表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

第7章 軌道の炎

【第7章 軌道の炎】ーーーーーーーーーーーーーー


 成層圏を抜けた瞬間、漆黒の闇と群青の地球が視界いっぱいに広がる。

 その美しさは、これから訪れる殺戮の光景をまるで予感させないほど静かだった。


 海斗とミラの乗るフェルシア改は、プレアデス旗艦アステリアの船腹から射出される。

 後方の輸送艇には玲奈と技術班が乗り、回収した星核を厳重に封印していた。





 「敵艦隊、地球側L1ポイントに到達──数、二十七隻」

 オペレーターの報告がブリッジに響く。

 シア司令官は即座に命令を下す。

 「迎撃艦隊、散開。フェルシア部隊は前衛突破後、敵旗艦へ」


 だが、玲奈のタブレットに暗号通信が割り込む。

 発信源は不明──ただし、内容は衝撃的だった。


 『残る二つの星核の一つは、月面地下に眠っている』


 玲奈は思わず息を呑み、周囲を見回す。誰が送ってきたのかは分からない。

 だが、その情報が本当なら、この戦いの目的地はすでに次の段階へ進んでいる。





 宇宙空間の戦闘は、地上とは別世界だった。

 レーザーの閃光が真空を切り裂き、破壊された艦船の残骸が音もなく漂う。

 海斗とミラのフェルシア改は、敵戦闘機群の間を縫うように加速し、連射砲で次々と撃墜していく。


 「右三時方向、重巡クラス!」

 ミラの警告と同時に、海斗は機体をロールさせ、艦腹に沿って突入する。

 艦載砲の射線をすり抜け、ミラが装甲継ぎ目に粒子弾を叩き込む──重巡は静かに爆散し、光の花を咲かせた。





 一方、玲奈の輸送艇も戦闘に巻き込まれていた。

 護衛艦が一隻、敵の攻撃で沈黙。輸送艇は単独で軌道を離脱しようとするが、マルドゥークの高速艇が急接近する。


 「くそっ、このままじゃ……!」

 玲奈が拳を握りしめた時、フェルシア改が光の矢のように割り込んできた。

 「お姫様、遅れてすまん!」

 海斗の声が通信に飛び込む。


 彼の援護射撃で高速艇は爆散し、輸送艇は再び安全圏へと移動した。

 だが、その短いやり取りの中で、玲奈の胸には小さな棘のような感情が刺さっていた。

 ──なぜ海斗は、ミラとあんなに息が合うのか。





 戦況は膠着していた。

 マルドゥーク旗艦は依然として健在で、数隻の重艦を背後に控えさせたまま動かない。

 その動きは、まるで何かを待っているかのようだった。


 「……奴らの狙いは星核だけじゃない」

 シアは低く呟き、次の命令を下した。

 「全艦、敵旗艦の主砲発射準備を阻止せよ。時間を稼ぐ」


 その間に、玲奈は密かに送られてきた暗号通信を解読し続ける。

 送信者の名前が表示された瞬間、彼女は目を見開いた。


 ──それは、死んだはずの兄、怜司の名だった。





#宇宙SF



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