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格ゲー無双! ~~RPG系異世界に格ゲー厨がやってきた!~~  作者: としょいいん


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第07話 異世界学園あるある

 その次の日、オレは辺境伯爵家の馬車に揺られてアリーシャお嬢様と一緒に王都にある王立学園へ登校する。


 いやぁ、以前から異世界モノに出てくる馬車の揺れは酷くて、慣れない者が乗ると酔いそうになるって聞いていたんだけど、うちの馬車は大丈夫な乗り心地で安心した。


 何でもうちの馬車は有名な発明家によって開発されたダンパーを用いた複合サスペンションが搭載されているらしく、これって王家が使用する馬車とほぼ同じグレードに仕上がってるというから脱帽モノだった。でも、これってお高いんでしょ?


 その発明家ってヤツは大体が現代世界から異世界へ転生して来た者たちで、そいつらはきっとクラフト系のゲームからやって来た生産チート持ちに間違いない。


 これは勝手な想像なんだけど、そいつは騎士とか剣聖を排出している武闘派貴族の出身で、生産スキルしか授からなかったせいで実家を追い出されてしまい、命カラガラの状態で隣国であるこの国まで流れて来たのだろう。


 そして、こんな貴重な馬車をただの伯爵家が所有してるって事は、うちの旦那様かお嬢様とご縁があって今もその関係が良好に続いてると言う事なんだと思う。


「タツヤがこの馬車に乗るのは初めてだったかしら。この馬車はほとんど揺れないでしょ? せっかく貴方のアイデアをハカセさんが実現してくれたのに、これまでは恥ずかしがって全然一緒に乗ってくれなかったから──」


 あれ? この馬車のアイデアって、もしかしてタツヤ(2P)の発案だったの? そんな記憶は全然受け継いでなかったんだけどな……。


 でもそう言えば、あいつの夢に元の世界の風景なんかが出てくる事があって、そんな日の朝は決まって口数が多くなるほど周囲にしゃべりまくるヘンな癖は確かにあった。


 オレが、あいつの記憶からこの馬車に関する情報を引き継げなかったのは、しゃべったあいつ自身の記憶が曖昧だったからで、さすがに夢遊病患者みたいな状態の時に口にした事まで、ちゃんと覚えていろって言うのは何か酷な気がするな。


 これも異世界あるあるか……いや、ないない。普通は自分の知識を元に開発と製造を行うのが異世界生産チート野郎の王道ファンタジーだったはずだ……と、そんなしょーもない事を考えている間に馬車は校門前へと到着する。


 ちなみに高位のお貴族様になればなるほど登校時間が遅めに決められており、我が辺境伯爵家と言えば丁度真ん中よりやや後くらいの順番なので、この時間は他の伯爵家や侯爵家の時間と被っているからとても混雑する時間帯となっていた。

 なので以前のタツヤ(2P)は幼馴染だったアリーシャお嬢様と同じ馬車には乗らずに歩いて登校していたのだろう。尤もそれだけが理由ではなかったのだが、それをお嬢様には言えなかったんだな。


「やあ、タツヤ。おはよう」

「タツヤくん、おはよう」


「あ、君たち今来たとこか。おはよう」


 この二人は以前のタツヤ(2P)の友人たちで、こっちの背が高いスポーツ系男子は騎士爵家の息子で名前はジェリス。そして中性的で線が細く、遠目で見ると女子と間違われる事が多い方は、男爵家の息子で名前をカミルと言う。


 オレの目から見ればどっちもタイプの違うイケメンなんだけど、こっちの異世界の人たちって美形率がけっこう高いから、オレみたいなフツメンの方が逆に目立ってないか?


