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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

現在地と現時刻が分かるだけの地味な超能力でがんばった話

作者: よぎそーと

「うわあ……」

 渡澄わたすみソウマはこの時、希望の全てを失った。

 初めて手に入れた超能力があまりにも地味だったからだ。

「どうすんだ、これ……」

 嘆くも答えは見つからない。

 ため息だけが口から吐き出されていく。



 ある時から人は超能力に目覚めるようになった。

 これはその人の性質に基づきいたものがあらわれると言われている。

 あるいは様々な経験によっても。

 いまだ真相や真実は定かでないが、これまでの経験からこう考えられていた。



 この超能力があらわれるのは、5~10歳くらいの間が多い。

 例外ももちろんあるが、最初の超能力はこの時にあらわれる。

 人によっては一度に2つ3つと複数になる事もある。

 このあたりは個人差がある。



 そんな超能力だが。

 ソウマも10歳になって手に入れた。

 世の標準からすれば遅い部類だ。

 それでも身につける事が出来たのだからありがたい。

 しかし、その内容には頭を抱えた。



【時空】

 ソウマが手に入れた能力だ。

 内容は文字通り。

 時間と空間に関わる能力である。

 これだけ聞くとすごそうに思える。

 しかし、実際に出来ることはと言うと……。



「現在時刻が分かるのと。

 現在地が分かること。

 あと、方角や上下方向が分かる。

 うん、いったいどうしろと?」

 自分の能力を確認したソウマは途方くれた。

 そして、愚痴がいくつもこぼれ出た。



 だが、嘆いていても始まらない。

 手にした能力で何が出来るか。

 それを考えて身の振り方を考えるしかないのだから。

 とはいえ、選べる選択肢もほとんど無いのが現状である。



 怪物と迷宮。

 超能力と共に出現したものだ。

 これらが今、地球にあらわれ人類の驚異となってる。

 いくつかの国は滅び、生き残った国はなんとか怪物を撃退している。

 こんなご時世では、安全な仕事に従事する事は難しい。

 ふさわしい才能や能力を持ってなければ。

 ソウマの能力は、残念ながらそういった仕事に求められてるものではない。



 そうなると他の多くの者達と同じ選択肢しか残らない。

 怪物と戦い、迷宮に挑む。

 これらを倒して攻略し、糧を得る。

 世の中の変化に応じてあらわれた新たな職業。

 探索者だ。



 怪物との戦いは避けて通れない。

 だが、軍隊や警察だけでは手が足りない。

 そこで、怪物と戦うことを仕事とする者が出現した。

 最初は身を守る自警団として。

 これがだんだんと行動範囲を広げ、独自に怪物を追いかけて倒す狩人になり。

 ついには迷宮に入って探索するようになった。



 また、怪物を倒す事で得られるもの。

 霊気という新しいエネルギーを固めた結晶。

 これが怪物から得られる事が分かった事で、怪物退治はそれだけで仕事となっていった。

 このエネルギーを手にいれる為に、怪物と戦う必要性は更に高まった。



 そんな探索者は常に人手不足。

 どこででも求められる。

 また出自や能力も問わない。

 その代わり、死亡率は高い。

 完全な実力主義の仕事となっている。



 他の仕事に従事できなかった者達は、この探索者になるしかない。

 たとえ戦闘に必要な能力が無くてもだ。



「やるしかないか」

 腹をくくっていく。

 ソウマとて出来れば安全な仕事がしたい。

 しかし、平和なところで働けるのは、相応の能力を持ったものだけ。

 それか、親子代々で仕事を受け継いだ者くらいだ。

 残念ながらソウマにそんなものはない。

 選べる道はなく、選ばされる方向だけが示されていた。



 腹をくくると行動は早かった。

 探索者になるにはどうしたら良いか。

 何をしておけばよいのか。

 必要になる事を聞いていった。



 それをもとに訓練をはじめていく。

 危険がともなう探索者になるのだ。

 出来るだけ腕を上げておかねばならない。

 超能力があらわれたこの世界にはレベルというものもある。

 人の能力の段階を示す数値だ。

 このレベルを上げれば、能力も上がる。

 手にした超能力に戦闘力を期待できないのだから別の部分が頑張るしかない。



 手に入れた超能力の利用方法も考えていく。

 戦闘には使えなくても他の場面では役立つかもしれない。

 レベルを上げる傍ら、手にした能力の使い道も考えていった。

 時に誰かと相談しながら。

 様々な情報や資料をあたりながら。



 手に入れた【時空】以外の超能力を得られないかと期待する。

 レベルが上がったり、何らかの条件を満たせば新しい超能力を手に入れる事も出来る。

 その条件は完全に解明されたわけではないが、ある程度の条件は分かってきている。

 余裕があれば、それらも試していった。



 これらをこなしてうちに15歳となる。

 義務教育の終了の時期だ。

 今となっては、これが社会に出る者の年齢となっている。

 他の多くと同じくソウマもこの年齢で探索者になる事となった。



 ありがたい事にソウマの能力を求めてくれる探索者はそれなりにいた。

 GPSなどがほぼ壊滅、これらを用いる道具の生産も困難。

 完全になくなったわけではないが、かつてほど普及してるわけではない。

 なので、現在地や現在時刻が分かるというだけでもかなり便利なものだった。



 また、超能力を手に入れてからソウマも能力を上げてきた。

 おかげで【時空】で出来ることも増えている。

 今は、周辺の地形などを把握して地図を表示したり。

 周囲に何がいるのかを示す探知も出来るようになっている。



