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【完結】婚約破棄された伯爵令嬢ですが、追放先の辺境で聖獣に愛され過ぎて困っています  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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輜重隊

作戦会議から3日後、国境からゼノたちは出撃した。

敵の国境を守る城、ロートバルク城に向かって。

その兵力はおよそ1万。


ロートバルク城にはエルネスト・ディロイ将軍が4千の兵と共に籠っている。

それほどの武勇はないが、軍略に通じている人だ。

大言壮語癖はあるが、グラウベルトに気に入られている。


「さーて、うまくいきますかね」


とヴォルドが薄く笑いながらつぶやく。


「うまくいかなかったら力攻めか」


とガロが言うと、


「いずれ王都からの援軍も到着するさ」


とヴォルドが返した。

できるだけ兵力を減らしたくはないが、後から補充が来ると思うとまだ気楽である。


そうしてこの軍は、ロートバルク城を横目に通り過ぎた。

この先にあるノルデン城を目指しているような動きだ。


「将軍、敵はここを無視して通り過ぎるようです。後ろを攻撃しますか」


ロートバルク城において、部下がエルネスト将軍に尋ねた。

他の者が言う。


「どういうつもりでしょう。周りの城を落として、我々を孤立させるつもりでしょうか」


それに対して、エルネスト将軍は首を振った。


「いや、これは我らを誘っておるのよ。ここに籠っていればこの城は簡単には落ちぬ。だが外に出てしまえば敵の兵力は我々の2倍以上。だから、我らを城から誘き出したいのだろう」


「しかし、後ろの兵を叩いてさっと引き返せば敵の兵を減らせるのでは?」


「いや、あの軍は後ろの方が充実している。我らが城を出た途端、反転して襲い掛かってくるだろう。こちらの方が減らされてしまう」


エルネストは、城から離れた道を通過しようとしている軍を見ながらそう言った。

実際この時、ラグリファル軍はいつでも反撃できる態勢を整えていた。


「敵地に侵攻する時、最も注意を払わねばならんのは兵糧よ。糧道を絶たれてしまったら、いくら兵力があっても戦うことはできん。そうなるとむしろ兵力の多いことが仇になる。この先の城を攻めるにしても、兵糧を送らねばなるまい。敵の輜重隊を襲えば敵を飢えさせることができる」


エルネスト将軍は、自信満々に言い切った。


「直接戦わずとも勝つことはできるのだ。それにしてもこの程度のこともわからんとは、ゼノとやらも恐るるに足らん。聖獣が現れたという噂を聞いたが、本人の軍略は下の下だ。」


そうしているうちに、ラグリファル軍は見えなくなった。


「ふむ、ノルデン城の兵糧を全て持ち出した後、敵に攻め取らせるというのも良いな。その後この辺りの兵をかき集めて包囲をすれば、周りの村から徴発することもできずにすぐ飢えるだろう」


そう考えたが、エルネスト将軍はすぐにそれを打ち消した。


「いや、それをするには兵力が少し足りんな。包囲しても突破されかねん。それよりは素直に輜重隊を潰していく方が確実か」


***


その2日後、ラグリファルの輜重隊が進んでいくのがロートバルク城から見えた。

それなりの護衛はいるが、基本的に輜重隊は戦うのに向いていない。

だから出来るだけ見つからないようにしているが、エルネスト将軍はずっと輜重隊だけは見逃すまいと目を凝らしていたのだ。


「出撃!」


そう叫んで、エルネスト将軍は1千の兵を率いて輜重隊に襲い掛かった。

当然輜重隊は全く敵わず、すべての荷物を置いて逃げ散った。


「これはすごい戦利品じゃ、急いで城に運べ。」


敵から奪った武具や兵糧を見て、エルネスト将軍はほくそ笑んだ。


***


その4日後にも、輜重隊が現れた。

今回は前回よりも規模が大きい。

その分、護衛も多いだろう。


「ふん、それでも輜重隊など蹴散らすのはたやすい。何度来ても我が軍の肥やしになるだけじゃ」


エルネスト将軍は、3千の兵を率いて出撃した。

前回と同じように、輜重隊の兵はすぐに逃げ散った。

護衛も、少し戦って「これは敵わぬ」と撤退した。


「何度試しても同じことだ。さあ、荷物を城へ運べ」


その時狼煙が上がり、同時に火薬の音が「パーン!」と響いた。

それを合図に荷駄の中から兵士が現れ、エルネスト将軍の兵に襲い掛かる。

その中にはゼノもいた。


今回の輜重隊は武具や兵糧ではなく、兵士を運んでいたのだ。

先程逃げ散った兵も戻ってきて戦いに加わる。


「退却だ!」


罠にはめられたと気付いたエルネスト将軍は、即座にその指示を下した。

しかし、味方は大混乱を引き起こしている。

態勢を立て直すこともできない。


「敵に背を向けて逃げ出せば被害は甚大。見たところ兵力はほぼ同じ。混乱から立ち直ればある程度戦える。そのうえで引き上げたほうが被害を減らせる」


エルネスト将軍はそう考え、味方の集結を待った。

しかし、その判断が命運を分けた。

一目散に逃げていたら、城に逃げ込めたかもしれない。


だが、斬り込んだ途端森の中から鬨の声が上がった。

さっきの狼煙は、本隊への合図だったのだ。

ロートバルク城を通り過ぎた本隊は、この日に合わせて引き返していた。

ガロとヴォルドの率いる1万の兵が一気にエルネスト将軍の兵に襲い掛かる。


それを見て、エルネスト将軍は単騎で逃げ出した。

その背に向かってゼノが叫ぶ。


「我が名はゼノ!尋常に勝負せよ!」


それでもエルネスト将軍は背を向けて逃げ続けた。

そして、追いついたゼノに背後から一刀両断にされた。


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