 この二人以外にも、この学園に通ってる生徒たちを見ていると美形ばかりで、何故かギャルゲーの世界へ迷い込んでしまったような錯覚に陥りそうな気になるけど、オレは間違い無く剣と魔法の異世界へとやって来たはず。だって異世界へ転生する時の設定を自分でやったから間違いない。


 あのハゲの中間管理職みたいなオッサン(神?)の説明では、間違い無くそう言っていたはずだし、オレもそんな異世界初となるRPGの世界に格ゲースキルを持ち込んで、剣と魔法を相手にガチで闘ってみたかったかったから、禁じ手とも言えるリセマラを多用して今ここに居るんだからな。


 そして、以前のように友人二人と一緒に校内へ行こうとして、馬車の中からオレを睨むように見つめている二つの瞳がある事に気づく。


 そう言えばアリーシャお嬢様のエスコートを任されていたのを忘れていたっけ?


 オレは二人の友人たちに「今日はちょっとゴメン」と謝ってから、直ぐに馬車の昇降口まで戻ると同時に右手を差し出して礼をする。すると『やっと気づいたわね』と言わんばかりの視線をスルーしながら、ゆっくりと優雅に降車するお嬢様のサポートを心がける。


 普通の家人であれば今のは完全な失態で、後でお家へ帰ってから折檻が待っていてもおかしくない状況だけど、辺境伯爵家に恩のある相手の息子と言う事でそんな事態にはならないと思う。たぶん。


 友人たちはオレがお嬢様のエスコートを始めたので、そのまま校舎の玄関口まで少し離れて歩いてくれている。


 なぜ玄関口までなのかと言えば、上履きに履き替える女子生徒の脚が男子生徒の視線に晒されないように、下駄箱が別室に設置されてるからで、こんな設定(?)は元の世界の西欧文化には無かった風習だったと思うけど実際はどうなんだろう。


 もしあるとすれば、それは恐らく中世の西欧文化に日本的カルチャーをムリクリ混ぜ込んだギャルゲーの世界に他ならない……のだが、ここではこれが普通なのだろう。


 それから教室に到着すると、やっぱりクズ侯爵子息のリアンは欠席していて、担任の先生は全治一週間くらいだと言っていた。ほんとザマァだな。


 もし今日にでも再び出会ったなら、オレから決闘を申し込んで今度こそコテンパンにのしてやるつもりだったのだが、そうそう上手くチャンスは回って来ないと言う訳か。でも学園内で相手を殺せば、お世話になってる辺境伯爵家にご迷惑が掛かりそうだから、これはこれで良かったのかも知れない。


 そして今日の授業は午前中が国語と数学で、午後は魔法の授業と言うカリキュラムが組まれていた。国語は異世界あるあるの言語理解スキルがあるのか、割りとスムーズに理解する事が出来たし、数学についても元の世界で言えば『数学Ⅰ』程度のレベルだったので何とかなった。


 でも午後の魔法の授業については、少しだけ不安がある。だってオレの魔力とか、そっち系のステータスって軒並み『0』じゃん。ムリに決まってる……と思うでしょ? でも大丈夫だから、ぜひ期待して見ていてくれよな。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「今日の授業では魔力の抜き打ちテストを行います。各自名簿の順番で向こうに設置した的に向かって放射系魔法を使用して下さい。的に命中すればその隣にあるカウンターにスコアが表示されますので、そのスコアが今日のテストの成績として記録されますから皆がんばるように!」


 魔法の授業を受け持つのは、つばの大きな帽子と揃いの色をした紺色のマントを羽織り、胸がパンパンに膨らんだ白シャツに黒いミニスカとブーツを履いたちょっと背が低い女性教師で、この先生は男子生徒たちからロリ巨乳で多大なる支持と視線を集めていた。


(名前は確か……あれ、ちょっと思い出せないや……)


