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天使の羽  作者: シフェア
1/1

ある街で

マジで適当に書いた、自分好みの小説です。もともと漫画でイメージしてたので意味わかんないとこもあるかも。マジで何でも許せる人推奨。

ピピーッ

渋谷の交差点で黒い自動車が赤く光るライトを無視する。

アスファルトに溜まった雨水を蹴散らすように闘争した自動車の後ろからパトカーが来る。そのパトカーも雨水を散らした。

傘を差していても、その雨水は防げない。

「だりぃ……」

思わず、唾を吐くような声を出す。

でも誰かに聞こえる訳じゃない。

この騒音の中じゃ何も聞こえやしない。

ふと見上げると、高層ビルの最上階を染める程の真っ黒な奈落が見えていた。

星なんて見たことない。

生まれも育ちも、此処だ。

でもいい加減そろそろ飽きた。

街の騒音も、眩しい光も、社会も。

なんてつまらないんだ。

鳥が鳴く。

一斉に人々が交差点を渡る。

人の波に混ざり、俺も歩き出す。

足が地面に当たっている感覚がない。

カバンを持つ左手も、風も、感覚がない。

まるでゲームの中にいるような、全てが2Dのような。

ポツン――

雨が顔に当たる。

ザワザワとした黒い人の群れが次々と透明な傘を差す。

溶け込むように自分も傘を差す。

ボツン――

傘に当たる雨が鈍くなる。

そんな音が周りに響く。

子供を肩に乗せたお父さんがふと通りかかる。後ろから楽しそうに追いかける女性。

風が止まる。

足も止まった。

微笑ましい。

でも腹の奥から湧いてくるような狭いものも感じた。心臓が速くなると同時に息も重くなる。

過去の映像が一気にフラッシュバックした。

顔をしかめて点滅する信号に目を向けた。

すると目を疑うモノを見た。

「――は?」

道路のど真ん中で固まった。

赤く光る信号の上には、優雅に羽を広げた子供。

ミルクティー色の髪の毛をなびかせ、十字路交差点に目を向けていた。

純白の綺麗な肌に純白の翼。服も真っ白だった。

街に似合わない。

そんな煌めく姿に見惚れていた。

その時、耳を破るような音が真横で鳴る。

「速く渡れ!邪魔だ!」

我に返ると車の渋滞ができていた。

その一番前の車が俺に向かって怒鳴っていた。

「ボーっとしてんじゃねぇ!退けっ!」

「……は?」

一瞬戸惑ったが、歩行者信号を見ると、赤くなっていた。

急いで道路を渡ると、素早く通りかかったさっきの車に中指を向けられた。

「……ハァ……」

溜息が漏れた。

そして何かに気づいたようにハッとして信号に目を向けると、あの子供は居なかった。

「……幻覚……かな……」

そろそろやばいなと思いつつ、自分のアパートまで足を運んだ。

高級とまではいかないが、ホテルのようなアパートだ。

焼肉屋や、耳に触る居酒屋を通り越し、そこにたどり着く。

ロビーに足を踏み入れると、白い地面がカツンと鳴った。

足を引きずってエレベーターの前まで行き、ボタンを押す。すると後ろから走る音がした。

「今晩は。今日は遅いですね」

「……そちらこそ」

「いやぁ、今日は残業がですね〜」

「……そうですか」

隣人の輝咲蛍(きさかけい)

