収され、やわらかく包み込まれていく――

晃市は、そこに愛の深さと再生の兆しを感じていた。


やがて、美紀がそっと顔を上げた。

凛としたまなざしには、誰のためでもない“自分の意思”が静かに宿っていた。


晃市は静かに息を吸い込んだ。

美紀の静かで揺るがぬまなざしを見て、胸の奥の緊張がすっと消えていく。

代わりに、身体の奥から確かな熱がこみ上げてきた。

晃市もまた、静かに覚悟を決めていた。


そして彼は視線を移し、何も身にまとっていない美紀の全身を見つめた。

そこには、若さではない、美しさがあった。

時の流れをやさしく受け止めたような丸み、傷も疲れも含めてすべてを引き受けた肌――

晃市は、その全てをただ黙って見つめていた。


彼女の胸は、母として子に愛情を注いできた確かな証。

ふくらんだ腹部には、年月とともに積み重ねられた生活の痕跡がやわらかく残っている。

下腹部には、豊かに茂る陰毛が自然なぬくもりを湛え、静かに存在を主張していた。

大きく張り出した腰回りは、どこか包容力を思わせる力強さを帯びていた。

その堂々たる曲線に、晃市は思わず唾を呑んだ。


やがて美紀が静かに後ろを向くと、肩甲骨の起伏から腰の丸みにかけて、なめらかなラインが浮かび上がった。

年齢を重ねた体の輪郭には、若さにはない落ち着きと静かな迫力が宿っている。

その奥に秘められたものまでも、晃市は目を逸らさず、ただ静かに、熱を抱きながら見つめていた。


再び晃市に向き合った美紀は彼の目をまっすぐに見つめて言った。

「晃市さん……あなたのすべてを、私にください……恥ずかしいけど、ちゃんと受け止めたいの。私の中に……残してほしい」


晃市は少し照れくさそうに視線をそらしながらも、真剣な声で応えた。

「……ありがとう。そう言ってもらえて、幸せだよ」


晃市はバックヤードの床に、何枚もの空き箱を丁寧に重ねて敷いた。

それは彼なりの配慮であり、静かな覚悟の表れでもあった。

美紀はそんな晃市の様子を見つめたまま、そっとそこに腰を下ろすと、ゆっくりと背を預けるようにして横たわった。


視線は逸らさない。

晃市もまた、美紀の目をまっすぐに見つめながら、逞しい体でその身を包み込むように静かに覆いかぶさる。


息を重ねるように近づき、やがて、晃市は彼女の両膝に手を添えて優しく開いた。

その奥にある温もりに、迷いなく己を導く。

肌が触れ合い、湿度を帯びた熱の中に、静かに、深く、滑り込んでいく――

ひとつになるための動きは慎重で、しかし、内に秘めた切実な想いがにじんでいた。


晃市とひとつに繋がった瞬間、美紀の身体はわずかに震えた。抑えていた渇望が一気にあふれ出し、喜びが体中を駆け抜けた。

ずっと奥底で求めていたものにようやく触れられたような、深く満ちた反応だった。


晃市の動きは慎重だったが、その奥にはどうしようもないほどの熱があった。

ゆっくりと、だが確かに、美紀の柔らかく深い内側へと溶け込んでいく。


ふたりの身体は徐々に馴染み、呼吸も熱も、境目さえも曖昧になっていった。

それは単なる行為ではなく、ずっと伝えたかった想いを、ようやく形にできたような――

そんな、切実で、どうしようもなく美しい時間だった。

誰にも見られないという確信が、美紀から最後の抑えを奪った。

こみ上げる熱に抗えず、彼女は突き上げるような声をあげた。

それは、胸の奥に押し込めていた感情が、ついに噴き出した音だった。


晃市を迎え入れたその瞬間から、心も身体もひとつに重なっていくような感覚に包まれていた。


彼の存在が、自分の奥深くにまでしっかりと届いている――その確かな熱が、美紀の内に響くたび、抑えていたものが解き放たれていく。

胸の奥から突き上げるような波が何度も押し寄せ、美紀はただ、その昂ぶりに身を任せるしかなかった。


――やがて二人は体勢を変えた。

美紀はバックヤードのジュースの在庫が並べられている棚を両手で強くつかみながら、晃市の方に大きな腰を突き出した。


そして、美紀は再び震える声で囁く――

「……晃市さんの全部を、ちゃんと私にください……いまだけじゃなくて、ちゃんと残してほしいの」


晃市は深く息を吸い込み、強く短く答えた。

「必ず」


晃市は、美紀の腰を後ろからしっかりと抱え、両の手で逃がさぬように掴んだ。

そして、自身の硬さを迷いなく打ちつけるように押し込み、何度も美紀の奥深くまで貫いていく。

彼女の豊かで柔らかな尻が、そのたびに大きく揺れ、晃市の己が深く押し入っては、ぬるりと戻される。

彼の動きは力強く、容赦がない。だがそれは乱暴さではなく、長く押さえ込んできた情熱の発露だった。

音も、熱も、ふたりのあいだに溶け合って、打ち込むたびに濃密な空気が生まれていく。


美紀はぐっと脚を踏ん張り、大地に根を張るように腰を支えた。

尻から響く重たい衝撃が腹の奥まで伝わるたびに、彼女は目を閉じ、全身で晃市の想いを受け止め続けている。

ふたりを包むのは、静けさの中の激しさ。

打ちつけるたびに響く晃市の下腹と美紀の臀部のぶつかる音が、熱と想いを深く交差させてゆく。

それはただの快楽ではなく、ふたりの存在を刻む鼓動のようだった。

深く刻まれるような、一瞬ごとの重みが、ふたりの心に確かに残っていくのだった。


やがては晃市は絶頂に達して自分の全てを美紀の中に注ぎ込み、全てを出し尽くすと、そのまま彼女の背中にもたれかかった。


美紀も絶頂に達しながら、晃市の熱いものを自分の深いところに残さずに受け止めて、やがて背中を抱いている晃市と共に崩れ落ちた。


ふたりは通路に腰を下ろし、背を壁に預けて身体を寄せ合った。

火照った頬や髪にそっと触れながら、何度も静かに唇を重ねる。

残る熱と余韻に包まれたまま、ふたりは言葉もなくまどろんでいた。



どれくらいたったのだろうか。

――不意に、時間はゆっくりと動き始めた。


店内から客が店員を呼ぶ大きな声が聞こえた。

まどろんでいたふたりは、はっとして大慌てで身支度を始めた。

晃市が先に服を引っかけるようにして店頭へと飛び出し、少し遅れて、美紀もようやく着替えを終え、足早にそのあとを追った。


こうして二人は静かな絆と秘めた想いを胸に、日常の世界へと戻っていった。


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