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【完結】婚約破棄された伯爵令嬢ですが、追放先の辺境で聖獣に愛され過ぎて困っています  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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87/113

前線

グラウベルトは、王都に戻っていた。

多くの兵を失った状態で最前線にいても、ただ危険なだけだ。

力を蓄えて再び……という野望は消えていない。


それにしても、今回の敗戦はグラウベルトにとって狐につままれたようだった。

エルバーン伯爵領での敗戦、国境の城の落城、どちらも負けるとは思っていなかった。

国境では、村人が城門を開けたという。


「不可解な」


それはグラウベルトには理解できない状況だった。


「……聖獣の力か?」


あの獣が兵の士気にある程度の影響を与えたことは否めない。

その影響力も、次の侵攻の際には考慮に入れなくてはいけないだろう。

迷信だの不敬だのと言っていても現実は変わらない。


それよりも、今をしのがなくてはいけない。

いつか再びラグリファル王国を手に入れたいと思っているが、事態は非常にまずいことになっている。

ここまで謀略や侵攻を行ったのだ。もう完全に敵対国として見られているだろう。


油断させるために、今まで腰を低くして友好国として振る舞ってきた。

だから、エリザベートも安心して国境の兵を減らしてしまったのだ。


それを裏切ったのだから、もう信用してもらえはするまい。

今、ラグリファルは1万5千を超える兵を展開している。

それに対して、こちらは4千程度しかいない。


とは言ってもこちら側の国境の城——ロートバルク城はとても堅牢な城だ。

高地に築かれ、山の稜線を利用した防壁は難攻不落と名高い。

ゼノたちが国境の守備に自信を持っていたように、グラウベルトもここは簡単に抜かれないと思っている。


グラウベルトはその堅牢な城を落とすために、グリモー侯爵たちを裏切らせた。

当然、同じことをされないようにこちらは手を打ってある。

跡継ぎやそれに準ずるような絶対に見捨てられない者を人質に取ってあるのだ。


裏切りがなければロートバルク城が簡単に落ちることはない。

——しかし、グラウベルトの胸はどうにも落ち着かない。

今回の戦も、簡単に負けるはずはないと思っていたのが覆されたのだ。


ラグリファルが本腰を入れて攻め込んできたら——。


「聖獣、そしてそれを操るリディアという女……」


グラウベルトは、得体のしれない者と向かい合っている気分になった。


***


国境に戻ったゼノは、とりあえず援軍を率いてきた将に個人的に恩賞を渡した。

国内の混乱を避けるためとはいえ、偽物の公爵家の印に騙されたという不名誉を与えてしまったのだ。

罰されるようなことはないと思うが、将来の出世に悪影響が出るかもしれない。


「これだけ報いてもらえば十分です」


とその男は言った。ゼノも庶子とはいえ王の子だ。

そのゼノに頭を下げられ、かなりの金も渡されたのだから納得もするだろう。


それからゼノは、リディアやガロ、ヴォルドを呼んでヴァルハルゼンへの侵攻について話し合う。

難攻不落と言われるロートバルク城をどうやって落とすか。


様々な意見が出たが、なかなか方針が決まらない。

落とさずに素通りをしたのでは、後ろから攻められる危険もあるし、何より荷駄隊が襲われる恐れがある。

敵の領地に攻め込んで兵糧がなくなったら悲惨だ。


それでは兵糧攻めは、と言っても国境の城にはそれ相応の備えがしてあるだろう。

こちらは油断していたところに裏切りもあって兵糧を止められてしまったが、グラウベルトに抜かりはあるまい。

力攻めは被害が大きくなる。城の構えを見れば、守る側が圧倒的に有利なのがわかるのだ。

話がまとまらず、少し休憩することになった。


「私、ルナに乗って地形を見てきますわ」


そう言ってリディアは席を立った。

剣の稽古を続けているリディアは、かなり体が引き締まってきた。

戦に出るようになってから、凛々しい騎士服を身に着けるようになっている。


「気を付けて」


とゼノが言う。

リディアが出ていった後、ガロが呟いた。


「嬢ちゃん、大丈夫かねえ?どう見たって戦いに向いてる子じゃねえだろう」


「村が襲われたことが許せないんだろう。2度とあんなことが起きないように、グラウベルトを倒すと言っていた。実際、リディアの策で勝てた部分もある。前線には立たせたくはないが……」


「何か抱え込んじゃいねえか?エルバーンの森での戦の後、酷い顔をしてたぜ。自分の策でたくさんの人が死ぬことに、このまま耐え続けられるのかね」


エルバーン伯爵領の砦での戦い、ルナの力で森に落とし穴を作り火計を施した時、それは虐殺と言っても良い有様だった。

リディアはそれを涙を流しながら真っすぐ見つめていたが、その時の様子をガロは心配しているのだ。


その時、ヴォルドが口を挟んだ。


「マクレイン様にばかり辛いところを任せてちゃいけませんな」


ヴォルドはこの場で最年長ではあるが、王の子であるゼノに対しても少しだけ丁寧な口の利き方を心掛けている(リディアに近づくことはまだ快く思っていないが)。

だが、その顔は不敵に笑っていた。


お読みいただきありがとうございます!

2日間休んでしまいました。

また明日から頑張ります。

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