表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された伯爵令嬢ですが、追放先の辺境で聖獣に愛され過ぎて困っています  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/86

二人

ゼノとリディアは、国境に戻ってきた。

ヴァルハルゼン侵攻の許可を得たゼノは、軍勢の編成を話し合っている。


リディアは、ミルファーレ村に顔を出した。

略奪された物資に関しては、国から補償してもらえることになっている。

エリザベートが、そのような仕組みを作ってくれたのだ。


戦に駆り出された男たちも、みんな無事に帰ってきている。

リーダー格のローデン、そして城を落とせた功労者とも言えるガルドもだ。

ガルドは相変わらず憎まれ口を叩いているが、あの時の働きのせいで好意的に見られるようになっている。


そのガルドが、こそこそと物陰に隠れて何かを見つめている。


「こんにちは、ガルドさん」


リディアが声をかけると、ガルドは飛び上がらんばかりの反応を示した。


「な、なんだリディアちゃんか……驚かすなよ」


「何を見ているんですか?」


そう言って身を乗り出すと、そこには女性たちが洗濯をしている姿があった。

若い女性2人と少し年配の女性1人が、談笑しながら洗濯物を干している。

自分の家のものだけではなく、協力し合うのがミルファーレ村のやり方だ。


あの明るく笑っているのはマリィ。隣で世話を焼いているのがリエラ、少し離れて落ち着いた様子の女性がステラ。息子がもう十五になると聞いた覚えがある。

リエラもまだ子供はいないが結婚していた。

マリィだけが独身なのだ。


リディアが手を振って3人に近づいていき、洗濯を手伝い始めた。

その後から、ガルドもついてくる。


「おや珍しい、手伝いにきてくれたの?」


マリィがそう問いかけると


「何となく歩いてたら通りがかっただけだ」


と言いながら不器用な手つきで洗濯物を干し始める。


「下手くそだねえ、こうやるんだよ」


マリィに怒られながら、ガルドは赤い顔をして言いなりになっている。

それを見ながらリディアは他の2人に問いかけた。


「ねえ、もしかしてガルドは……」


「そりゃもう見た通りだよ!」


リエラは顔の前で手をひらひらさせながら笑った。

そしてもどかしそうに


「でもなかなか進展しないんだよねえ」


と続ける。


「恋愛ってのは恋するものとされるものが鈍いもんなんだよ」


ステラが訳知り顔で言う。


「マリィに『ガルドはあんたのことが好きなんじゃないの?』って聞いてみたら『そんなことあるわけないじゃないですか!』って笑い飛ばされたよ」


その後、少し切なげな顔になって続ける。


「『私みたいながさつな女、好きになってくれる人なんているわけないです……』だってさ。早く幸せにしてやればいいのにってガルドが憎らしくなったよ」


リエラも勢い込んで話す。


「うちの旦那がガルドに『お前マリィのことが好きなのか?』って聞いたら『そ、そ、そ、そ、そ、そんなことあるわけねえだろ』って!本気で気づかれてないと思ってるんだねえ」


ガルドは素直じゃないし、マリィはあまり自分に自信がない。

だから2人の関係はなかなか進展しないが、周りはそんな恋模様を微笑ましく見守っているようだ。


「幸せになる人が増えてくれればいいな」


洗い立ての布が風に揺れて、陽の光を受けてきらりと光った。

村には、笑い声と水音が満ちている。

ほんの少し前まで、戦の影が覆っていたとは思えないほどだ。


リディアはそっと目を細めて、その光景を胸に刻む。

——この穏やかな日々が、どうか長く続きますように。

リディアは、ほっこりした気持ちでミルファーレ村を後にした。



お読みいただきありがとうございます!

国境に戻ってきたのにまだ戦いません。

多分明日も戦いません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