第4章 火線と交渉
【第4章 火線と交渉】ーーーーーーーーーーーーー
プレアデス旗艦の作戦会議室には、地球政府代表団が急遽到着していた。
日本防衛省の高官、国連安保理の特使、そして各国の軍事顧問──狭い室内は重苦しい空気に包まれている。
テーブル中央には地球儀が投影され、その半分が赤い侵食表示で覆われていた。
「これは……数時間前の状況か?」特使が震えた声で問う。
通信士が首を振る。
「いいえ。現在進行形です」
同じ瞬間、東京・新宿区。
ビルの谷間を黒いマルドゥーク歩兵が進軍し、手持ちのプラズマ兵器で建物を貫く。
避難誘導を行う自衛隊員は、わずかな掩蔽物の陰から反撃するが、敵装甲は通常の弾丸を弾き返した。
煙の中から現れた機械化歩兵が、片腕の火炎放射器を振るう。
「下がれ! 下がれぇ!」
だが、後退路はすでに瓦礫で塞がれていた。
会議室では、玲奈が立ち上がる。
「このままでは東京は数時間持たない。プレアデスの重火器を地上投入すべきです」
すぐに防衛省の高官が声を荒げる。
「外国勢力の武器を国内で使用させるなど……!」
玲奈は机を叩いた。
「今は主権の議論をしている場合じゃない! 地球が戦場になっているんです!」
プレアデス司令官シアが静かに言葉を継ぐ。
「我らは地球を支配する意志はない。ただ、戦争を終わらせたい。だが、正式な協力体制なしでは戦力の投入は制限される」
新宿駅西口。
海斗は市街戦の最前線にいた。
TFAの強化外骨格を着込み、腕部に装着されたレールガンでマルドゥーク兵を撃ち抜く。
「玲奈……早く決めてくれよ……!」
彼の背後で避難民の列が続くが、上空からマルドゥーク強襲機が降下、黒い爪のような着陸脚を広げて地面を抉る。
「空から来るぞ!」
味方の叫びと同時に、轟音が頭上をかすめた。
蒼白い光の柱が敵機を貫き、粉々に砕いた。
ビルの影から現れたのは、プレアデスの機動兵器──人型の戦闘機械だ。
「地上部隊、援護に入る」
無機質な通信音声とともに、機械の腕から放たれる連続光弾が敵を薙ぎ払った。
会議室では、ついに国連特使が口を開く。
「……分かった。限定的な協力を認める。ただし、作戦指揮権は共同で行使する」
シアは頷く。
「承諾する。では、全艦隊に地上支援の許可を」
玲奈は深く息を吐き、海斗のいる戦場の方角を見やった。
モニターには、フェルシア部隊が新宿に次々と降下し、敵を押し返す光景が映っている。
だが、その映像の隅には、これまで見たことのない巨大なマルドゥーク兵器が姿を現しつつあった。
全身を覆う甲殻、六本の脚、そして頭部から伸びる光る触手──
「……あれは、“殲滅級”だ」シアの声に緊張が走る。
交渉は成立した。
だがそれは、戦いの幕を下ろす合意ではなく、
地球最初の本格的な星間戦争が、ここから本当に始まるという合図だった。
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