 あの生真面目なタツヤ(2P)の記憶によると、何故か『たわわ』に実った巨乳画像しか脳裏に浮かんでこなかった。

 それでもオレは彼女の名前を脳内検索したんだけど、その間ずっと彼女の胸の辺りを凝視していたらしい。


「ねぇタツヤくん、さっきから先生の胸元ばっか見てるけど、それって犯罪だゾ?」


 確かに先生の名前も気になっていたんだけど、魔力が『0』のオレでは初級魔法さえ放つ事が出来ないから、今はその対策を行ってる最中なんだ。信じてくれ。


「今集中してるから、ちょっと待っててくれ」


「そっか、タツヤもやっと男の子になったんだね?」


 気がつくと、出席順で先に順番を終えたアリーシャお嬢様が直ぐ隣に居てクラスメイトたちの魔法を楽しそうに眺めていたが、今のオレにはそんな余裕など無く異世界あるあるでお馴染みの他人から見えないAR(拡張現実)表示されたパネルを操作して、これから始まる魔法の実技に必要なスキルを取得しておく。


「次はアカツキくん。おや? アカツキくんは欠席かな?」


 アカツキって誰だよ、次がつかえてんだからちゃんと準備しておけよな。こんな不心得なヤツが一人でも居るから全体に迷惑が掛かるんだよな。早くしろyo……ん、なんでみんなこっちを見てんだ?


 オレは格ゲー以外で他人と積極的に関わって来なかったから、みんなのそう言った熱い眼差しを向けられるとHPがガリガリ削られるんだよ。


「タツヤ、早く行かないと先生に怒られるわよ?」


「お、おう。判った。今行くから」


 生前のオレ(2P)が傭兵の息子だったから、てっきり名字なんて無いと思い込んでいたオレのミスだった。


 よく考えてみれば父親の名前がカイエン・アカツキだったから、オレのファミリーネームも『アカツキ』だった……忘れていたと言うか完全に盲点だったわ。だってステータス画面で表示されていた名字は確か『シラヌイ』だったから。


 オレは先生とみんなに判るように大きな声で「はい」と返事してから、グランドの中央へと歩み出る。


 アリーシャお嬢様以外のみんなからして見れば、今朝のホームルームからいきなり編入して来たこのオレに対して、まるで珍しい何かを見るような視線を今も向けられているのが何となく気まずい。


 昨日まで所属していた下位クラスなら、オレ以外にも魔法が苦手な生徒がチラホラ居たので余り目立たなかったんだけど、移籍して初めてとなる今回の魔法実務授業でヘボい実力を見せつけてしまうと、今後のクラスカーストで最下層に認定されてしまうだろう。


 なのでこの授業で中位貴族のボンボンどもには、是非その節穴をかっぽじって良く見ておいて欲しいものだ。


 オレは両足を前後に開いた体勢で、両手を利き腕側の右腰の横で球を抱えるような形に構えて気を練り始める。両の掌で囲まれた小さな空間に魔力とは違う気の力が凝縮されて蒼白い光が指の隙間から零れ始める。


 この状態で撃ち出せば『覇道拳』と呼ばれる遠距離技になるのだが、この状態を魔法と言い張ると光と風の複合魔法に近い現象となり説明が面倒くさいので、ここから更に圧縮して行くと空気が加熱されて真っ赤な炎を帯びた塊となる。


焔覇道拳(ほむらはどうけん)! ハァッ!!」


 そう呟きながら腰だめに構えた両の手を、素早く前方へ押し出すと共に気力を込めた。


──ZuGagaaaaaaan!!!!!


 その瞬間、灼熱色に熱せられた『殺意の波動』が顕現して、先ほどの目標とその向こうにあった塀までを完全にブチ壊し、地面に飛び散ったそれらの瓦礫と破片がメラメラと燃え上がっていた。ちなみに周囲に居た人に被害は出なかった。


 あ、これ完全にダメなヤツだ……。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 ここで少し話を戻そう。


 オレはお嬢様との会話も上の空で返事をしながら、つい先ほどまでINCOMEポイントを消費してオレが今装備(?)してる『道端闘士』の【無印】バージョンから、次のスキルツリーにあるゲームタイトルへと進化させるべく頑張っていた。


 【無印】のままだと技入力の正確さとタイミングが非常にシビアで、熟練者でも必殺技をスカる時があるくらいピーキーで使い難かったのと、オレがメインキャラとして使っている『タカシ』の性能が弱くて、魔法の授業で使えそうなスキルが何も無かったと言うのがその理由だ。