名前は女子らしいが、普通に二十七歳男性だ。お調子者なのに真面目な奴だ。

「すごく猫背になってますよ」

「……そうですか」

「そういえば明日休み取れたんですよ」

「……いいですね」

「明日休みあるならお酒とかどうですか」

「……ごめんなさい。無理です」

「あ~、残念ですね」

心臓がズキリと疼く。

「……そう…ですね」

小刻みに震える右腕を抑える。

最近は何もなかったのに何で今…。

――ポーン

跳ねるような高い軽い音が鳴る。

ドアが開く。

「あ……先にどうぞ」

「ありがとうございますね」

エレベーターに入ると、二人の体重でエレベーターが少し揺れた。

「…………ハァ……」

心臓の鼓動が速くなってきた。

呼吸も。

速く部屋に着いてくれ。このままだったら輝咲さんに迷惑をかけてしまう。

その時――

――チン

エレベーターのドアが開いた。俺は急いでエレベーターから出た。エレベーターを降りるときに輝咲さんを少し押してしまった。

申し訳なさに襲われながら自分の部屋の前まで走った。ポケットからヒンヤリとした黄土色の鍵を取り出し、鍵穴に刺した。

ガチャと音がなる。

少し安心しながらドアを開ける。

重くて頑丈なドア。

カーペットの床に足を乗せると、視界が歪み始めた。

「…ゥ゙……ぅえ……」

口を抑えながら洗面所まで走った。

鏡をひと目見て、洗面台に手をつくと、ドロドロとした汚物が口から流れ出てきた。

「……クソッ……最近は何もなかったのに……!」

吐き切ると、俺は水を流し、リビングに行った。

大きくてクリアな窓から見えるものは先程の十字路交差点。

アリのような人々が渡る。

それを見ながら体の力が抜けたようにソファに腰をかける。

体中が震え始めた。

俺は焦ったように震える指先で薬に手を伸ばした。

七錠くらい手に取り、一気に飲み込んだ。

喉の中をゴロゴロと動く白い粒が気持ち悪いが、すぐ楽になる。

テレビをつけ、伸びた食べかけのカップ担々麺に橋を突き刺すと、頭が熱くなってきた。

脳の回転は減速し、体中がなだれていくのを感じる。

よだれがでてくるようなホワホワとした安心感に笑みが溢れた。

でも心の奥底に些細な緊張感を感じる。

それを隠しために、二錠追加する。

さらにとろくなる。

しあわせなきぶんによいそうだ。

ニコニコしながらカップ麺を箸にのせる。

おれは|霜月時雨(しもづきしぐれ)、にじゅうごさい。

以後お見知りおきを〜。

じこしょうかいなんていつぶりだっけな。

ラーメンおいし。

まどのそともきれいだ。

ビルの部屋から光が漏れる光景も、アリが渡る光景も美しい訳が無い。


――ピーンポーン

だれだろう。

玄関に目を向けるとそこの廊下が伸びているように見えた。少しづつ斜めに歪み始め、玄関のドアは逆さまになった。

「……なにこれ」

声が出ていることに気がつかなかった。

まぁいいか、あるけるだろうし。

立ち上がり、歪んだ廊下へと足を運んだ。

廊下の半分くらいまで歩くと、何か見えない物にぶつかった。

目を擦る。するとさっきまで遠かったドアが目の前に。

「………?」

勢いよくぶつかった所為で赤くなった鼻をおさえる。

手の熱が赤い腫れを刺激するも、彼は反応出来なかった。朦朧とした意識の中では。

ドアのロックを開け、ドアを前に押した。

「うおっ」

完全にドアを開けると、目の前には人間のような形で渦巻く影がいた。

ソレは喋りだした。

「大丈夫ですか?吐く音が聞こえたんですけど、それより、さっきドアに突撃しましたよね。エレベーターから出るときも汗かいてましたよ。そんな姿始めてみましたよ。もしかして帰りが遅かったのも――」

輝咲が押し寄せてきたことを理解した。

「…だいじょうぶですよ」

「…?ろれつ大丈夫ですか。酔ってます?」

時雨は動揺する輝咲を見て、ニイっと笑った。目を細め、八重歯が少しだけ見える。

「だいじょーぶです」

「そ、そうですか」

そう言いつつ、輝咲は時雨の家の中に目を向ける。すると、すぐハッとした表情で時雨の顔を見た。

「霜月さん、その、あの……」

「だいじょうぶなんで、もうねましょ」

「…あ……はい」

困惑する輝咲を無視し、ドアを閉めて鍵を掛ける。

「……だりぃ」

くすりのききもうすれてきた。

ずつうが……

時雨は走ってソファのところに行った。

頭蓋骨がハンマーで叩かれる気分。

その衝動で頭蓋骨が震える。

ガンガンと痛む。

薬瓶から十五錠の薬を喉に流し込んだ。

「――これこれ」

頭痛が少しづつ和らぐ。

すると、先程までの静かなテレビ番組が何かに切り替わった。

『皆様こんばんは〜。ただいま12時になりました!ここからは「九時の動物鑑賞」をお届けします!今回のゲストは――』

プツン

思わず切った。

そうおんをふやすなんてばかなことはしない。

おれはばかじゃないし、あほじゃない。

外顔を向ける。チカチカする視界に目細めると、ベランダに何かがいることに初めて気づいた。

ボヤケていて何かは分からなかった。

目を大きく開けてソレをじっと見つめてると、声が聞こえた。

「やっぱり、僕のこと見えてるんだね」

なにがしゃべってるの?

しろいみるくてぃー?

「薬って美味しいから食べるの?」

「……」

沈黙して窓の透明さに見惚れていると、白いミルクティーが入ってきた。

「隈すごいね。どうしたの?」

「……だいじょうぶ」

「あの、そういう質問じゃないんだけど……」

「……だいじょうぶ」

「……うん」

白いミルクティーに目を向けてよく見ると、それは子供だった。

「……どうやってはいってきたの?」

「普通に窓から」

「……?」

「やつれてるね。休んだ方が良いんじゃない?」

すると意識が薄れた。

「――おやすみ」

子供は、いびきをかく時雨を見て、安心したように、白い光になって消えた。

信号とクラクションが夜をおさめた。


朝日がまだ昇っていない時間。

時雨は目を覚まし、周りを見た。

机の上に散らばった薬のゴミ、カップの中に残された伸びた麺、開いたままのカーテンとついたままの電気。

「……きったね」

その途端、目眩と激しい痛みが体中に響いた。

呼吸が急ぐ。

心臓が激しく打ち始める。

――ハァッ、ハァッ、ハァッ、

畜生、効果が切れたか。

もっと、もっと必要だ。

もっと、もっとだ――

瓶に入っていた残りの粒を喉に流した。

――カンッ

机に瓶を叩きつける。

喉を駆け下る粒が胃に達するのを感じた。

そして安心したように時計に目を向けた。

「……まだ、3時か」

朝の3時にも関わらず、外の騒音と眩しい光は絶えなかった。

何時から仕事だっけ。

あーどうしよ、何も考えたくない。

まぁいいや。

そのうち、そのうち。

スマホを開き、ツイッターのアイコンに指先を当てた。すると青色が画面を埋めた。

画面が切り替わる。

これに浸る時間が好きだ。

現実逃避じゃなくてストレス発散。

現実世界からアクセスできる仮想世界ってだけでワクワクする。

「……このまま勤務時間まで続けよう」

冷えた暗い空間の中でスマホの光を浴びた。ーーl

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