 回りの状態が瞬時に分かる。

 これだけでも探索では大きな利点になる。

 特に内部がよく分かってない迷宮では。

 中の様子がすぐに分かれば攻略も簡単になる。



 これが出来るソウマは様々な探索者達から求められた。

 戦闘力の有無でははかれない価値があるからだ。

 なので、余裕のある探索者はソウマのような能力を持つ者を求める。

 ただ、これが出来るのは一定以上の規模のある探索者集団のみ。

 旅団と呼ばれる探索者の集まりの中でも、ソウマはそれなりに大きな所に所属する事となった。



 入社した旅団で、ソウマは自分の能力を存分に発揮していった。

 現在地と周囲の状況が分かる。

 この能力は集団で大きな力を発揮する。

 どこを避けて、どこに進めば良いのかが分かるのだから。



 おかげでソウマの入った旅団は効率的に探索を進める事が出来るようになった。

 探知などが出来る超能力を持つ者は他にもいるが、多いにこした事はない。

 たった一人増えただけでも、探索の効率は大きく変わるのだから。

 そして、地味なためにこうした超能力を積極的におぼえようという者は少ない。

 単独ではほとんど意味がないからだ。



 おかげでソウマは旅団で活躍出来た。

 戦闘にかり出される事はほとんどない。

 しかし、旅団の進むべき方向を示していった。

 羅針盤のごときその能力は、旅団の活動の成功率を上げた。

 生還率と共に。



 活動を続け、レベルが上がると更にソウマの重要性は大きくなった。

 新たに収容空間という能力を使えるようになった事で。

 これは物品などを現実とは別の場所に保管するもの。

 容量に限界はあるが、その分だけ運搬の手間が省ける。

 最初はリュック一つ分くらいだった容量だが、これは能力の成長と共に拡大していった。

 トラック一台、更には倉庫一つ分と。

 この分だけ輸送の必要性が低下。

 あるいは、この分だけ多くの物資を運び込み、活動期間を延長できるようになった。



 遠く離れた場所へと一瞬で移動する転位もおぼえた。

 自分だけでなく物資を移動させる事も出来る。

 遠くから呼び寄せる事も。

 これらが出来るようになった事で、重傷者を即座に治療が出来る施設に運べるようになった。



 ここまで出来るようになると、重要性はますます高くなった。

 他の旅団から引き抜きがかかるほどに。

 拾ってくれた恩から、ソウマは所属した旅団での活動を続けていったが。



「使いどころはあるんだな」

 旅団内での立場を確固たるものにしながら思った。

 役に立たないと思っていた能力もしっかりと活躍する場所があるのだと。

 使いどころが分かれば、活躍できる。

 この事をソウマは、実感として理解した。



 だからこそ思うのだ。

 使い道がなさそうな能力。

 それらが活躍できる場所はないのかと。

 ソウマの所属してる旅団でも、そういった者は多い。

 他に道がなかったから探索者になっただけ。

 しかし探索者としてやっていくには無理がありそうな超能力。

 それしか持ってないという者達。



 彼らに何か道を探してやれないだろうか?

 いつしかソウマはこのように考えるようになった。

 そして、思いついた事を提案していくようになった。

「あいつの超能力、こういう風に使えるんじゃないか?」

 この言葉で真価を発揮するようになった者も出てきた。



 時に自ら手を引く事もある。

 他の誰も一緒にやりたがらない。

 そんな能力を持つ者を率いて探索に向かい、出来る事を探していく。



 単純にレベルを上げることで超能力の応用幅が増える事もある。

 ソウマがそうであったように。

 だから積極的にレベル上げに付き合っていった。

 出来る事が増えれば、様々な可能性が生まれるから。



「だから一緒にいかないか?」

 声をかけ、手を引いていく。

 かつての自分のように、己の超能力に見切りをつけてしまった者達に。

 もしかしたら埋もれてるかもしれない可能性を掘り当てるために。



 そんなソウマを信じ、一歩を踏み出す者も出て来る。

 そんな者達と共にソウマは迷宮へと向かう。

 何かがあるかもしれないと期待して。

 たとえ何もなくても、踏み出した者達は何かがかわる。

 気持ちが、心意気が。

 そんな意思のあらわれこそが最も大きな変化である。

 これが出来た人間は強い。

 そんな人になってくれた事を、ソウマはもっとも喜んだ。



 こうしてソウマが手を取った者達が、後に大きな活躍をしていく。

 ソウマと共に探索に挑むようにもなった。

 やがて単独で活動するようになったソウマと仲間達は、数々の武勇伝をうちたてていく。

 それは多くの者達の希望ともなった。



 役に立たないと思われていた能力。

 それを昇華し、大いなる活躍を成し遂げたと。



 一人一人の持つ可能性。

 それを信じるきっかけをソウマは与えていった。

 それは怪物退治や迷宮攻略と並ぶほどの勇気を多くの人々に与えていった。





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 考えてるネタを、短編で出してみた。

 できれば長編でやっていたいと思ってもりう。


 気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を


 面白かったなら、評価点を入れてくれると、ありがたい。



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ファンティアで似たような話も出している。



【短編】空間と時間を操る能力で、未来の災いを防ぐ話

https://fantia.jp/products/891587



 同じ能力を使ってるけど、方向性は違う。

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