 なので【2nd】以降のバージョンにしておくのは絶対で、最低でも【2ndG】には進化させておきたかったのだが、ここで問題が発生する。


 あの転生部屋でシステム改変を行って転生ポイントを255ポイントに設定しておいたのだが、ステータス画面にある『INCOME』という変数が255なので、これがそうなんだと思う。


 そしてこのINCOMEポイントを使用すれば【無印】から【2nd】へとメジャーアップデートする事が出来るみたいなんだが、それだけで何と100ポイントも必要だった。


 こんな事なら、あの時のポイントのレジスタ値を8ビットから16ビットに変更しておけば良かったのだが『後のカーニバル』とは正にこの事である。


 そしてとりあえず【2nd】までスキルツリーを進化させると、その先には予想通り【2ndG】があり、更にその先にはオレが過去に一番時間を費やした【2ndGターボ】の進化先が見えてきた。それぞれの進化に必要なINCOMEポイントは、それぞれに50ポイントが必要だったので、マイナーアップデートにはメジャーの時の半分のポイントが必要だと判かる。


 それ以外の派生先として新たに『スーパー道端闘士』や『道端闘士3』のタイトルもあったのだが、こちらへの進化はメジャーアップデートと同じく100ポイントが必要で、その更なる進化先には【X】と【ハイパー】までのバージョンが並んでいた。


 そして今のオレには155ポイントが残されている状況なので、【焔覇闘拳】を使用するには【2nd】か【2ndG】のまま255分の1の確率で発生するバグ技(赤い覇道拳)に賭けるか、それともバグ技から正式な技として実装された『2ndGターボ』を新たに取得する必要があった。


 『道端~2nd』に詳しい諸兄からしてみれば、「それなら2ndのインド人を選んで【瑜伽的炎】で良かったんじゃね?」と申される諸兄が居られるかも知れないが、周りがイケメンと美女だらけの環境下で、思い切り下腹部を膨らませながら口から炎を吐くなんて、かっこ悪すぎてオレにはムリゲーだったんだ。それにアリーシャお嬢様も見てるからな。


 なのでオレはキヨミズ・テンプルのステージからフライハイするつもりで、無けなしのINCOMEポイントを更に100ポイントも突っ込んで【超道端闘士2ndG】から【2ndGターボ】までのスキルツリーをアクティベートしたんだけど、格ゲーとかパソコンに詳しく無い人からすると何言ってるかわかんないかもだな。


 そこまで進化すれば残りポイントがたったの55ポイントとなるので、次のスキル進化まではかなり時間が掛りそうだ。でもこれまで使い慣れたタカシがシリーズ最強キャラ候補まで成長したバージョンなので、暫くの間はこのままキャラの習熟度を優先して鍛えて行けばいいだろう。


 あとタカシ以外のキャラも10ポイントで取得出来るみたいだし、コスチュームの着せ替えには更に5ポイントが必要だったので、たった55ポイントしか残っていないから今後何か困った時の保険に取っておこう。


 また【2ndG】以降のタカシは、同門であるケンジとの差別化で【覇道拳】のモーションが若干早く射出後のスキも少なくなってるから、この技を主軸として戦い、それを嫌がった相手が【覇道拳】を飛び越して来た場合に【翔龍拳】で撃墜するのが常套手段(セオリー)となる。


 元の世界の対人戦では、タカシたちのような対空技を持ってるキャラを相手にジャンプ攻撃を仕掛けて来るようなバカは滅多に居ないんだけど、こっちの異世界なら身体強化魔法の恩恵があるから安易にジャンプして来そうな感じでカモネギ状態になるのは必死か? ふひひ、笑いが止まらないな。


 それと各種必殺技コマンドだが、キャラクターのヘルプ画面に載っているみたいだけど、オレには全く必要無かった。

 もうこの時点で強化されたタカシの必殺技が使用出来る高揚感によって、何でも出来るような気がしており、その結果どういった結末を迎えるかと言えば……。

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